10月28日

V24Cさん自作シェル試聴記


V24Cさんお手製のシェルが届いた。

もちろん、僕がお願いしてお貸し出し頂いたのだ。

パッケージをほどいて、手に取ってまず感動。

凄い肉厚。ずっしり重い。
塗装などされていない、炭化ケイ素はつや消しのブラックで
正に、“炭”を連想させるが、
とにかくちゃらちゃらした所がこれっぽちも無く、
質実剛健で、“凄み”さえ漂わせる。

よくぞ、これだけの物を自作されたものだ、
感嘆する。


さて、このシェル、自重23g超重量級

これに10g前後のカートリッジを取り付けると
総重量33gオーバーとなる。

そこでダイナベクターのアーム、DV−507の出番となる。

このアームなら、シェル込み35gまで対応可能だ。

ちょうどULS−3Xを使うべく、
SP−10Uの自作プレーヤーを復活させていたのが幸いした。
(9010は戦線離脱)


日中音を出せるのは、週に1回あるか無いかなので、
その際即音出しが出来るように、と事前にセットに取りかかる。

カートリッジが付き、アームにセットされると、
シェルの精悍さが際立つが、問題はこの状態でのトレース能力

重量級シェルと重めのカートリッジの組み合わせでは、
少し前にひと騒ぎしたばかりだったので
日記ご参照の程
一層慎重になる。

夜中に針を落としてテストランニング

大丈夫。ブレなんかこれっぽっちも無い。
ダイナベクターのメインアームは剛直そのもの。

そして、レコードの反りにはサブアームが見事に追従している。

計らずも、このアームの「質量分離」と言う考え方の一つの正しさを
見事に証明する事にもなってしまった。


ところで、このシェル、テストランニングの段で
既に大物の片鱗を見せている。

こっそり音を出したのだが、
低音の出方がまるで違う

思わず耳を疑ってしまった。

こりゃあ凄い事になりそうだ
と期待しつつ音出し日を迎える。


さて、試聴

おおー。やっぱり低音の出方がまるで違う!。
針圧を掛けすぎたか、と再確認したが間違ってはいない。

やっぱり、超重量級のシェルは一味違うのである。

音程明快、押し出しくっきり

しばし呆然と言うか、口元綻びっぱなしというか、
あれこれレコードを掛け続ける。


冷静になってくると、今度は定位の向上に気がつく。

実に明瞭な定位が得られる。

まだまだ、追いこむ余地のある我が装置達で聴いても
これだけの音質向上があるのだから、
アナログの大家の所に嫁がせたら
どんな凄い事になるのやら?。


聴き込むほどに、このシェルは余分な音を出さない事に気がつく。

カートリッジのまんま、で音が出て来る感じだ。

演出、脚色がほとんど感じられない

カートリッジにとっては、大変厳しい物指し
あるいは原器と言って良いシェルかもしれない。

ただ、あまりにも正直過ぎて、ちょっと物寂しく感じるのも確か。
何と言うか、ちょっと艶っぽさみたいなものも欲しくなるのも人情。

そこで、PH−L1000+MC−L1000に一旦差し換えてみる事にする。


シェルごとカートリッジを差し換えて、
アームの調整をやり直して針を降ろす。

聴き慣れた音が帰って来た

これは間違い無くPH−L1000に付いた
MC−L1000の音
だ。

V24Cさんのシェル付きの音を聴いた後では
やけに腰高に聞こえるが、
じきにそれは気にならなくなる

それよりも高域のきらめきの美しさが耳を奪う。

“高域”、なんて、いかにも俗っぽい表現だが、
他に適当な言葉も無い。
ハイエンドより、少し下の部分、とでも言ったら良いのか?。

キラキラと輝いて、とてつもなくシャープ

やっぱりこっちかな〜、などと暫くは聴いていたのだが
そのキラキラが、V24Cさんのシェル付きの物を聴いた後では
ちょっと耳に付く感じ


そもそも、PH−L1000+MC−L1000の音は、
ちょっと危う気な所がある。

超精巧なガラス細工を見る感じなのだが、
あまりにも精巧過ぎて、いつ壊れるか?、とハラハラさせる

妙な例えだが、そんな感じなのだ。
そして、それは時に聴く者を魅了し
時にはちょっと疲れさせてもくれる。

ここで、もう一度V24Cさん自作のシェルに取り付けた物に差し換えてみると。
そんな“危なさ”は影を潜める

こちらの方が、安心して音を聴けるのは間違いない。

ただ、すっかり欲張りになってしまった耳は、
もう少し色艶が欲しいと訴えてくる。

誠に贅沢な言い草である。


同じ炭化ケイ素を材料に使ったシェル同志の
鳴き合わせは、両者一歩も譲らず、
一勝一敗づつの引き分けと相成った様子である。

面白い物で、PH−L1000の方は
鏡面仕上げのその感じが、音にも反映されているし、
又、V24Cさん自作のシェルはシェルで、
つや消しのその仕上げが
そのまま音を表している様にも思わせる。

あるいは、V24Cさんのシェルを鏡面仕上げにすれば
PH−L1000的な“艶”が、程よく乗って来るかもしれない。
などと勝手な想像をしてしまった。


右がV24Cさん自作
重量級シェル。
炭化ケイ素の素材そのまま
と言う感じの、マットブラック
いっそう精悍さを強調する。

左はPH−L1000
流麗なデザインと鏡面仕上げ
こちらも美しい。


贅沢な想像をするだけでなく、自分で試せる事はないだろうか?、
と思い、オーディオクラフト真鍮の取り付けネジを使ってみた。

これだけでも、気のせいか、若干華やぎが出て来た様に感じられる。

まあ、もっともっと使い込んで聴き込まないと結論じみた事は言えないが
ちょっとした変更を、敏感に反映するシェルである事は
間違い無さそうなので、使い手の工夫次第
好みのチューニングも自在な、
やはり正確な土台のようなシェルと言って良いと思う。

時間を掛けて追い込んでいけば、ライバルと目される
PH−L1000を引き離す可能性大ではないだろうか?。


さて、例によってわかったような事を書いてしまったが、
いつも申し上げる様に、あくまでも一個人の、
限られた環境とキャリアの中での感想記と思って頂きたい。

このシェルは、V24Cさんのご厚意
試聴希望の方には、現在無償でお貸し出し頂ける事になっている。

興味をお持ちの方は、当サイトの掲示板など通じて
貸し出し希望の旨をV24Cさんにお伝え頂きたい。

ただし、その重量故、組み合わせるカートリッジ次第、
アーム次第ではバランスさえ取れない事になる
(試みにGT−2000のノーマルアームのウエイトを
後端ぎりぎりまで後退させて試してみたが
駄目だった。)

無茶が祟ってカートリッジの針を折る等のトラブルが発生しても、
当然ながら使用者の自己責任と言う事になるので、
その点だけはご承知の上でお申し込み下さい。

私にとっても、貴重な体験をさせて頂きました。
V24Cさんに、この場をお借りして御礼申し上げます。
どうも、ありがとうございました

尚、今後このシェルを欲しいという方が多ければ
有料にて頒布も検討
されるとの事。
当然ながら、1個よりは5個。
5個よりも10個、と集まった方が単価は抑えやすい。


ご希望の方は、試聴と同様の方法でV24Cさんにラブコールをどうぞ!。


今回の試聴の影の立役者とも言える
ダイナベクターDV−507に収まった
V24Cさん自作シェル。
組み合わせとしても、なかなか良いのでは?


日記の続きはこちらです
(11月2日 UP!)

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