8月1日
8月2日
トーンアーム。
もういい加減にしようと思うのだが、この音響用天秤は僕を魅了して止まないものがある。
実はまだGWの戦利品シリーズをやっているのだがこれもその一つ。
EPA-99である。
テクニクス単売トーンアームの第一号だとか?
EPA-100に1足りないだけなのだが99の次は101とかだったはずで
この辺はテクニクスが何を考えていたのかわからない。
発売は1972年。というけどSL-1000でSP-10と組み合わせて
使われていたのを考えると1970年頃?
ちょっとわからない。
当時19,000円。
世界初のDDモーター。SP-10に組み合わせるために登場したのかもしれない。
いや、きっとそうに違いない。
S字アームで実効長235o。
は、良いがEPA-100と並べてみると赤の他人と言って良いほど見た目が違う。
どちらが良いと言われても困るがトータルでは後発の100に一日の長が無いと困る。
ただ、99も当時として十分なスパンを取ったジンバルサポートであったりとか
画期的なインサイドフォースキャンセラーを搭載したりと立派な物なのはいうまでも無い。
クロームメッキでピカピカなのも悪くない。弄ってみるとフィーリングの良さもすぐわかる。
また、EPA-100と大きく違うのは対応可能はカートリッジの重さで、サブウエイトを使うことで35gまで扱える。
8月3日
ところで写真を見て気づく人はとっくに気づいているだろうが、
この99、完璧な状態ではない。
アームレストが失われている。
ま、そんなのはどうにでもなる。
あと問題はインサイドフォースキャンセラーの糸が無くなっている。
いや、糸はどうとでもなるのだが、それを固定するパーツが見当たらない。
もっともこれもそんな大げさな問題ではない。
何か適当な(妥当な)部品を宛がえばよい。
取り敢えずはインサイドフォースキャンセラー無しで使ってみるが
正直無くても良い気がしているというか、無い方がベターな…という気もする。
それは高邁な理論に基づいた考えとかでは全く無く、
ただ、アームの動きをいかなる事情であっても阻害することが
どんなもんか?という、極めて文系的な発想なのである。
さて…
8月4日
さて、アームと来たらカートリッジが無ければならない。(当たり前)
ここでSONY XL-MC1。
このシリーズはなんだかんだでよそ様でほぼ全部を体験させて貰っている。
1はその内のローエンド機種。
1982年6月の発売だから、CDの登場を目前にしての登場。
アナログは死なずと思われていたのだろう。
SONYと言えば8の字コイル。
初代はXL-55に遡るのだがXL-MCシリーズは外観からしてまるで異なる。新シリーズ。
ランチャーにセットされたミサイル、とこのスタイルを称したのは長岡先生だがとにかく本体は小さい。
細くて軽い。で自重3g。これは形の面白さから入ったものなのだろうが当然ローマス化にも貢献している。
磁気回路にリングマグネットを採用で9,800円は当時としても破格。
カンチレバーはアルミでチップは接合だが無垢にしたらこの価格では収まらない事を上級機のXL-MC3が証明している。
さておいて、これをEPA-99に取り付けて、音はどうよ?
8月5日
音だがとっても良い。
50年以上前のアーム。40年以上前の1万円を切るカートリッジで
満足してしまうワタシは費用対効果抜群の
極めてコスパの高い人間である?
これ、半分は皮肉だが、半分は本当の事だ。
本当というのは特に不満を感じないという点だ。
一つにはオーディオマニアという、とかく針小棒大に
大げさに騒ぎ立てる傾向にある生き物へのアンチテーゼがある。
そりゃ違いは探せば見つかるが、言うほどのことか、と言いたくなるのだ。
…に、してもこの1万円(9,800円)カートリッジは音が好い。
後年テクニカのAT-F3なども好評を博したが
それより手前でこれだけのカートリッジが出ていたというのは
驚くべき事だ。
そしてそれを支えているアームは昔の大阪万博の頃の製品なのである。
いよいよ阿保らしくなってきた?

8月6日
さて、EPA-100も傍にあるなら聴き比べは?という声が聞こえてきそうだ。
(単なる幻聴)
では、ということでXL-MC1をEPA-100へ。
こちらはモーターがMU-61。
プレーヤーキャビネットの作りも違うのだがフォノイコHX-10000以降は同一ラインナップ。
…と書いてしまうと嫌でも違いを見つけて書かねばなるまい。
確かに同じ音にはならないのだが良し悪しの問題とは違うことをはっきり書いておく。
適当な音源を適当に聴く限りは違いもクソも無いということも言っておきたい。
雰囲気というか、それこそ歌い手の口の中の唾液の様子まで想像させるという能力においては
100の方にアドバンテージを感じるところはある。
だが、一方で99にはぱーっと声を伸ばしている時ののどの張りというか、一直線の潔さにおいて
100に勝る感触もある。
そんな感じ。
あるいはこれはカートリッジがXL-MC1だから、であってそれを替えればまた異なったお話しになるのかもしれない。
だが、XL-MC1みたいな真っ当な(堅気な)カートリッジを使った結果こそ重視すべきだと考えたら
これ以上ムキになる必要は無い。
ひとつ見逃せないのが価格差で、現状では99と100の間には下手をすると20倍くらいの流通価格差がある。
ここを見逃す訳にはいかない。
100のチタンパイプも良いSが99のクロームメッキもまた良い。
やっぱりトーンアームはいくらあっても良いものなんだな〜
(結局そこかい…)
8月7日
続いてカートリッジをAT-E70へ。
テクニカのVMの中で振動系重量をぐんと軽減したシリーズだ。
以前KP-07を聴いた時、付属の30相当品に衝撃を受けたのだが70は上位機種。
さらに90があるが今回は70。
本筋の前にだがシェルにしっかりした物が宛がわれており感動する。
あるいはシェル付きで売られたAT-E70Mなのかもしれない。
XL-MC1にもSONYの隠れ名器と言われるシェルが付いていた。中古漁りをするときはこの辺も
ポイントになる。
1984年発売で当時13,000円(AT-E70Mなら15,000円)
アルミテーパー付きカンチレバーに0,1×0,2の楕円針という辺りで50に差を付ける。
8月8日
AT-Uシリーズについては過去にも取り上げているが一応…
50は軽合金ストレートカンチレバー。(軽合金ってなんだ?超合金なら知っているが)
LC-OFCコイルでパラトライダル発電系。
70は既に書いたようにアルミテーパー付きカンチレバーに0,1×0,2の楕円針。
90になると無垢のベリリウムカンチレバーで直径0,3o。
価格がそれぞれ10,000円→15,000円→18,000円と絶妙。
それでも一番高くても18,000円とは随分良心的な価格設定である。
あるいは高級路線はAT-MLに一択するつもりだったのか?
ルックスも斬新といえば斬新だが金持ちが喜んで選ぶとは思えない。
ただしスタイラスガードなんかはガッシリしているし実用性が高いと思う。
さて、XL-MC1から差し替えて、音なのだが…
8月9日
ざっくり言ってしまうとこれも好い音だ。
テクニカらしからぬ、と言ったら怒られそうだが良い意味での大人しさが感じられて
見た目とのギャップが大きい?
だが、もうちょっとはしゃいでも良いんじゃない?と思ってしまうのは
あるいは直前にXL-MC1を聴いていたからか?
そこでEP-99からEPA-100に移行。
やはり…という感じで少し若さが増す。
だが、まるで別物のカートリッジみたいだ、とかそんなことは無い。
…と書いて、別の日に再びEPA-100に取り付けたままの
E70を聴くととっても好い。
なんだ、オマエ、いい加減だな、と言われるかもしれないが
こうした現象には理由がある。
それは、やはり直前に聴いていた音等に
どうしても影響を受けて判断にもそれが出てしまう、ということなのだ。
この場合だとXL-MC1の音に耳が引っ張られてしまったということだ。
とっても好い。
XL-MC1も好かったし、AT-E70も好い。
MCとMM。各この一本づつあったらやっていけるんじゃないか?
という気さえしてくるのだが。
しかし、ここで話しは終わらず…
8月10日
そしてAT-UL5。
koyamaさんの愛用品であり、昨年も同UL-3をお譲り頂いているが今年は5。
考えてみるとAT-ULシリーズもAT-Eシリーズと同期なのである。
つまり1984年組。
つんっと尖ったようなルックスはXL-MCシリーズにも似るが、この頃はやったのは
コンコルドの成功を見てか?
UL3がパッと目を惹くオレンジを貴重とするカラーなのに対し5はグンとアダルトチック。
濃いめのアイボリーというべきか。
10Ωとローインピーダンス。そして0,5mVの高出力。
ムク天然ダイヤで楕円針。テーバードカンチレバーというところで3に差を付ける。
さて、ここで音だが…
8月11日
音だがMCが帰って来たというかXL-MC1からAT-E70に行ってAT-UL5はやっぱりMCですね、と感じた。
XL-MC1も相当良いのでUL5もぶっきぎりとは行かないのだが低い方の量感・力感でリードする感じ。
いずれにしてもリファレンスにしてしまって良い音がするのだ。
ここまで3本のカートリッジ達の優秀な事には驚くばかりで、花の1984年組とでも命名したくなる。
やはりアナログ最後の(実は最後では無かったのだが)打ち上げ花火は決してハイエンドだけでなく
価格的にローエンドと言える世界にも起きていたのだ。
現代のバカっ高いカートリッジをお持ちの方にも、是非だまされたと思って手にしてみて欲しいと思ってしまう。
なお、特に断りの無い限りアームはEPA-99を主としている。
8月12日
VMS-20E MK2。
既に何回も(と言っても大した回数ではないが)登場しているのだが降臨。
なぜ、というと今回(と言っても既にかなり前のGW)に、
念願の針を一本ゲットできたからなのだ。
VMS-20EMK2はウチに本体が二本あって針は一本と、
針はあっちにこっちに状態(というほどではないが)だった。
今回針が手に入ったので無事完品二本体制になった。
目出度し目出度し、なので記念にこの流れで聴いてみた。
良い悪いでなく再びMMの(実はMI)の音に戻る。
…というほど違う訳では無いのだが言葉にするとどうしても大袈裟になるのはご愛敬。
だから、という訳でなく低い方の押し出しが、最近聞いていた3本を基準にすると強い。
圧を感じさせる。
これがVMS20だからなのか、あるいはエポキシ固めの影響なのかは不明。
そう、言い忘れたがこの個体はボディの一部をエポキシで固めた方のヤツ。
音のためというより、VMSなんかはこの端子板付近は接着材で固めて置かないとバラバラ事件が起きてしまう。
だが、多分、音にも効いているのだろう。
気になって固めていない方のVMS-20EMK2を出してみると
8月13日
気になって固めていない方のVMS-20EMK2を出してみるとやはり音は違う。
以前にも聴き比べ的なことはやっているのだが、こうした事は間を空けて
色々状況を換えて再び三度やってみないとわからない部分もある。
良くも悪くも音は軽快であり、どこか掠れる様な表現はオリジナルの方がうまいかもしれない。
だが、これらはシェルの違いなども加味して考えないといけない。
そして音の良し悪しに関係なく、VMSの端子板付近は絶対に固めて置かないと悲劇は訪れる。
ほぼ間違いなしに、だ…
しかし、そこにはボディの重量増という意味もあるので、固めた即ち良くなった、的な捉え方は
今の段階ではしない方が良いと思う。
ここで唐突にシュアーV-15Type3登場。
VMSに対抗して…ではないので理由は後で。
8月14日
その音を聴くと、やはりシュアーはMMのホームラン王だと感じる。
いかにも堂々と。道の真ん中を歩いて来る。そんな存在だ。
だが、ちょっと演出過多にも聴こえる。
サービス精神を発揮してくれているディナーショーみたい感じ。
アナタも一緒に楽しまなきゃ。
さあ、拍手を頂戴。と、カートリッジが呼びかけて来る?
このままで良いのだが唐突に針交換。
そう、SAS針である。
SAS針は多くの交換針で設定がある。
Type3みたいに名のあるカートリッジには当然存在する。
だがたまたまこれまで己の物とする機会が無かったのだ。

SAS針を装着すると、その音は?
音だが、やはり基本的な路線まで変わる訳では無い。
ただ、ちょっとオフ気味に、格調が増したように聴こえる。
客席は客席。ステージはステージと割り切った感じが出て来る。
それでも、アメリカのカートリッジだなあ、と思わせる力は失われない。
それでよいのである。シュアーはシュアーらしく。オルトフォンはオルトフォンらしく。
テクニカはテクニカらしくあって欲しい。
犬はニャーと鳴かない。ニャーと鳴くのが良かったら最初から猫を選ぼう。
…と書いたがちょっと気になったことがあった。
それは…
8月15日
ちょっと気になる事があった。
HXは気の利いたフォノイコだからMMも47k受けは変わらないが330pfと100pfの切り替えは出来る。
だが、この際もっと細かくということであればプリSY99のMM入力が更に多彩だ。
そこで早速差し替えて30kの300pfで受けてみた。
これが大変良かった。力強さ、鮮明さはそのままに上品さが増す。
まあ受けの容量や抵抗値の問題だけでなく99のフォノイコと相性が良いとかあるかもしれない。
そもそもプリが99でフォノイコにHX10000を持ってくる事自体が贅沢過ぎるというものなのだ。
だが、常時二台のプレーヤーを繋ぎ、MMでもMCでもフロントパネルのスイッチ一つで
平等に切り替え可能という使い勝手の良さでHXに勝るものは無い。
こればかりは自分を許しておきたい。
8月16日
時ならぬ夏のカートリッジ祭り?
一幕の終わりにこちら。
SPU。それもトランスを背負ったタイプだ。
そう。先日pippinさん宅でも拝聴したもので持ち主はGさん。
どうぞ、ご自宅でも、と手渡された。
「どうぞ」は良いけど、どう考えたも貴重品。
酷く恐縮して、アームはその時はクラフト(こちらもGさんからお借りしている物)に戻して…
とか考えていたのだが気づけばEPA-99はサブウエイト付きであるいはSPUでも大丈夫では?
試してみたら見事にバランスする。
この、見るからに昭和なトーンアームでSPUをお迎えして良いのか?とも思うが
SPU自体生まれは相当前だから許してもらおう。
また、EPA-99は軽い物から重量物まで、これ一本でカバー出来る、優れたヤツと言う事の証明にもなる。
しかし独特の見た目である。SPU。
今更だけど直前までXL-MC1だのAT-E70やら、同UL5なんか扱っていたからギャップが激しい。
丁度Type3を聴く時にSY99直結にしていたからそのまま聴く事にする。
ただし負荷抵抗と容量は弄って置く。
さっさと拝聴して箱に戻してしまっておこう。怖いから。
…と思って…
8月17日
…と思ってセットして針を落とすのだが…
針を落とした途端。「やられた〜」と沈黙してしまう。
いや、物理特性云々なんて言ったらこのカートリッジより優れた物はたくさんある事だろう。
分解能が…とかなんとかかんとか項目でも作ってカートリッジフルテストをしたら、多分点は低い。
…なのだがトータルで考えると。いや、感じると他を沈黙させてしまう所がある。
なんていうのか、二軒目に行った女性が付く呑み屋さんで、ちやほやされたり賑やかしをやっているのは
ちょっとイケメンの若手なのだが、結局誰かをお持ち帰りしてしまうのは、影の薄かったはずの部長さん。
そう。やっぱり伝説の営業部長ここにあり、なのである。
極めつけに格好良い訳じゃないし、帰る家もタワマンとかではない。車もスーパーカーに乗っている訳では無い。
だが、持って行くところは持って行ってしまう。それでいて敵を作る気配もない。
一種のスーパーマンで、そんな人現実社会では滅多に居ないがカートリッジの世界なら存在する。
そう、SPUが正にそれに当たるのだ。僕はそう思う。