9月18日
アントレーEC-1。
1977年発売。
当時30,000円。
アントレーの第一作である。
オルトフォンタイプで鉄芯入りのMCカートリッジ。
出力電圧0,2mVということで極めて低い、という訳ではないが実際には結構低目に感じる。
ただし、今の時代、それで困るなんてことは考えられない。
針圧1,8g。
自重5,8g。
このカートリッジは日本よりヨーロッパの方で好評だったとかで、
対日本戦略商品として?翌年にはEC-10がすぐリリースされている。
そちらは23,000円と価格も戦略価格なのかもしれないがEC-1の30,000円も全然高くないと思う。
EC-1も情報の少ないカートリッジだがボディなどEC-10と共通項が多いとするとプラスティックだが
カーボンファイバーで強化されているはずだ。
この個体はシェルもアントレーだがDAMのマークがあり、ピンも上下二本になっているから
最初からEC-1が付いていたものとは違うと思われる。
以上だがここで音を出そう。
9月19日
直前までKP-07+AT-E30相当の音を聴いていたのでどうしても比較してしまうが、
(フォノイコHX-10000、プリSY99という流れなどは共通だがEC-1は当然MU31D/TS+EPA-100のプレーヤーに装着)
やはり一段の違いを見せる物になる。
ではAT-E30では駄目なのか?と言われたらそんな事は無くて、相変わらず十分十二分に良いと断言できるのだが
大人びてじっくり聴かせるという点においてEC-1はやはり上を行く。
ちょっと地味に感じさせるところはあるが、違う音が聴きたければ他に幾らでもカートリッジは存在するだろう。
EC-1は、もうちょっと落ち着いて。安心して。しかし高品位の音を楽しみたいという人向けのカートリッジなのだと思う。
ここで告白しておくと、このEC-1。そしてクラフトのAC-1やAC-3もお馴染み、ゴンさんからお借りして拝聴している物だ。
(いつもありがとうございます)
その一連の三本の中で、と考えるとこのEC-1が一番落ち着いて、しかもじっくりと音楽を聴こうという気にさせてくれるものだ。
そこを理解しつつ、しかしその後矢継ぎ早やに繰り出された後継機達が、もう少しパワフルな感じの路線に振られていったのも
わかる気がする。
いかにも一般大衆が喜びそうな音、というのは存在するので、そっちに向かって歩いていくのも良いことだ。
だが、一方で、あるいはこれがアントレー社の原点。好みの音だったかのか?と想像するとEC-1の存在はより一層大きなものになる。
「実に興味深い」と、今となっては時代遅れの呟きが口をついてしまうのだが
今回またこの様な機会を与えて下さったゴンさんに重ねて御礼申し上げます。
9月20日
9月21日
オルトフォン520MK2
誠に世の中にはあまたの数のカートリッジがあるが、何が悲しくてそんなに次々と
カートリッジが生まれてくるのか?
それだけ究極形が無いということか、なんとも言い難い。
さて、オルトフォン。
言わずと知れた世界の名門である。
MC、MM(IM)共名器のオンパレード。
だがしかし、そんな有名ブランドの中でも情報少な目のお品ってある。
この520なんかがその一つ。
一体いつ出ていた?と思ってしまう。
なにせオルトフォンでMC以外というとコンコルド以前にVMSシリーズが思い浮かんでしまう人だから…
調べてみると500シリーズというのは1987年ごろリリースされていたらしい。
しかしそのMK2属はそこからまた10年くらい経ってからとかなんとか…
要するに情報が少ないのである、このカートリッジも。
それでもインターネット時代。ほんの少しだがヒットするページもある。
それによれば比較的普及価格帯のカートリッジである。
540、530、520と並んで…という辺りは、今だとテクニカのVMシリーズだがオルトフォンの方が名づけは先輩。
ボディは共通で針に違いがあり、それもかなりの価格差を付けて売られていた。
いかにもオルトフォンらしいが、上級機の540にはフリッツ・ガイガーという
針が採用されていて、これは何よ?っていうとカッターヘッドとの相似形状であるとかなんとか。
520は楕円針だが僕に言わせりゃあそれで充分である。
MK1の方の価格だが、当時14,800円。
針圧1,5g。
自重5gと極めて標準的な作り。
形状も後の高級MC型とどこか通じるところがあって立派な感じがある。
さてしかしこれでは本当のところはわからない。故に音を出すことになる。
9月22日
針を下ろす。音が出る。
なるほど…と思う。
先日の日記に、「何が悲しくて次々カートリッジが生まれてくるのか?」と書いた。
そんなに要らない、というけれど、やはりこうして聴くと描かれる世界が違うのである。
ああ、これを作った人は音楽のここを聴きたかった。聴かせたかったんだな、というのが
透けて見える時に、妙な喜びを、私は感じてしまう。
得も言われぬ清涼感があり、細やかに音を届けようという姿勢には思わず暖かい眼差しを向けてしまうというものだ。
どうしたって20代の、まだどこかおどおどしてしまいながらコーキューなお店にお呼ばれされている女性を思い浮かべてしまう。
開き直って、「どうせ相手のおごりだから飲み食いだけはたっぷりして帰ろう」なんて思う以前の垢ぬけないタイプ。
大変結構である。どーせアナタもすぐ図々しくなる…とはこちらも言わないで見つめていたい。
書いていて気付いたが、これ、まさに高齢者男性が若い娘を見つめる視線である。
嫌だ嫌だ、歳を取ったもんだ…
しかし取らないと見えない世界もあるのだよ。
時々、そんなに色々聴いてどうするの?カートリッジなんてお気に入りが数本あればよいでしょ?と
笑いながら言われることもある。
その通りだし深い意味は無くやっている趣味なのだが、今回520MK2に向き合ったときに。あるいはEC-1と、
あるいはクラフトのカートリッジに向き合ったときにふと気づいたのはカートリッジに出会うのも人間に出会うのも
同じなのだということ。
色々な人に出会うようにカートリッジとも出会うのだ。
まあ、人間よりカートリッジの方が安全(笑)
滅茶苦茶やばい奴とか居ないから=カートリッジは。
話しを520MK2に戻すと、大変性格の好いカートリッジであると言いたい。
ドスンドスンと床を踏み鳴らす豪快さが欲しいというのなら、それは熟女系?カートリッジと付き合えばよいのであって
520MK2に望むことではない。
と、言っていたら…
9月23日
と言っていたら320降臨である。
そう都合よく色々出てくるわけがない。
そう、320も520MK2もゴンさんからの借りものなのである。
誠に申し訳ないくらいお世話になります…
520に320と来ると、普通に考えて320の方が価格帯的に下位機種となるはず。
はず、とは心もとないが、こちらも情報不足。
ただ、こちらはT4P仕様になっていて、今回の物は普通のシェルで使えるようにアダプターを装着した物。
せっかくだからT4P本体の形としても使いたいが、まずはEPA-100に装着。
針を下ろすと…
これは面白いというか明らかに520の妹機である。
血の繋がりをありありと感じつつ、姉にあった、どこか抑制が効いた感じがやや抜けて奔放な感じが出てくるから面白い。
ではおばさん臭いかというとそれは無い。あくまでも520と同じファミリーであって血筋の良さはそのまま。
だから、しつこいが、床踏み鳴らせと言われてもそんな事はしない、出来ない。
ただ、520よりも、”やっちゃった”ペロン”、みたいな感じは出てくる。
その辺が妹的であると僕は感じる。
ところで…
9月24日
ところでせっかくのT4Pなのだから、とそれらしい使い方に挑戦してみた。
プレーヤーはSONY PS-FL77。アンプ907iMOS LTD。スピーカーがロジャースLS5/9という組み合わせ。
これでどうよ?
面白いもので量感という点では別物かというくらい出てくる。
これはスピーカーG7とLS5/9の性格の違いがひとつ。
もちろんアンプも違うからトータルでの差異ということになる。
こういうのを見ると(聴くと)、ヨーロッパのスピーカーの音作りというか
そもそもの音の捉え方の違いに今更ながら思い至ってしまうのだが本日のポイントはそこではなく
カートリッジだ。
一応オーディオ日記的に細かい事を言えば、量感が出たと言っても質感が伴うのかというのは
微妙な問題だ。
音の芯が…という話になるかもしれない。
だが、しばらく聴いていればそんな事はどこへやら。大変結構なお点前なのだ。
とにかく気持ちが好いというかハッピーになれるというか。なんの問題も感じない。
聞けばこのカートリッジも1万円しない設定だったとか。
嘘のような話しである。
つい先日驚かせてくれたAT-E30も数千円のカートリッジだった。
320との直接対決なんかも面白いかもしれないが、不思議と302は妹キャラで
AT-E30の方は男の子キャラなのである。
その辺が、どうしてそのような違いが出るのか?
考え始めると本当に面白くて仕方ない、カートリッジの世界なのである。
ここでなんと…
9月25日
なんと540MK2降臨。
なんともクソも無くて実は最初から用意されていたのだ。
一連のオルトフォンをご用意いただいたのは又してもゴンさん。
もう感謝以外の言葉が浮かばない。
申し訳ないです。
さて、540といえば500シリーズの上級機。どんな音がします??
そんなに520と変わらないだろう、という予想は裏切られた。
パっと聴いた瞬間から違うのである。
何が?というと仕事の丁寧さみたいな物だろう。
もちろん何も考えずに聴いていたら520も540も、あるいは310も同じに聞こえるかもしれない。
それは音に興味があるかどうかの違いに繋がる。
テーブルに何かを置く時に音がしないようにそっと置く、なんてのは当然の話しで、
その際の空気感みたいなものにまで配慮されている。
そんな感じがするのが540だ。
何を大げさな、というかもしれないけど、きちんとした演奏というのはそんなところまで
行き届いているし、録音というのはその辺までちゃんと録っているというか録れている。
そこを引き出せるかどうか?が再生装置側のひとつの課題になる。
力感も520より出てくる。
ただ、この辺が兄弟機種だな、と思うのだが図々しさみたいなのは無いのである。
両家のお嬢さんが520だとすると540は少々歳の離れた長女。あるいは従妹かもしれない。
このシリーズ、ボディは共通で針の差し替えでグレードアップ可能ということで
520で手を染めた人がやがて540の針を…と言いたいが、そこまでする人って現実にはあんまり居ない。
最初から540に行けた人が幸せだったのか?あるいは520でハイコストパフォーマンスを享受した人が幸せだったのか?
それは誰にもわからない。
ここでとどめに…
9月26日
ここでとどめに530mk2の針が登場。気づけばフルラインナップだ。
540の針はフリッツ・ガイガー。対して530はファインライン。これはVMSだったら30に出てくる針先だ。
520はいわゆる楕円針だったが、さて530の音は?
実に面白いのだが530の音は540とは明らかに違う。
針先でこれだけ違うか?と言いたくなるのだが違うものは違う。
品位はどうしても540の方が上。ただ、530は同じボディか?と首をかしげる程元気がよい。
あるいは540と520はどこか通じるところがあったのだが530は中間というのではなく路線がやや違う感じ。
それこそ異母兄弟みたいな気がする。
ちょっとタガが緩んだ次女、と言ったら失礼か?
…ということで結局500シリーズほぼ全部と300をお聞かせいただくことになった訳で
お礼の申し上げようもない。
オルトフォンってつくづく良い仕事するメーカーだよな、と思いつつ最後に手持ちの
VMS-20MK2を聴いてみた。
ボディの一部にエポキシを盛った方の奴だ。
するとこれも善戦。
仕事の丁寧さで一歩後退かもしれないが、音楽を全体として理解して鳴らして届けてくるという点では
引けを取らない。この辺は開発時期の違いというか作っている人の世代の違いというか、
その辺が反映されているなあと一人で関心する。
量感はたっぷり。そこにあと一歩の質感が加わると最高だが、それを望むならもう少し金を出せと
言われそうで、それが当たり前なのだ。
名門が名門と呼ばれるにはそれなりの意味がある。
そのことを実感させて頂けたのもゴンさんのお陰。
何度目かのありがとうございます、をお伝えしたい。
9月27日
久しぶりにPRA-2000を使ってみた。
結論をいうと大変結構なお点前で、
これでも十分やっていける事がわかった。
それは大変良い事なのだが、写真のは2号機。
1号機が行方不明なのは何故?
こんな大きい物がどこへ??
笑いごとではない。
DP-3000のプレーヤーを久しぶりにちゃんと使ってみたら
なんとももっさりした感じ。
?と思ったらピッチがズレていた…
そうでした、クオーツとかじゃなかった。
DDは放っておいても良いと思ってはいけないのでした…
9月28日
秋、なのだろう。さすがに…
気づけば9月も終わりである。
KP-07だが今更言うまでも無く、スケルトンにしたKP兄達にフォルムが
似ている。
メーカーも考える事は一緒だったのか?
ただ、さすが本職?見事なパッケージだ。
もっとも、スケルトンにしたKPでもスイッチ類を07同様に
見事に収めた作例もあるのだが。
9月29日
やっぱりここのカバーはあった方が良い。
美しい♪
9月30日
9月も終わる。早いもんだ。
やっと涼しくなった。オーディオにも良い季節到来。
四分の三が終わったけじめとして、全くどうでもよい事を書こうかな。
だって毎日それなりに真剣なこと書いていると疲れるんだもの。
リスニングポイントから左を見る。
たぶんここの山が一番使っている装置かも。
プリにPRA-2000が出てきている。
一種の生存確認みたいなものだが立派に役に立つことがわかった。
その下にデジタルプレーヤー。SONY DVP-S9000ESがある。時々CDとか掛けるのに使う。
その下にパワーアンプが二つ。これはOTTOのDCP-5500で日立のキャンMOS採用。
それだけだったら9500もあるのだし手を出さないのだが、二台でBTLが可能なので二つ揃えた。
揃えた、は良いけど大して検証していないかも(-_-;)
その下にCDプレーヤー二つ。故障していて修理待ち。
マランツCD34とダイヤトーンDP-103と後者はかなりマニアック。
隣に行くとMU31Dを改造した(millonさんの手による)ターンテーブル+EPA-100。
下にはフォノイコHX-10000。さらに下にプリSY99。
更に隣に行くとDP-3000+WE506/30のプレーヤー。キャビはレッドコンソール。
ここに付くカートリッジは必然的に重い物になるのだがDL-103初期型+PH-L1000でかなり気に入っている。
下にパワーアンプHMA-9500。
正面に目を向けると当然スピーカーがあって、SONY SS-G7とロジャースLS5/9。
G7はHMA-9500でドライブするがLS5/9はサンスイAU-α907iMOS LTDでドライブ。
907MOSはプリメインとして使える他、メイン部だけを使うこともできる。
つまりパワーアンプとして使えるわけだが、その入力が二つ(バランスとアンバランス)ので
片方をSY99からの信号受けに。もう片方を後に紹介するSY88からの信号を受けることが出来る。
実に多彩な使い方が出来るのはこのアンプの密かな魅力。
もちろん、MOSアンプだからこの部屋に居るのだが。
その907の上にはSONY PS-FL77が居て活躍中。
T4Pのカートリッジはこれまでテクニクス製を使っていたが今回オルトフォンの320が常駐することになった。
その上にKP-07が居るけど、多分暫定的。
907の下にはカセットが二台。
ナカミチ480Zは実働可能だがTEAC C-3は要調整。
右に行くとGT-2000黒とGT-2000Xが仲良くお座り。
GT-2000にはSAEC WE-308Nが載っていてシュアーV-15Type3が付いている。
GT-2000XはWE-407GTが付いて、こちらにはDL-103無印が付いている。
プラッターは2000にステンレス製が。2000Xには砲金製YGT-1が載っているから起動はどちらも遅い。
プリはSY88。他のでも良いのだけどフォノが二系統あってこのスペースに入る物ということでチョイス。
その下にメインアンプQUAD405/2があって、これはスキャンピークの10センチを使った自作スピーカー
GTO Specialに繋がっている。
あとはCDX-2200があって、ネットワークプレーヤーONKYO T-4070があってファイル再生対応。
以上。
ああ、素晴らしい。なんて実りの無い日記。
たまにこういうのを書きたくなる。
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