9月14日
唐突に話は変わる。
(いつもの事だけど)
ケンウッドKP-07降臨。
トリオL-07だったらもっと良かった?
かもしれないがそうでもないかもしれない。
1988年と案外昔の発売だった。
当時75,000円と思ったより高価。
KP-1100が10万円くらいだった時代である。
サイズは390W×145H×370Dとコンパクト。
直径30センチのプラッターの周囲におむすびみたいな四つの突起があって
その下には当然ながらインシュレーターがあり、内一つのところにトーンアームが
配置されている。
これで7万5千円?と思ってしまうのは、育ちが貧しく、何かというと目方でドン!
みたいな人間だからである。目方だけで物事の本質がつかめるものではないのだ。
中身に目を向けると、なんとユニファイドアルミダイキャストシャーシ採用。
おいおい、1100一族と同じかよ、と呟きたくなる。
アーム、モーターはこのフレームに当然ながら固定されている。
ターンテーブルシャフトには砲金も採用。
そこに載るプラッターは重量2,5Kg。起動トルク1,5kg・cmでスムーズに回りだす。
トーンアームがまた格好良い。ストレートでテーパーが美しい。
どうもどこかで見たような…と思ったら、このプレーヤー、モーター以外は
マイクロ精機製だとか。
納得…である。
各種スイッチ類のフィーリングも大変好ましく、こりゃなんなんだこのプレーヤー、と
思ったところで音を出そう。
見ればカートリッジ付属なのですぐ音は出せる。
深く考えずに盤を載せて針を下ろす。すると…
9月15日
針を下ろす。すると…
なんだこれ?すごく好い。
なにか錯覚かと思ったがそうではない。確かに良いのである。
こんな小さなプレーヤーなのに良いじゃない、ではなくて
本格的な音の好さを感じる。
好くて困ることは無いし、驚いていること自体が失礼であろう。
しかしやはり、いわゆるミニコンの一員みたいなプレーヤーからこの音か、と思うと
”やられた!”感が付きまとう。
そしてもう一つ思ったのが、”自分はこうした世界が好きなのだ”ということ。
いや、それはあるいは遥か昔からわかっていたのだが今回改めて確認というか確信。
”わかりやすい良さ”。そうしたものが僕は好きなのだ。
複雑な表現とか、それを理解するための修練みたいなものが不要な世界。
「答え一発カシオミニ!」みたいな世界(違う?)
低音がドーン、とか出て、高音がシャーン、と来て、出来たらセンター定位がちゃんと決まると良い。
実は好い音なんてそんなもんだと思っている。
上とやらを目指す気持ちはもちろんある。
しかし、どこかで「たかがオーディオだろ?」っていう思いがある。
「細かい事ゴチャゴチャ言って。俺は良いけど、YAZAWAはなんていうかな?」なんて
矢沢さんだったら言ってくれそうな気がする。
9月16日
ま、それはさておいて、このプレーヤーに付いてもう一点。
それはカートリッジだ。
付属しているのはどうやらテクニカのOEMでAT-E30相当だというのだ。
1984年発売。
つまりCD時代到来の中でのリリースなのだ。
このシリーズはトップのAT-E90でも18,000円とリーズナブル。
以下70が13,000円。50が8,000円。32が4,000円。そしてこの30も4,000円と
大変なお値打ち品。
なんというか他のカートリッジの交換針買うお値段でこちらをどうぞ、みたいな感じだ。
当時の広告が見つかったが、”VM型のEシリーズ。鮮烈。吹き飛ぶ。きいたあとまで明るい。
こんなカートリッジははじめてだ”
“振動系の40%軽量化とか、LC-OFCの発電コイルとか、新しいフューチャーが沢山あるらしい。
でも、それはどっちでもいいことなのだ”と綴られる。
どこか若い層におもねった。ある意味オーディオの広告らしからぬコピーではある。
CD時代にアナログを聴こうという層にアピールするにはこうした方が良いと社内会議で決まったのか。
真相は闇の中である。
肝心の話をするとこのプレーヤーの音を好いと感じるポイントの一つが
付属カートリッジのAT-E30相当だと思っている。
もちろん他のカートリッジと差し替えてみないとはっきりした事は言えない。
だが、このプレーヤーのアームはストレートであり、専用シェルが無いと他のカートリッジは使えない。
わざわざシェルから外して取り換えて、という気持ちは現時点でゼロである。
これはこのまま聴くのが絶対に良い、と俺のハートが呟く。
一体この見るからにパッとしない(失礼)カートリッジのどこにそんな力が秘められているのか?
不明である。
9月17日
不明である。
ただ、まず30だけでなくこのシリーズ全体の売り物である、振動系の重量40%減はただ事ではないと思うのだが
いかがなものか?
そして、多分、だがシリーズ末弟に近づくほど骨太な音に振っている。
これは当時の雑誌の寸評を見るとわかる。
仮に集めて並べたとしても、僕の好みは50か30であって70や90じゃないと思う。
ちなみにこのカートリッジ類の考察はlimited師匠がずいぶん前にアップされているので
そちらを読まれる方が有益ともいえる。
だがしかし、テクニカはこのAT-Eシリーズを早々にディスコンにしてしまい後継も作られなかった。
一つは世はデジタル時代の幕開けだったからというのがあるだろう。
そしてもうひとつ、すぐ後にAT-MLシリーズが投入され、引き継ぐべきところは引き継いで、
更なる上を目指すということでお値打ちのAT-Eシリーズは早めにお引き取りを、となったのかもしれない。
だが、よっしーみたいな人間の観点ではAT-EとAT-MLはどちらにもその良さがあり一長一短。
好い勝負をする好敵手同士に思える。
しかもAT-E系は安値で放置されている。
これは狙い目、と書いてもみんな信じないから大丈夫♪
最後にひとつ。
KP-07は演奏が終わると自動でアームが上がりプラッターの回転は止まる。
いわゆるKP標準である。
これも大変ありがたい機能だ。今更言うまでも無いが…
最後の最後ににひとつだけ。
ダストカバー。
プラッターだけを覆う、文字通り被せるタイプだが可愛過ぎる(笑)
出来たら全体をカバー出来るアクリルの物が欲しいが、そうなると案外大きいのが必要かな?