6月20日
それにしてもSTANTON STR8-90にSHURE M44-7の切れ味爽快っぷりには感動した。
変な言い方だが、今年の夏はこの一式を持って、海が近い民家に引っ越して過ごしたい。
そんな気がするサウンドだ。
和室で、窓は全開。床の間に装置を置いてボリュームをグンと上げる。
色々な細かい事は、その開けた窓からすっ飛んで行ってしまいそうだ。
玄関脇には原付が一台。買い出しとかする時だけそれに跨る。
なんて理想的なんだろう。
…と言うことで8月が終わるまでそのまま楽しんでも良いのだが
バカにつける薬は売り切れているので次が出てくる。
KP-800。
なんだこの既視感は?と思ったら昔limitrd師匠が持ち込まれて
KP対GTなんて企画をやったのだったな。
懐かしい…
改めてなのだがKP-800。
1982年発売。
当時85,000円。
この頃既に、いわゆる真っ向勝負のマニュアルプレーヤーのリリースは減っていた。
そう、デジタルが来る事がわかっていたからだ。
ほぼ同時に出た物のひとつに、pioneerのPL-88Fがある。
ご存じフロントローディング式である。
そんな風にスペースファクターだとか利便性を追求する物が増えていた。
それはデジタルとの共存を想定してのものだったろう。
(まさかあれほどのスピードでアナログが消えるとは各メーカー思っていなかった?)
しかしトリオは違った。KP-7300辺りから面々と磨き上げてきた正統派路線を一段と充実させる形での
ニューモデル投入である。
6月21日
800で投入された物としてはDLモーターがあり、これはその後の880や1100、9010にも受け継がれていくことになる。
ダイナミックセンターロックシステム。
スピンドルに特殊な溝とオイルホールを設けて、注入されたオイルをスピンドルが回転することで周囲に循環。
そのオイルの圧力で軸受け周り全面が支持される構造となっている。
これによってスピンドルの絶対的中心点でのホールドに成功。
底面から7μの高さに固定。
それでいてそのフローティング能力は7,5Kgまでの重さに耐えるというのだから恐れ入る。
トーンアームはオーソドックスなS字。後のDSアームみたいな特色は無いが、あるいは美しさでは上回るかもしれない。
内部でセンタースピンドルと、いわゆるメカニカルショートの構造となっている。
これは880なでも継承され、1100、9010でユニファイドアルミフレームという形に昇華することになる。
演奏終了時オートアップしてターンテーブルの回転が止まるのもこの頃から。
実に便利で安心な機構だ。
キャビネットは硬質ウッド+ARCB(アンチレゾナンスコンプレッションベース)材でトータル重量11,5Kg。
以上で85,000円というのは安いと思う。カートリッジレスだから揃えて10万円くらいの想定とみる。
ということで音を出してみたい。
6月22日
カートリッジはVMS20EMK2にしてみたが、音が出ると、これはつい先ほどまで同じ場所に居た
STANTON STAR8-90に差を付ける。
どこかどう、というより全体にツーランクくらい上昇。
部屋も違えば料理も違う。従業員のクオリティも格段の違い。
そんな感じか。
STAR8-90も7万円くらいしていた筈なのだが作りこみの違いみたいなのがもろに音に出てくる。
もっともKP-800はアナログ絶頂期に作られている。両者を同じ俎板に載せるところに既に無理がある。
KP-800は十分エースを張れるクラスだ。
恐らくノーマルのGT-2000と良い勝負。というか音だけなら勝るかもしれない。
ただ、いつも言うことだがオーディオ機器の価値とか喜びはそこだけでは決まらない。
ルックスは好みがわかれる所だろうが威張りが効かない分はKP-800が不利に思える。
ということでしばらくはそのまま聴いていたのだが多少気になるところも出てくる。
まあどんなものでも時間が経つと気になるようになるものだからKP-800だけ特別にどうこうという話しではない。
だが、なんか引っかかるので左隣のMU-31D/TS+EPA-100と比べながらチェック。
これが…というのがテーブルシート。
固い。多分経年変化で固さが増している。
そんなもん気にしなければ良いのだが引っかかるとどうにもならない。
ということでJP-501に交換。
全く手触りが違うので、これで音に変化が無いと困るがやはり違う。
安心するやら戸惑うやらだが、やはりテーブルシートはアナログプレーヤーの中の
重大要素の一つだ。
振り返ればlimited師匠のKP-800では、あの時砲金ターンテーブルシートのY31ST1GMを綺麗に載せるために
削り出しターンテーブルまで使って万全を期していた。
そこから繰り出されたサウンドは今に至っても耳が覚えているくらい強烈なものだった。
今さらだがまじめに一つづつ詰めていくと結果はそれに伴って出てくる物なのだな。
操作性も良い。
ダストカバーを閉めたままでオーケー。
スイッチの形も良いしレタリングも良い。
実際使うとなるとこうした所もとっても大事。
ただし、ダストカバーはストンと落ちる。
ヒンジが割れるまでは至っていないが
この辺の経年劣化はKPの持病だ。