6月4日
6月5日
このページは100人の人に向けて書いている、と僕はよく言う。
うぬぼれるな、100人も居ないよ、と言われたらそんな気もする。
では10人ならどうだろう?
10人だったら確実にいると思う。思いたい。
多分その10人の中のお一人と思われる方にTさんが居る。
これまでも何度かご紹介はしているのだが皆さんご記憶頂いているだろうか?
応援いただくこと度々だが今回も貴重なカートリッジをお送り頂いたり、資料を頂戴したりしている。
この場を借りて改めて御礼申し上げます。
さて、そのカートリッジがこちら。
…なのだが、これ、パッと見てなんだか分かったらかなりの通だと思う。
こちら、アントレーのEC-25STという。
そう、先日登場のアントレーEC-15WXの姉妹機種だ。
1984年発売。当時26,000円。EC-15WXより高価だった。
しかし、このカートリッジと限らないが、俗にいうアナログ末期に、各社よくぞ新規カートリッジをリリースしたものだ。
まあ、あれほど急速にデジタルへの移行が進むとは皆思わなかったから、だろうが。
さて、しかしこのEC-25ST。調べてみるとなかなかの存在だ。
まず針圧。これがなんと最適3gである。
よっしーの経験ではMCで針圧3gはこれまでの記録だと思う。
一体なにがどうしてこうなった?
針が0,7mil。この辺でなんとなく性格は想像されるが、さて…
6月6日
今回はテクニカの15gのシェルに取り付けられていて総重量22gくらい。
この選択は、多分正しい。
いそいそと盤に針を落とすと…
おお、これは概ね予想通りの音だ。
実にどっしりした音。ぐっと腰を落とした感じ。
ただし大柄ではなく小兵を思わせる。
太い低音。だが裾野の広がりはそんなに欲張っていない。
MCの中のDJカートリッジ的存在?
それで更に調べてみると同時に25LPとかSPというのが出ていたことがわかる。
EC-25LPはモノラルカートリッジ。そしてSPはなんと文字通りSP盤用なのだ(!)
LPの方は最適針圧3,5g。SPに至っては最適針圧5gで2,5mil針。
なるほど、EC-25STというのはアントレーのヘビーデューティー三兄弟の一角なのである。
これぞ男の生きる道?いや、EC-25SPなんて何本くらい売れたのだろう?
6月7日
さてしかし、針圧3gの威力は所々で発揮される。
盤の中には原因不明の針飛び個所を持つものもあるのだが、見事にトレースしてしまう。
カスハラをかまそうとしたら見事に上から踏んずけられてしまった。
そんな感じか。
実に痛快。
趣味の世界だから何でもありだが、放っておくととんでもない所まで行ってしまうのも道楽の困った面だ。
良い音とやらを追い求めるのはこの世界ではよくある目標かもしれない。
しかしそうした考え方を下敷きにしたやり取りに食傷気味にもなる。
ちょっとだけ自分の事を語ろう。
いつからか忘れてしまったが、人様から立派と言われるような人間にはならない様にと気を付けるようにした。
面白い人と言われても良いが素晴らしい人とは言われないようにと心がけている。
驕ればその気持ちは必ず音に出るから、そんなことにならないように自分を戒めて…というのは真っ赤な嘘だが
家にステレオ装置があって音楽が聴けて…、なんてそれだけで幸せなことなのであって、無暗やたらに立派な音なんてものを
目指すんじゃないよ、と、どうも貧乏性なのか思ってしまうのだ。
…話しが脱線した。
ガタガタ言うと上から踏んづけて轢いて行ってしまうようなこの音。
煩いモラリストの眉間に銃口を押し付けるのも何とも思わない。そんな感じのするやばい奴。
こんな生き方。こんな音が、今みたいに言葉の暴力が横行する
時代背景だからこそ必要なのではあるまいか?
そんな風に思ってしまう。
なお、決して乱暴な音とかそういう事ではない。
これを書いている今現在、フォノイコのHX-10000を介して
SY-99で受けているがトータルでとても良い。
このカートリッジに関してはSY-99ダイレクトよりもこちらの
組み合わせの方が合うのかもしれない。
なんとも粘っこく甘い感じの音がするのは
アントレーの系譜なのか?
ここのところやられっぱなしである。