5月27日
アントレーというブランドがかつて在った。
当時の会社名がアントレーアコースティック。社長は松平吉男さん。
場所は渋谷区千駄ヶ谷にあった。
アントレーの創業は1977年だがもちろんその前に修行時代みたいなものは長くあったが
ブランドが立ち上がってからはMC一筋。
それもいわゆるオルトフォン型のMCに賭けていた。つまり鉄芯入りのMCだ。
一号機がEC-1。
翌1978年にEC-10発売。定価23,000円。
3,5Ωとローインピーダンスながら出力は0,24mV。
カーボンファイバーも使ったボディで重さ5,8g。
このころ既に、アントレーブランドのシェルが出ており、それと合わせると19g前後なので
大変扱いやすい重量設定となる。
第三弾がEC-15で19,000円。
インピーダンス、出力、重さ共にEC-10同様。二段テーパーのカンチレバーというのも実は同じ。
コア(鉄芯)入りコイルの良さを活かして出力高め。太い線を短く巻いて使えるところが鉄芯入りのメリットでもあり
そのコア材による磁気歪があるのがデメリット。
針圧2gと割と高め。そしてローコンプライアンス。
そして今回登場のものはEC-15WX。
発売は1983年とされる。当時14,800円。
5月29日
WXが付いて高くなったかと思ったら、なんと安くなっている。
インピーダンスが6,5Ωで出力は上がって0,5mV。
EC15を語りながら無印とはだいぶ音が違うらしいのだが、その無印が手元に無いから違いはわからない。
というか、そもそもアントレーのカートリッジ自体が初めてである。
これまで手を出さなかったのは、案外高い物にばかり出会っていたからである。
今回のものは4千円。針もチップも付いてる。ただし音出し未確認のジャンク扱い。
だから安いわけだが、一種の掛けである。
帰宅後シェルに取り付けてみたら無事左右とも音が出た。賭けに勝ったぞ。
いや、それほどの事ではないが。
喜んで盤に針を下すとこれが…
音が出た。それだけでうれしい。そもそもジャンク扱いでの販売だったのだから。
…しかし、これはちょっと音が酷い。
うむむ…?
ただ、原因は想像が付いていた。そう、シェルである。
とりあえず、と採用したDENONの型番不詳のシェル(ちゃんと調べればわかる)。
どう考えてもこれだ、と思った。
別にDENONに恨みは無いし、いつもこのタイプがダメというわけではない(と思う)。
ただ、今回は絶対的にアウトであった。
では交換。
何にするかって決まっている。アントレーのシェルである。
25年くらい前に、このシェルは音が好い、ということで内内で盛り上がったことを思い出すが
実際このシェルは万能感が強い。
何よりブランドを統一してみたいということでアントレーのシェルに取り付ける。
これでどうよ?
どうよ?もクソもこれで悪いといたたまれない。
結果、音は激変。突然本領を発揮し始める。
これは良い、のだがなんだか想像とは違った。
僕の勝手の想像ではアントレーというのはどちらかというとクラシック向きの
大人し目の音だったのだが出てきた音は違う。
元気である。後から調べたらJAZZにはアントレーと決めている人もいるとか。
不勉強なわが身を恥じるばかりだ。
なにより素晴らしいのは、なんとも太く、艶めかしい音がするのである。
なぜかよっしーの部屋にはそうした音のするカートリッジというか機器が無かったのだな、これまで。
ということで貴重な一本が加わった。