2月1日
2月2日
カートリッジ。
これで何本目か?
もういい加減やめれば良いのだが病気というのはなかなか治らないものだ。
そんなにたくさんあってどうする?
どうもしないのである。
音は確かに一つ一つ違う。
だが、言うほど違うのかというとそうでもない。
どのカートリッジもメーカーが真剣に作っている物なのだ。そんなみょうちくりんな物が出てくるわけがない。
例えば1万円のカートリッジが10万円のカートリッジと比べて1/10の音しかしないとか、
そんなことはない訳で、その意味ではローコストカートリッジがCPは高いと言える。
では高いカートリッジに意味が無いかというともちろんそんなことはない。
だが、昨今のようにカートリッジ一つがすぐに10万円単位になってしまうと、
どうも理由なき反抗をしたくもなるってもんだ。
という前口上はそれくらいにしてDENONのMCである。
2月4日
という前口上はそれくらいにしてDENONのMCである。
DENONのMCと言えばDL-103だ。これで決まり。
満更嘘ではない。
ただし古典的である印象はぬぐえない。
だから、というわけでDENON自身が103Sだ103Dだと近代化バージョンを出して来ていた。
ただ、オリジナル103を弄る形には限界もあって当然。
ついに'79年3月にDL-303発売。
振動系の実効質量を軽量化。
0,18mgとハイコンプライアンスカートリッジの誕生だ。
空芯コイルとサマリュウムコバルト系マグネットで自重の低減を図りつつ高出力化。
カンチレバーは特殊アルミの二重構造でテーパー処理。
特殊楕円針は0,1×0,05mmの長方形断面だ。
コイルは左右対称の十字巻き。
針圧1,2gで出力0,2mV。お値段45,000円である。
103ではないDENONのMCという事で好評を博したというか音色傾向も103とは異なったからこそ
売れたのだろう。
翌年305登場。更にその後を追って301登場。
305が303の純度を更に上げた様な正統派であるのに対し301は明るく元気な音を狙った
コスト制限版。
悪いと言っているのではない。305の65,000円に対して301は22,000円。
303との比較でも半額を割っている。
それでいて二重構造テーパー付きカンチレバーに0,07×0,14mmのチップで適正針圧1,4gと健闘。
303達よりちょっと大きなボディで重量は4,7g(303は6,5g)と軽量化に成功している。
というかこれは磁気回路の違いと見るのが正しいだろう。
2月5日
301はその後207を生み、55や110も生み現代にその系譜を繋いでいる。
ある意味スゴイカートリッジとも言える。
ま、そうしたことをちゃんと知りたい場合ははlimited師匠のページをご覧いただくのが確実である。
さて、しかしその301属の中にDL-32なるカートリッジが存在することを知ったのは昨春のことである。
koyamaさん宅を訪れた時、メインのカートリッジがこれだったのだ。
え?これなんですか?との問い掛けに、DP-32fに付属だったカートリッジ、との回答。
出た!付属カートリッジの世界である。
DP-32Fは1981年の製品。
当時59,800円のフルオートプレーヤーである。
(ちなみにこの時期の同価格帯はオートプレーヤーの激戦区だった)
このプレーヤーのアーム先端に、PCL-30というADC規格のシェルを介して取り付けられていたのが
DL-32だったのだ。
2月6日
それ↑によると出力電圧0,3mV
針圧は1,8g推奨。
針交換(つまり本体交換)価格が8千円ということだから大雑把に単売だったら1万円くらいの
カートリッジだろうか。
そう考えるとDL-55とか110の始祖みたいに思える。ただ、ルックスは301寄りだ。
何分にもプレーヤー付属のカートリッジだからプレーヤー込の情報を探すのが精いっぱいである。
別冊FMfan31号(1981年秋号)に取り合いがあって石田先生がインプレを書いている。
それによると32の母体は301。
違いは針先チップが32は接合なくらいで2ウエイダンパーや二重構造のカンチレバーは共通らしい。
まあそう聞くと32は大変なハイCPという事になるが、実際には22,000円の301との違いがそれだけで済むわけがないので
細かく見ると随分違うはずだ。
それにしてもこの(DL-32)カートリッジも良く残存していたな、と思う。
プレーヤー付属の場合、多くはプレーヤーと共に使い倒される。
40年余の間に多くのDP-32Fが廃棄され、そこから”カートリッジだけでも”と抜き取られたDL-32が生き残ったのか。
あるいはリアルタイムで目を付けたマニアが301を買うより32をプレーヤーの部品として発注する方が得だと
思ってそうしたのか?
後者はあまり考えられないので前者のパターンのが残ったのだろう。
オクでも見ていると定期的に出品はある。ただし程度は玉石混合。
今回の個体は京都の名門、BBGオーディオから来たので間違いのない一本。
見つけてくださったのは、勿論?koyamaさんである。
さあ音を聴こう。今回の個体はちゃんとシェルに付けられてのご来訪だから話は簡単。
EPA-100に取り付けて試聴。
2月7日
EPA-100に取り付けて試聴。
SY-99のMM入力は感度大だからと最初はMM受けで聴いてみた。
悪くないがやはり素直にMC入力で聴いてみよう、と繋ぎなおす。
音だが最初の印象はカラッと乾いた感じが魅力で潤いはやや後退という感じだった。
だが焦りは禁物。レコードを何枚も掛けて、その都度針先をメラミンでゴシゴシして、
なによりアンプが本格的に暖まるのを待つと音も変わってくる。
目下絶好調で鳴っている。
明瞭快活で実に分かり易い音だ。
そうしたことも魅力の一つになる。
人間でも同じだがやたら持って回って複雑な言い方を好む割に何が言いたいのかさっぱりわからない、
みたいなのは困るのである。
極端に言うとこれ一本で何とかしろと言われたら
やってやれないことはない、という気にさえさせる。
ここでふと似た形のカートリッジが家にあったことを思いだす。
2月12日
似た形のカートリッジ。そう、DL-110である。
前身がDL-55で、そちらは普通のMCというか出力が低い。
110の方が後から出て、こちらは高出力だ。
良く似た…という意味では32と55の鳴き合わせなんてのが面白いかもしれないが
あるいは似すぎているかもしれない。
その点110の方が続けて鳴らすには良いだろう。
高出力MCだからマグネットは強力に。そして巻き線は極細になる。
それは良い点でもあり間違うとデメリットにもなる。万事一長一短だが
ヘッドアンプやトランスが不要なのはユーザーの費用負担という点では明らかにプラスになる。
出力1,6mV。
実はDL-110の音にはそんなに良い印象は無かった。
単純に言うとどこか力不足。これは敢えてヘッドアンプを通して鳴らした方が良いのでは?と
色々試したくらいだった。
今回どうかな?と思ったがこれは良かった。明らかに前に聴いた時より良い。
多分SY-99のフォノの感度の高さが役立っている。
バッチリ鳴って、しかも瑞々しい。切り口から水がぱあっと飛ぶのが目に浮かぶような鳴り方だ。
このカートリッジ今でも売っていて凄いロングセラーだ。
昔は11,000円だったが現在は36,300円?
随分上がったが周囲に居る狂乱物価ならぬ狂乱価格のカートリッジ達と比べたらはるかに安い。
さてさて、我ながら相変わらずのことをやっているがカートリッジというのは果てしなく面白い。
ただ、こんな慌ただしい付き合い方は他人様には勧めない。
数本のカートリッジを相手に、ああでもない、こうでもない、とやるのが人として正しい。
特にシェルとリード線の影響は大きい。今回登場のDL-32についても110についても
もう一段グレードの高いシェルと、マッチングをよく見たリード線を使えばぐんぐん音質向上するのは
目に見えている。
繰り返しもう一度言っておく。皆さんはカートリッジとはまともな付き合い方をしてください。
人間身は一つ。耳は二つなのである。
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