4月14日
フルレンジ一発にはフルレンジ一発の良さが、やはりある。
それはこんな置き方でもちゃんと伝わってくるものだ。
ただ、アンプに問題あり?
サンスイAU-α907iMOS LTD。
バランスコントロール不具合はケイグさまで修復したが
やはりソースセレクトとかスピーカーリレーとか
劣化の始まりを感じさせるところがある。
もちろんこの部屋に来ていただいた以上ちゃんと直すけど
それには気合が必要。
取りあえず差し迫ってはいないから
もう暫くは大丈夫ではある。
それにしてもCD-10ともども長生きで大変結構。
4月15日
珍しく僕の部屋にずっと留まっているCDの中に
「上司は選べない」SHINE'S、がある。
シャインズ、というネーミングを初めて知ったのは職場でのことだった。
音楽講師さんのリーダー格の人が会議の冒頭で触れていた。
その中で先生は「私の彼はサラリーマン」について触れて、
”私の彼は商社の男 プライド高いが腰は低い”と始まるこの曲を
「こうした音楽がリリースされる時代が来たのだ」と話されていたのを
昨日のことのように覚えている。
「上司は選べない」は1990年3月の発売。
そしてシャインズは杉村太郎さんと伊藤洋介さん二人のユニット。
当初杉村さんは住友商事在職だったのだがバンド活動を会社に認めてもらえず、
大東京火災海上保険に転職。
一方の伊藤さんの勤務先だった山一証券はバンド活動を許可。
そんな経緯があった。
そう、シャインズ、は今でいうサラリーマン複業の走りだったのである。
ここで今度は中谷章宏さんの著書、「複業の達人/冒険サラリーマン宣言」だ。
1991年5月メディアファクトリーから刊行されたこの本は30年後の今思うと、
”予言の書”みたいになっている。
間違っても”副業”ではなくて”複業”となっているところが、さすが中谷さんなのだ。
さもしい小遣い稼ぎ、などという意味合いではなく、一人の人間がダブル、なんならトリプルで
仕事をすることを推奨する本である。
シャインズについても触れられていて、伊藤さんの勤め先はバンド活動を認めたのに対して
杉村さんの勤め先(ご著書では社名は伏せられているが)は大いに男を下げたというように書かれている。
さてしかし、複業というかダブルワークトリプルワークがどうして推奨されるか?だ。
2023年の今日でも、副業、と副える仕事的な言われ方をするし、注目はそのサイドビジネスで
どれくらい稼げるか?みたいな話になる。
申し訳ないが1990年代初頭に「複業の達人」を読んだ身としてはいい加減にしてくれ、と言いたくなる。
とっくの昔に、”私はこの仕事を一生懸命やっているんです”では済まない状況になっているのだ。
100点を120点にするために本来の時間の1,5倍働いています、なんてのは本当は死刑に値する?やり方だ。
何のために残業無しで帰って欲しいかというと、一社を退勤した後は別のビジネスでこの国に、世界に
価値を生んで欲しいからだ。
いまだに昭和から、これっぽっちも脱却できない人の多いことには感動さえ覚えてしまう。
…おっと、ちょっと感情的になってしまった。
残念なことに杉村さんは2011年に47歳という若さで亡くならている。
寿命というのは誠に不公平である。
4月16日
AU-α907iMOS LTDにはフォノもある訳で
そこにはJL-B37Rが繋いである。
思い付きでカートリッジにSATIN 117をチョイス。
実に適当な扱いで、パッと音を出してみた。
歪っぽかったらすぐ換えようと思っていたのだが
これが何故だかあっさりと好い音が出てしまった?
偶然にしてはスゴイ話だが、こうしたこともあるのが
アナログだ。
せっかくなのでそのままレコードを聴こうじゃないか。
大変安定している。
ずっとこのままの君で居て欲しい。
4月17日
SATINなんて楽勝さ。
…なんて呟いていたら罰が当たった?
というほどの事では無かったのだが
針カバーを付けようとしてうっかり針ユニットに触れてしまった。
そうしたら途端に音が変になった。
この針ユニットはマグネットでボディに吸着されるのであって
その位置は割とオートマチックに定まる筈なのだが
結構微妙なものである。
他のSATINは知らないが、この117に関して言うと
針圧がどうこうという点よりも
(もちろんそれらも大切だが)
この針の納まりの方が音質に与える影響大
と感じるのだが違うかな?
4月18日
SATIN繋がりでもう一本。
SONY VC20である。
俗称SONY SATIN。あるいはSATIN SONYか。
SONYのカートリッジなのだが、その形式は明らかにSATINタイプ。
過去において詳しく説明しているので簡単にしておくが
純SATNと比べると出力が低い。
(M-21Pなどは除く)
SATINの思想としてはカートリッジの出力は高いことを由としていた。
これはトランスだとかヘッドアンプという狭窄物を省けるからだ。
ただ、そのためにはコイルのターン数を増やすとか、
一定の”傾向”が生まれてくる。
それが是か非かわからないが低出力のSATINをM21P以外で
探すとなるとこのVC20くらいしか見当たらないのだ。
まあそれにしても削り出しであろうボディ他、これが
ミニコンポのプレーヤーに付属のカートリッジだったというのだから
恐ろしい時代があったものだ。
そして、その音、なのだがこれがまたSATIN方式と思わせない?
厚さ主体でまったりした傾向だから面白い。
ただ、その音傾向は主に経年変化でSATIN形式独特の
支持機構の動きが鈍くなっているせいもあると言われ、
そろそろこの個体もメンテするか、と思いながらも、
まあその前に久しぶりに今の段階の音を聴いてみるか、と
思って針を降ろしたらびっくり。
なんかやけにナチュラルで爽やか系の音が出ている。
これは一体…
4月19日
そのままにしておけない性格というか、
リファレンス(物差し)装置でVC20を鳴らしてみた。
すると…
うーん、よく言えば厚みがある。
そしてなかなか華麗な音も出る。
ただ、どうしてもあと一歩二歩、すっきりと抜ける感じが欲しい。
これがVC20のサウンドと決めて終わりにしても良いのだが
俺のハートがNOと言う。
ここでいよいよ特徴的なパンタグラフ形状の部分にパーツクリーナーを噴射。
これはオールドSATINではある意味必須の処置。
つまり硬化してしまったグリスを一旦除去する作業だ。
そんなんじゃあ動かない(音が出ない)くらいに固まってしまっているケースもある。
で、VC20の場合は多分そこまでは固まらない。
なかなか粘度の高そうなグリス(オイル?)が
たっぷり塗られているためだろうか?
これはこのカートリッジがミニコンのプレーヤーの付属という事を考えると
やむを得ないというか、とにかく安心して使えるようにと
設計されたのは想像に難くない。
でも、それが音に良いかというと…
ちょっと疑問は残る訳でクリーニングすると…、どうだ?
4月20日
どうだ?
一聴して音色一変、まではいかない。
だが変わって来たのは感じた。
そこで今度は別のアプローチ。
SY-99のMC入力うからMM入力へ。
VC20の出力はおおむねDL-103と同じくらいと見るので
MM入力でも使えるは使える。
ましてSY-99のMM入力なら十二分だ。
すると、やはりスッキリした感じとしてはこの方が勝る。
そして更に実験継続。
トランスを使ってみる。
うーん、やはり昇圧はした方が良い。
だが、正直言って冴えわたるには程遠い音だ。
マイルドな音と言えばマイルドな音で価値はあるのだが…
いよいよ業をにやす。
もう一発パーツクリーナーで…と思ったが
ちょっとひねってシリコンスプレー登場。
どのみちグリス除去の後にはシリコンスプレーが必要。
もうこれを噴霧してしまえ、と段々大胆になる。
すると、ここまでで最大の変化が感じられた。
もちろん今回のシリコンスプレーが優秀だった、とかそんな話では無くて
積み重ねの効能ということだ。
こうなると更に追い込んで…となるが、
ちょっと怖くなってきた。
一旦離れよう。
一つ言えるのはSONY VC20は、想像以上に付き合い甲斐のあるやつだ、ということ。
4月21日
SONY VC20ネタ。
正直こんな何日も引っ張るつもりは無かった。
しかし現在出ている音と数日前の音は、これはもう別物だ。
やはり生産当時よりのグリスを(ある程度)洗浄したのが
効いたのだろう。
いや、もうスカッと抜けて気分はサイコーである。
で、恐らく、だがこんな感じで鳴っているVC20の方が少ないと思う。
時間が経ったから、というより多分新品時から、いささかダンプ過多。
安全のためにはグリス多めに?
こうなると世界中のVC20からグリス除去をして上げたくなるってもんだ。
改めて、VC20は低出力型のSATIN形式ということで希少。
更にシェル一体型の流麗なボディを持つという点では唯一無二の存在。
優れたカートリッジのひとつと言いたい。