12月1日
人生で60回目以上の12月を迎えた。
12月が本当に楽しかったのは小学6年生までだった。
理由は単純でクリスマスプレゼントがあったからだ。
最悪なのは社会人になってからで、12月は忙しかった。
だからクリスマスどころじゃないし、クリスマスなんて物があるから
クリスマスセールだなんだといって忙しくなるのじゃ。
…話は変わるが8月も人生で60回ちょっと過ごした。
あれはそう、振り返れば15回目の夏の事。
僕は初めて、FMfanのダイナミックテストなる物に接したのだった。
FMfan1976年17号。
8/9から二週間の番組表が掲載されている号なので
発売は7月終わりか8月頭か。
当時僕は中学三年生。
オーディオなるものに興味を持ち始めて数か月。
飽きもせず、懲りもせず、このページを繰り返し読んでいたのだった。
当時FM誌は三種。
FMfanは1966年創刊の古参であり、その辺は週刊FMも同様。
もう一誌がFMレコパルで、創刊は遅かったものの若者向けの誌面構成で
僕らの心をつかんでいた。
隔週刊のFM誌。定価が200円であっても
中学生となるとそうそう簡単に買えるものではなく
買えるとしてもどれか一誌なのだから、それこそ書店で穴が開くほど立ち読みして
(ごめん)から決意をもって一冊をレジに持っていくのだった。
レコパル以外の二誌は、ちょっと固めというか
クラシックファン向けみたいな装いがあったので手を出さなかった僕が
(多分)初めて買ったであろうFMfan。
なぜ?というとこのページにマランツの#1250が載っていたからだ。
1250の存在は春の段階でレコパル誌で知っていて
そのルックスに多いに感銘を受けていたのだった。
12月2日
マランツ1250。
当時195,000円。
1976年ごろの20万円だから、これはかなり高い。
同時期の高額プリメインとして
トリオKA-9300の15万円。
ローテルのRA-1412の159,000円があるが
マランツ1250の195,000円は貫禄が違う。
パッと見てルックスが良い。
シャンパンゴールドにマホガニーのウッドキャビネット。
なにより徹底した左右シンメトリーのデザイン。
マランツのお家芸だよ、と言われたらそれまでだが
こちとら何を見るのも初めての初々しい中学生。
写真で見ては涎をダラダラ流していた。
上段に左右で合わせて12個のプッシュスイッチ。
左側の六つはインプットセレクターで
フォノ1、フォノ2/マイク(マイク入力があるのだ)
チューナー、AUX、テープモニター1、2。
右側の六つは機能系で、
トーンディフィート、ターンオーバー(もちろんトーンコントロールのだ)が二つ。
ローフィルターとハイフィルター。そしてラウドネス。
中段の大きい摘み(といっても径、奥行きとも洗練されている)は
左の二つがレコードセレクターで、つまり二系統のセレクトが可能ということ。
右の二つは、一つがモードスイッチ(ステレオとかモノとか)で
もう一つがボリュームコントロール。
中央にトーンコントロールがあるが、上下にスライドするタイプで
ロー、ハイ、の他にミッドもあってしかも左右独立。
その下に、これは左右にスライドするバランスコントロールが鎮座。
まあ見事というか完璧なシンメトリーを実現するために徹底している。
とどめが下段で左に二つ入力があって、これはマイクを挿すところ。
隣に同形状の入力があるがダビング用の入力と出力だ。
右にはスピーカー切り替えが二つ。その隣にヘッドフォンジャック。
右端に電源スイッチ。
あ、パワーインジケーターはセンターにグリーンの物がある。
12月4日
例によって、なのだがよっしーの1250への想いというのは
なんというか、子供がピンナップガールに片思いをした、
みたいなものであり、実物を見に行こうとしたとか
そんなことも無かった。
現物を見たのは2000年代に入ってからの事なのだが、
このアンプ、サイズは390W×146H×315Dと案外コンパクト。
僕が使っていたVICTOR JA-S31が
390W×152H×330Dと僅かだが大きいのだ(!)
それでいて重量はJA-S31が8kg。#1250は19kgと全然違う。
これはもう、内部の状態が想像出来てしまうが
写真で見てもそれはわかる。
まず電源トランスがでかい。
コアサイズ135×120×62ミリ程度とされていて
コンパクトな筐体の中でものすごくデッカイ顔をしている。
家庭用のエレベーターにお相撲さんが乗ったみたいな感じで
他の人の居場所は無くなった?
と言いたいが当然電源のコンデンサーも容量たっぷりサイズの
110×64。14,000μF×2。
これでも容量が足りないとされてプリ部のシールドケース内に
15,000μFを二本入れたという凄さ。
昔の人はやることが違う。
12月5日
少々無理はあるが、しかしそれゆえ#1250のサイズ感が保たれている。
後年同じマランツのPM-94が我が家に来たことで
僕の第二次オーディオが始まったのだが、
それこそ#1250の孫みたいな存在。
左右シンメトリーにこだわっているという点では同一なのだが
94の時代になるとプリメインもでかい。
もちろんスペースがあるのは音や耐久性を考えると
悪くないことなのだが、昭和の車のサイズ感を愛する人が
昨今の車のでかさを愛せないように、性能だけでは語れない部分が
嗜好品の世界では大事だったりする。
話しは変わり、この#1250は別冊FAN11号のプリメインアンプフルテストにも
登場する。
で、僕はそっちを先に読んで、あとから本誌のダイナミックテストを読んだように
記憶を改ざん?をしていたようだが本当の順番は逆。
別冊の方がおおよそ一か月後のリリースとなっている。
で、本誌と別冊で表現は少し変わっている。
だからよくないという事でなく、これは長岡先生の仕事の丁寧さの
表れだ。
一々テストし直して一から原稿も起こしている。
興味深いのはここで長岡先生の、いわゆる器量論みたいな物が
初めて披露されたこと。
器量論ってなによ?っていうと
オーディオパーツにも器量、つまり器というものがあり、
器量が無いので無理して帯域を伸ばしたりすると
厚みに欠け、厚みを無理に増やそうとすると
レンジが狭くなってくるというもの。
#1250は充分な器量を持ちながらレンジをほどほどに
収めたため、価格以上の厚みを持たせることに成功した、というのが
長岡先生的結論。
論理的でないと怒る方もいたかもしれないが
僕は感銘を受けた。
思えばこの1976年が僕と長岡先生の出会いの年だった。
そして立ち読み(失礼!)を覗いて初のご対面が
このFMfan1976年17号だったのだ。
12月6日
ところでこの17号を買ったのは#1250だけが目当てだったのではないと、
色々書いている内に思い出した。
同じ見開きに載っている、アイワのカセットデッキ
AD-4200にも注目していのだった。
当時の僕が最も欲していた物。
それは立派なアンプでも、レコードプレーヤーでもなく、
(もちろんそれらも欲しかったが)
何よりも録音機=カセットデッキだった。
これはもう当時の世相からしたら当然のことで、
時代はエアチェックであり、そのためにはどうしたってカセットデッキが
欲しかった。
憧れはもちろんナカミチ。3ヘッドデッキだが
現実は…
自分が買えそうなものというと限られる。
そんな中で例えばAD-4200の42,800円なんてのは
とっても親しみを感じるものだった。
そしてこのAD-4200なんか、多分価格を超えた性能を有していたと思う。
これを買っていた方が幸せだったと思うのだが
後年僕は我ながら外したな、と感じるものを選ぶのだから面白い。
(いや、面白くないか)
AD-4200なんか、必要な物はそろっていて
無くて済みそうなものは全部排除、みたいな感じで
潔い。
まずそれが良いし、もう一つはスラントタイプと呼ばれた
斜めの形状が良い。
当時は平置き型から、いわゆるコンポスタイルの
ラックに収めて使えるタイプへの移行が盛んだったのだが
走行安定性などの点で、まだテープを直立させることに
抵抗が残っていた時代でもあった。
そこで間をとって…という意味でもないがスラントタイプなる物も
発生した。
ナカミチ600、ヤマハTC-800なんてのがそれだ。
それらは一定の評価は得たが、時代はやはりコンポスタイル。
アナログプレーヤーに続いてデッキもラックの上段に置くというのは
収納面でベストではなかった?
ま、今更何をいっても始まらない。
さすがに僕もこれからAD-4200を探して手に入れようとは思わない。
淡い想い出だけを胸に秘めて置くのが吉であろう。
12月7日
ところでこの号にマランツ#1250とアイワAD-4200が掲載されているのは
完全に記憶いていたのだが、さて、その他は
というと案外覚えてないものだ。
ページをめくるとテクニクスSL-2000とご対面
全く記憶に無かったというのは、それだけ関心が無かったということ。
ごめんなさい。
29,800円と3万円を切っダイレクトドライブということで話題になった機種
しかもEPC-271込みなのだから、さすが松下。太っ腹である。
今見ると全身真っ黒で格好良い
薄いキャビネットに妙にハイトが際立つプラッターと、その辺が当時は
気に入らなかったのだろうな、多分
しかしボディを低く構えるのは良いことだし、テクニクスのお家芸である
ショートアームも良い
アームベースはアルミダイキャストと手抜き無し。
FGサーボのDDモーターはトルクこそ不足気味だが実用に問題なんて
ある訳が無い
この内容で3万円を切るとはさすが大企業
やることが違う
12月9日
ダイナミックテストでは一度につき大体4つくらいの製品が取り上げられる。
この号の四つ目はなんだったっけ?と思ったら
なんとシェル。MG-10だった。
これも忘れていたが、SL-2000のように完璧に忘れていたのとは違い、
そういえば、ああ、程度には記憶していたようだ。
この頃の長岡先生の推し、はLT-13(初代。アルミ削り出し)だっただろうが
シェルというのはそれこそ一種あればそれで良いとは行かない。
特に重さの問題は結構大きくて
13gというのは既に重すぎというケースも多い。
故に9g、10g、11gなんて重量のが存在するのだが
MG-10は文字通りの10g。これくらいのは使いやすい。
軽くするために比重が軽いマグネシウム採用。そしてダイキャスト。
この時点ではLT-13に優れた点が多いが、やや甲高くなる一方
MG-10は色々な要素でほどほどの鳴り方となるシェルという感じ。
昔々ヘッドシェル狂騒曲時代は随分シェルも追及したが
最近はシェルの確保をするだけで精一杯な身としては
細かいことはどうでも良い?
ただ、正直削り出しのシェルの方がダイキャスト等の
作り方をした物より音質的には優れたところを持つと
思っている。
…、ま、それよりもMG-10が当時2,200円というのに
驚く。
その頃として格安ではないかもしれないが2千円少々。
現代は何でもかんでも途方もなく高くなったということか。
12月16日
実はFMfan誌の1976年と1977年分をまとめて手に入れた。
なのでダイナミックテスト二年分を読み放題な訳で
これはもうパラダイスみたいな話しである。
よって当分この種の話題が続くことをお許しいただきたい。
なにを取り上げようかと迷うわけだが、ここはやはりHMA-9500に
ご登場いただこうと思う。
掲載は1977年16号だから7月後半のこととなる。
「パワー用MOS FETによるパワーアンプの第一号機である。
現在自宅のラックに納めて使用中。
完全なる試作機であるので、本番がこれと同じものになるかどうか
いささか不安だが(以下略)」
と始まり、この段階からほぼ一発でリファレンス入りしたことを
匂わせている。
「音の方は一時間くらいからまともになる。
スイッチオン10分くらいでもそう酷い音はしない。
100%を望むなら3時間以上のエージングが必要と思うが
エージング不足でもバランスのとれた音がするというタイプである。
…と、この辺からアンプのエージングの解説が始まってしまうのだが
アンプのランニングアップの必要性が広く言われるようになったのは
この頃のことであり、定着させたのは長岡先生。
おかげでやたら通電時間が増えて、アンプの寿命は縮まり、
電気の消費は増えて各方面から感謝状が贈られた…
というのは真っ赤な嘘だが若いマニアが
「うちの音がイマイチなのはアンプの温め方が足りないからでは…」
と疑心暗鬼になったのは間違いなし。
「(中略)中には、高低が常にバランスをとりながら
伸びていくというアンプもあり、この場合はスイッチオン直後から
バランスよく鳴ってくれる。
エージング効果は、レンジの拡張、クオリティの向上という
形で出てくるのである。
そのようなアンプの一つにビクターのJA-S41がある。
このHMA-9500もそういうバランスの良さを持ってるように思う」
となっている。
ビクターJA-S41がそうしたキャラクターを持っているということは
別冊fanのオーディオクリニックで触れられていて、
それゆえクリニック用に好適と持ち歩かれたのだった。
「なお、JA-S41についてすこし説明しておくと今回はこのアンプを常に持ち歩いた。
その理由は、中級プリメインとしてはデザインはお粗末だが、クオリティ、パワーとも群を抜いている。
極めてバランスがよく癖が少ない。
エージングでよくなることは確かだが、スイッチON直後からでも
割とバランスよく鳴り、時間がたつにつれて
そのままのバランスでパワーとレンジが拡大。
迫力とツヤと奥行きが出てくるというタイプなので
今回のように持ち歩いて、スイッチON一時間くらいで
鳴らすというのには最適である。等々である」
(別冊FMfan15号より)
12月17日
ちょっとお詫びなのだが、今月の話しの流れで、
いよいよマランツ#1250登場か?と期待された人も居たという。
外してしまってごめんなさい。
逆にこのころのFMfan誌に興味があるというお声もあった。
それは良かった。
ただ、よっしーとしても大変思い入れのある時期の資料なので
深く嵌ると抜け出せない怖さがある。
さておいてHMA-9500。
「一聴してレンジが広く、シャープに切れ込んで情報量が多く、
厚みがすごい。
定位も良く、奥行き、広がりも充分。
全体に骨組みのがっしりとした力強い音で、
しかもニュアンスもよく表現する。
低域の立ち上がりと量感は圧倒的で
とても100Wクラスのアンプと思えない」
とべた褒めである。
この時のお相手プリはSY-77。
HMA-9500登場の前はパイオニアM-25が一瞬のリファレンスだった。
その前はヤマハB-1が活躍。
さておいて、次は何を取り上げる?
いや、もう止めろ?
どうしましょうか?
12月18日
もうやめようかと思ったが、万事は流れとタイミング。
まあ続けましょう。
で、何を?と思ったがここでSS-G7。
一応我が家に鎮座している現役スピーカーだ。
現役は良いが生まれたのは1976年だから45年前。
ダイナミックテストでは1976年24号。11/15号への掲載だ。
なのだが、この取り上げ方が少々異例。
というのも、長岡先生、自宅でのテストをせずにダイナミックテストに載せているのだ。
「このスピーカーは二か所で試聴したが、自宅ではいじっていない。
従ってあまり細かい報告はできないが、とにかくソニー始まって以来の優れたスピーカーであると思うので
確認できた範囲内で紹介しておきたい」
と始まる。
で、そこまでは良いのだが、続きが…
「最初にこのスピーカーの欠点を挙げておくと、それは安すぎることだ。
128,000円だが本当は198,000円とつけるべきではなかったかと思う。
一本10万円以下のスピーカーを買うユーザーはCPにウエイトを置くが、
10万円以上。特に15万円以上となると、”性能が同じなら少しでも高い方を買う”
というユーザーが増えてくる(中略)豪華なインテリアに埋まった応接間に、
128,000円のスピーカーは安すぎてみっともない。
バランスというものがあるのだ。
バランスは実質ではなくほとんど価格だけで決まる」
となっている。
これはもう立派な指摘であり、長岡流ここにあり、なのだがこれを読んだ読者から
「長岡鉄男は金持ちの味方である。高すぎるというならともかく、
安すぎるとは何事か」と非難する手紙が舞い込んだらしい。
他誌でそのことを取り上げられ、「このように馬鹿な(読解力のない)ヤングが多いのも
最近の風潮である」とバッサリ切られていて大笑い。
ただ、ひとつ記憶違いしていたのは、この時”これは大メーカーの中小いじめではないか?”と
書いてあったと思ったらそれは無かったという点。
あるいは別の雑誌でだったか。あるいは別の機種についてだったか?
ただ、どうしてもG7以外で思い当たるものが(この時点では)無いのだが…。
しかしながら評価は高く、「自宅でじっくり聴いてみるとアラも出てくるかもしれないが、
今のところはほとんどアラのない、みごとなスピーカーという感じなので、そのまま報告しておく。
とにかく128,000円は安すぎる」
と締めくくられている。
それにしても皮肉であるとか誉め言葉であるとかが理解できない人が居るのは
物を書く側からすると大変困ったものだ。
だが、見当違いの苦情に対し、「馬鹿なヤングが多いのも最近の風潮である」と
叩き切るなんて芸当が出来る人も多くはない。
やっぱり笑ってしまう。申し訳ないが…
12月19日
常々言っているのだがこのページを
本当の意味で熱心にご覧頂いてるのは世界で100人くらいだと思っている。
100人も過大評価かもしれないし根拠はあるのかというと無い。
ただなんとなくそう思っているのだ。
なんでもそうだが顔の見えない人に対して書くのと
誰かに対して書くのでは書く喜びというのは違ってくる。
もちろんそう簡単に二つに割れるわけではないし
不特定の人に向けて書くのが詰まらないと言っている訳じゃない。
ただ、あの人は今頃こたつの中でこの日記を読んでいる頃かな?
なんて思いながら書くのはやっぱり面白い。
さて、自分の手の中にあるネタを広げてみせると
こんなのもあるよ、と別の方が見せてくれる。
ありがたいし楽しいことである。
これは1978年ごろのダイナミックテストだろう。
MCカートリッジがぞろりと出てくる。
ビクターMC-1も登場。
ただしMC-1の発売は1977年の筈だから取り上げるまでのタイムラグはある。
グレースf-10P
ジェルトーンJT-R2と続く。
アントレーEC-10。
そしてテクニクスEPC-300MCと来て300MCは当時
かなり安い15,000円。
「シェル付き、立派なケース入りで15000円というバカ安のMCである」と始まるが
音については「残念ながらケーシング、ベースがやわなためと、
シェルがお粗末なため音は甘くMCらしさが無い」となっている。
「ただし、広がり、奥行きは、試作であるため、
コイルの位置合わせがうまくいっていないのではないかと思う」
とフォローも忘れない。
長岡先生のところ(限らないが)へ持ち込まれる物は試作品も少なくなく、
そのたった一個の個体で断定的なことをいうのははばかられるというものだ。
さて、それは良いが問題は同時発売のヘッドアンプSU-300MCの方であり…
「これはもう必殺安値のたたき売りである。
(中略)他のメーカーへ与えた衝撃は大変なものだっただろう」
「電池式ヘッドアンプで1万円。
ルックスは本格的で、ピンジャックは金メッキ、赤いパイロットランプもつくし、
リレーによる保護回路までついているというのだから驚きである。
中身なしでも5,000円はしそうな面構えっである」
ということで褒めている?
いや、このままで終われば良かったのだが、締めがスゴイ。
「それにしてもずいぶん平気で弱い者いじめをするメーカーだ」
…って、せ、先生、こりゃやばくない?(;^_^A
どうも「大メーカーの中小いじめではないか?」というのは
G7の時の物ではなく、このSU-300MCの時のこの文言の事だったのではないか、と
いつもお世話になっているTさんが資料を送ってくださった次第。
いや、しかし言っちゃったな、という感じ。
ただ、天下の松下がその程度で怒るか?
うーん…怒るかもしれない…
12月20日
続いてはパイオニアのセパレートC-21とM-22だ。
この二つについてはこれまでにも散々語っているのでもうやめた方が良いのだが
病気と思ってあきらめて欲しい。
掲載は1976年20号。9/20号とやや遅い。
当時C-21が6万円でM-22が12万円。
これは今考えても滅茶苦茶安い。
前に出たのはC-3とM-4でそれらは30万円台。
その次にペア18万円のセパレートを出すというのはナイスなセンスである。
これから買えるかも!と当時中学生だったよっしーは胸を躍らせた。
(もちろん買えなかったが)
まずC-21。
6万円でプリアンプが買えるのかと驚嘆させてくれた。
少し後にビクターからP-2020が54,500円で登場するが1976年当時では
ぶっちりぎの安さ。
安いだけなら感動しないが、トーンコントロール等を省いたシンプル設計。
そのころ僕はアンプのスイッチというのは少なければ少ないほど音が良いと
かたくなに信じていたのでほれぼれしてしまった。
バランスコントロールすらないのだが、これは左右独立のゲインコントロールが
その機能を肩代わりしている。
時代からMC非対応だがカートリッジロードはインピーダンス、容量各六段階切り替え可能と
至れり尽くせり。
薄型で品の良いシルバーなし地仕上げ。
評価はもちろん低くないが、価格なりの壁はある。
相方のM-22が、これまた評価が高かったのでM-22にはC-21よりC-3みたいに優れたプリを組み合わせたい、
などと書かれることがしばしば。
そう、M-22は当初から評価が高い。
M-4の70%みたいな構成だが価格はウンと安い。そしてデザインが良い。(もちろんC-21も良い)
わずか30Wと言っても純A級で本来120〜150W級の電源構成だからローコストプリメインの30Wとは
意味が違う。重量22Kgで12万円はいかにも安い。
マルチアンプの高域用なんて設定もよく言われた。
これは同時にチャンデバD-23が出ていたりしたせいもある。
ただ、よっぽど広い部屋で低能率のスピーカーでも相手にしない限り
30Wで不足なんてことはない。
僕のM-22は数根前にほぼオーバーホールしたと言って良いのだし
常に待機中なのだが今のよっしーの部屋では
どうしてもその音の甘さがミスマッチなのだ。
でも、存在してくれるだけで幸せなのですM-22。
2023年こそC-21を手に入れないとね。
12月22日
特に意識していなかったのだがアンプ続きだな、こりゃ。
明後日以降路線変更しますから、って
誰に言い訳している?
ビクターJA-S41。
1976年14号。6/28号からだ。
「パネルデザインはJA-S51あたりと同じだが、
やや小型になっているため、間の抜けたところがなく
ルックスは良い」
…と長岡先生がルックスで合格点をつけるのは
割と少ないので41はその点でも希少かも。
おっしゃる通りで51、71、91はワンサイズフェイスが大きくなり
よく言えば大陸的、別の言い方をするとどこか間延びした感じがある。
特に51、71はそうなる。91が基準になっているから
下位機種ほどスイッチが減って間抜けになる。
なにしろ71なんか別冊FANで、
「いつまで経ってもデザインの下手なメーカーではある」
なんて書かれている。
やっぱり、よくぞクレームが来なかったもんだと思う。
で、41と言えば前後二電源で名を馳せた名器だが、
それについては…
「電源が独特で、大小二個の電源トランスを持っている。
電流を大量に流すパワートランジスタ用に大型トランスを使い、
ドライバー段(パワーアンプの電圧増幅部分)とプリアンプ用に
小型トランスを使う。
パワー用電源のコンデンサーは15,000μF×2である。
プリアンプ用の電源はL、R片チャンネル用に、
それぞれ得率にコンデンサーを持ち
セパレート電源に準ずるものになっている」
と紹介されている。
(続く)
12月23日
「このクラスだとPHONOを2系統にしたがるのだが
実際に2系統使うことは極めてまれであり、
結果としては単に音質劣化を招くだけになっている。
PHONO1系統というのは音質の面で有利である。
パワーは65W+65W。
レンジが広く切れ込みが良く
歪みの少ないことは驚くほどで、重量は10,2kgだが無駄なところに
目方をかけていないせいもあって、15kgの馬力をみせてくれる。
パワーでは明らかに51を上回り、S71に肉迫。
質の高さではビクターのすべてのアンプを上回るといってもよい。
透明で繊細で、優雅で、ツヤがあって力強く、
奥行き、広がり、余韻もよく出る。
こんなアンプに出てこられると、とばっちりがたいへんだ」
ということで極めて評価は高い。
一時であっても先生のラックにも収まっただけのことはある。
12月25日
自分の縁深い物ばかり取り上げるのもなんだから
この辺で路線変更。
1976年の収穫のひとつとしてLカセットがある。
(以下はエルカセットと呼ぶ)
オープンテープのクオリティとカセットテープの利便性を合体!
「わあー、スゴイのが出たな〜」と思ったけど
縁は感じない。
一号機SONY EL-7は198,000円。
テープも高そうだ。
これは中学生の手が届くものではない。
1976年15号。同年7/12号より。
「世界最初のエルカセットデッキ二機種のうちの高級機である。
3モーター。3ヘッドでフル装備。
これが従来のカセットデッキの標準サイズと同サイズにおさまったというのは
驚異である」
と始まるがその通り。
430W×170H×320Dシステムコンポの
ラックにも収まる大きさ。
これは大切なことだ。
ただ、ここにありったけの機能を盛り込むから
スイッチ類も多く、パネルいっぱいにツマミ、ボタンが
ひしめくことになる。
入力コントロールはLINE、MIC独立+マスター。
ヘッドフォンアンプには独立したレベルコントロール付き。
MICアンプには0、15、30dBのアッテネーターが用意されている。
他にMPXフィルター。ドルビー。ドルビーキャリブレーション付き。
テープセレクターはバイアス、イコライザーとも三段切り替え。
これにメモリースタート、ストップやタイマー用スイッチもあるのでスゴイ。
要は生録からエアチェックまで最高の対応を、ということだ。
音質はもちろん良い。
さてしかし問題はこれを何に使うか?だ。
エアチェックにはオーバークオリティ?
これで回しっぱなしで録って後で編集、と思うと、
だったらオープンの方が良い。
あとはレコードをダビングして普段はエルカセットで聴くというのがあるが
いまひとつ現実的でない。
書いていてDATのことを思い出した。
全く同じことがDATの時も話題になった。
DATが優秀なのは確かだが、結局それで何を録るの?
ということだった。
「家庭に録音機は要らない」、が長岡先生の結論だった。
ビデオやビデオカメラがあれば良いと。
正解である。
エルカセットは特に、ほとんど発展普及せず終わってしまった、
幻のフォーマットの感がある。
ただ、1976年ごろ、そうした物を考案して
実際に商品としてリリースするだけのムーブメントがあったことは確か。
今となっては懐かしいだけだが、見るとなんだか和めるもの。
それが僕にとってのエルカセットデッキだ。
12月26日
ダイナミックテストに限定して取り上げているが、
実際には広告やその他の記事ももちろん面白い。
ただ、本当にキリがないので抑えているが、一台だけ。
アナログプレーヤーでビクターJL-F35M。
これまで何度も書いているけど、マイファーストレコードプレーヤーが
これだ。
別に選んだわけじゃなく、シスコンでこれがプレーヤーだったということ。
当時37,500円。
フルオートのベルトドライブということで、端からこれは良くないんだと決めてかかっていた。
若いという事は恐ろしいことだ。
振り返ると優秀なプレーヤーだった。
低く構えたプラッター。
UAシリーズの流れを組むトーンアーム。
付属のZ-1Sだって良い。
キャビネットはデッドスペースが無くて重い。9,2キログラムある。
このプレーヤーはいつか再び手に入れて鳴らしてみたいと思っている。
ひとつだけ交換するとしたらテーブルシートか。
薄くて密着するタイプが良い。
12月27日
1977年19号。9/5号。
プレスリーの訃報が入った頃だった。
8月16日(現地時間)にメンフィスの自宅で亡くなっている。
プレスリーのファンの方には申し訳ないが、この日記的には左側に注目。
SANYO OTTOのsystemG77というシステムコンポの広告だが
プレーヤーが一際大きく写っている。
そう、これはTP-L3である。
37,800円也。
G77の一員なのに、Gでも無ければ77でもないところが面白い。
ちなみにコントロールアンプがDCC-77
パワーアンプがDCP-77
チューナーがFMT-77
スピーカーがSX-77
これになぜか別売扱いのツイーターTW-77が載って
systemG77なのだ。
トータル189,800円。
なかなか格好良いシステムだ。
そうしてもうひとつ広告から。
チューナーでパイオニアのF-26。
今更だがC-21、M-22のシステムにマッチするのはこれしかない。
デザインに惹かれるが、よく見ると135,000円のFM専用チューナー。
パワーアンプのM-22よりも高いのだ(!)
クオーツチューナーで気合が入っている。
12月28日
そろそろこの話題にも飽きてきた。
なんかけじめを付けたいと思い1977年13号。6/13日号。
創刊11周年記念特大号。
特別企画。評論家五人の「わが愛機」
まずはこちら、高城先生。
オールホーンの自作システム。
駆動はマルチアンプ。
16Hzからの再生が可能。
菅野先生はJBL 375/537 500
3Wayをこれまたマルチアンプで駆動。
瀬川先生はSAE Mark2500
プリはLNP-2
黒田恭一先生はUHER CR-210
旅のお供にいつでも同伴ということだが
ウオークマンの出る2年前。ウオークマンプロの3年前となると
こうなるのだろう。
長岡先生は自作スピーカーシステムということになるが
「決してほれこんで使っているわけではない。
(中略)
筆者はアバタはアバタとして承知の上使っているのである」
というところが長岡先生らしい。
愛機への思い入れという世界で生きていない。
この切り口はやはり新鮮というか他の人と
一線を画している。
この時点でのリファレンスという事になるが
カートリッジはEPC-100C試作機。低音の立ち上がりがもう一息、との評。
アームはEPA-100だがコネクターのロックがもう一息。
重量級シェルがつかいにくい。シャフトが細すぎてベースから上の
構造体がぐらつく、と文句たらたら?
フォノモーターSP-12は欠点だらけだがなんとか使えると
酷い言われよう?
プリはSY-77試作機で、トランスが唸って腹が立つし
(中略)色々使いにくいのも欠点だが、といってこれよりいいのが
あるわけでもない。とのこと。
メインはM-25試作機で電源トランスが小さいし使いにくさもあるが
現状ではまあまあ。
…ということでいずれももっと良いのが出たら入れ替える気満々という感じ。
いかにも「仕事」というスタンス。
「製品テストの目的から、ハイフィデリティ中心で装置を構成しておかねばならなという
こともある。
音は二の次と達観してしまえば銘器、愛機も生まれようが
まだそこまでいっていない。
銘器にハイファイなしは鉄則だからだ」
…ってアナタまた世界を敵に回すようなことを仰る…(汗)
12月30日
えらい時間が掛かって何にも変わっていないように
見えることだろう。
取りあえず走って曲がって止まれるレベルまで来た。
ここからあとはロードテストが必要。
2スト自体が珍しくなってしまった時代。
これもまあもう暫く残すべき個体なのだろう。
オーナーで北海道に住むSが、今日は寄ってくれた。
彼のもとに今年は返せるだろう。
ひとまず良かった、と思うのだ。
12月31日
戯れに、と過去数年のこの日記の同日をめくってみると
見事に大したことをやっていない。
もうちょっと何かないのか?と
思わず自分で突っ込みを入れたくなった。
来年の抱負でも述べてみたいところだが、
特にこれといって…
いや、そういえば先日かなり鮮明な夢を見た。
それはレストアした某カワサキの400ccを
乗り回しているというものだった。
どちからというと初夢にとって置きたかった気もするが
2023年はいよいよ…ということだ。
このRD50はオーナーのところへ帰す日も近い。
では、みなさん、良いお年を!
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