11月21日
確かに敷地も広いのです。
同行の皆様さっそく撮影に夢中…
しかし本当の目的は…
…なのです…
11月22日
milonさん宅訪問三回目。
個人的には、え?まだ三回目?っていう感じだったのだが
日記を見返しても確かに過去二回しかお邪魔していない。
途中で安孫子オーディオ会のミーティングでお目に掛っているので
感覚的にずれたのかもしれない。
三回目ともなるとあまり驚かないのではないかと思ったが
見事に驚いて帰ることになった。
よっしー単独の感想ではない。
この日はpippinさん、GTOさん、そして先日お邪魔させていただいたばかりの
Sさんも一緒。
大挙して押しかけて、一同頭を垂れて帰る羽目になったのだ。
まずmilonさんのシステムだが基本路線に変更なし。
ただ、ちょっとだけ変化があって、それについては後述する。
さて、この日のお目当ての一つはFIDELIX社がついに発売した
MC-F1000のお披露目だ。
MC-F1000。
ダイレクトカップルMCカートリッジである。
針先チップの直上にコイルを位置させる。
そのコイルは往年の名器、ビクターMC-L1000の
プリントコイルとは異なり、実際に巻いたコイルであり
五角形(ホームベース型)をしている。
ここは先行したテクニカのAT-ART1000とも違う点だ。
まあカートリッジの細かい違いなど挙げていくとキリがないが、
その細かい違いで音が違ってくるのも確か。
MC-F1000ではダイレクトカップルの良さを最大限引き出すべく
ボディもボディベースもアルミ合金削り出し。
音作りの一環でヨークは純鉄。
そしてロングライフを約束すべくマグネクリーンシステムを搭載。
磁性ゴミが磁器ギャップに入り込んでしまうという
ダイレクトカップルならではの泣き所を
これによって解決しようというのは、正に知恵であり
ユーザーフレンドリーな設計といえよう。
で、音だが…
11月23日
さて、その音だが…
これはもう一同唖然というか一斉に白旗というか、
参りました〜…!の世界である。
グワン、と視界が開けて、灯りはもう砂漠の太陽的な、容赦なく全開の世界。
ラッカー盤の音…とか、マスターテープの音…とか、ミキシングコンソール直結の音とか、
言いようは色々あるが既に使い尽くされている感があって癪に障る?
そこで閃いたのが、故長岡先生が1976年に放った名セリフ。
「ベールすべてはぎ取ったというよりは、ベールをマイナス一枚かぶせたとでも言いたいほど」
という奴だ。
F1000の場合、ベールをマイナス一枚…では足りなくて、ベールをマイナス三枚かぶせたような
とでも言いたいような鳴り方だ。
奏者の表情が見えるなんてのは当たり前で、皮膚の下の、筋肉の収縮が見える感じ。
こんな音はそうそう聴けないだろう。
なんて書くと、解像度だけの音、とか、分解能だけの…とか思う人が出てきそうだが
そんなことも全くない。
実際聖子ちゃんも心地よく聴けた。
ソースを選ばず、というところがVICTOR MC-L1000オリジナルとは違うところか。
さてさて、しかしながらカートリッジのみで音が出るわけじゃない。
ましてこの次元の音が出るわけがない。
まずプレーヤーだが言うまでもない。PL-31E/TSと名付けられたmilonさん特製の逸品だ。
このプレーヤーのついては過去に何度も詳しく説明しているから、ここでは省略。
次にフォノイコ。これはFIDELIXのLEGGIERO(レジェーロ)。ここから東京光音の2P-2511を使った自作アッテネーターに行って
やはりFIDELIXのCERENATE(セレナーテ)に導かれる。
そしてスピーカーは俗称盆栽スピーカー。AIRTIGHT AL-05。
写真では二組見えるが、鳴らしているのは内一組づつ。
AL-05は10cm一発の小型スピーカーで、正に10cmを使い切るという感じの鳴り方になるが
かなりの音量でも平気で鳴らす。
このスゴイ音の秘密はAL-05にあるのか?ということで一同GTOさんに、「さあ自作でこれを超えるものを作って…」
と無責任に煽るから悪い奴らだ(笑)
GTOさんなら打倒AL-05も夢じゃないが、この音はFIDELIX社の増幅系統があってのことであることも
見逃せない。
前回と一点変わっていたのはフォノイコのLEGGIEROが、贅沢にもなんと左右二台使いされていたこと。
ここにもこの日のスゴイ音の秘密が隠されていたわけだが、そもそもLEGGIEROはモノブロック構成。
単体だってきっちり左右独立の仕事をしている。
それを更に右に一台、左に一台とは神をも畏れぬ所業?
一台だって十分スゴイだろう、ということで一台使い(つまり普通の使い方)に切り替えてみると
なんとかなり音が違う。
見通し、音の輪郭。そうした物たちが一歩後退。
全体にどこか萎縮した形になり、寂しい気持ちになる。
もちろん、これはその場に同じフォノイコが二台あるから分かるし起きる現象であって、
単体で充分なのだが、人間の耳というのはいかに欲深なものかということ。
11月24日
さてしかしMC-F1000だけを聴いて帰るのはモッタイナイ、ということで?
他のカートリッジも拝聴。
そこでMC-L1000改登板。
(ついに本物の?MC-F1000が発売されたので
呼び方はL1000改としておく)
なにが改なのか?というとプリントコイルからから
FIDELIXのコイルに換装されているのだ。
僕のリファレンスも、このL1000改なので
F1000との対比で格差があると困るな(笑)と思いながら拝聴。
結論をいうとL1000改を持っているのなら
何がなんでもF1000を求めるという事はしなくても大丈夫そうだ。
両者はもちろんピッタリ同じ音がする訳ではないが
一つ世界に存在するもの同士。
仲良くやっていけばそれで良いと思った。
更に検証、ということでプリントコイルのままの、
つまり本家L1000にも登場いただく。
今更だけどこれは音が違う。
F1000ともL1000改とも異なる。
端的にいうとちょっと線が細く痩せた感じになる。
だがしかし全ての現存するL1000の音が同じとは思えない。
なにせ40年前のカートリッジである。
F1000やL1000改と単純比較するのがそもそも無理な話というもの。
ただひとつ思うのは、F1000の登場が、近年とみに顕著な
L1000の中古相場高騰を冷やしてくれたらよいな、ということ。
そこまで出すならF1000を44万円で買う方がオススメ。
11月25日
AL-05のシステム(ある意味超シンプル)を堪能した後はA5の咆哮も聴く。
敢えて咆哮と書いたがマルチ駆動でうまく調整されたA5は、これまた万能で何でも来いだ。
ではなぜ咆哮なんて書くかというと、AL-05ではわずかに到達出来ない音量音圧を
A5は楽々担っているからだ。
一般の家庭(要するによっしーの家みたいなところ)ではAL-05のシステムの方が
収まりが良いが、milonさんの部屋は、そもそもがA5を存分に鳴らせるようにと設計された部屋なのである。
一同たっぷり堪能した上で再びAL-05のシステムに戻っていよいよフィナーレ。
改めて幾つかのカートリッジを拝聴。
SONY XL-MC5もあればSATIN M21なんてレアアイテムも出てくる。
それぞれの良さが出てくるがMC-F1000の優位性も再確認できる。
オーディオは遊びであり、個々人の好みが一番優先される趣味だが、L1000やM21の音傾向が好きなのなら
F1000はとどめを差してくれる存在なのは間違いなし。
聴けばイニシャルの生産分は完売だとか…。結構なことである。売れないと続かない。
続かないと入手難になる。そんなことにはならない方が良い。
1977年のVICTOR MC-1に始まったダイレクトカップルMCの系譜は45年後にFIDELIXのMC-F1000の
登場を見て完結と言えるのかもしれない。
それを確かめることが出来たことは大変幸せなことであり幸運なことだといえる。
その機会を作って頂いたmilonさんに改めて感謝いたします。