10月21日
15くらいというのは若いというのと
幼い(精神的に)の間にある頃かもしれない。
そして金銭的には絶望的といか
経済力はほぼ無い。
アルバイト…と言っても、それは高校生以上のお兄さんお姉さんに
ならないと出来ないものだからだ。
欲しい物はたくさんあるが、金はない。
食べたいものは山ほどあるが、財布は空、みたいな感じ。
だからやたらと雑誌を読む。
もう食い入るようにというか暗記でもするのかという程に、だ。
で、地味な性格というか現実派というか夢が無いというか
人間のスケールが小さいというか、
どうも実際に買える可能性がある物ばかりを注視してしまうところが
昔からあった。
そんな写真と文章ばかりでグレードアップを夢想する日々の中で
ちらっと輝いて居たものの一つに、ビクターのプレーヤー
JL-B37Rがあったのだった。
10月22日
で、JL-B37Rってどんなプレーヤー?
えーと…つまりダイレクトドライブで〜、価格は46,000円で〜、
茶色くて〜、プラッターがなんだか一段沈む形で見えるのが特徴で〜、
という塩梅で、これじゃあさっぱり伝わらない?
ま、当時として普通の構成なのだがキャビネットが一段掘り下げられ
プラッターの淵が下の方にあり、いかにも安定感よく回るという感じは
ちょっと目立つものだった。
今振り返っても、他にあまり例を見ないというかビクターでもこれ一発というか
後継者がいなかったような…
つまり一般受けはあまりしなかった?デザイン?
そう。ビクターでもJL-B37Rのお仲間やら兄弟機は作られなかった。
このころのラインナップを見ると
JL-A15 ベルトのセミオート 25,800円
JL-A25M ベルトのオートリターン 31,500円↓
JL-F35M ベルトのフルオート 37,500円(よっしーのファーストプレーヤー)↓
JL-F45R ダイレクトのフルオート 49,800円↓
…という流れがあって、それらは皆薄型のキャビネットでプラッターも薄く飛び出さずの
デザインが共通点。
JL-B37Rは46,800円でダイレクトドライブとしては一番お求めやすい設定。
もっとも翌年にはQL-7Rが67,500円で登場して、主流はそっちへ流れた感がある。
QL-7の核となるフォノモーターは単売のTT-71で、兄弟にあたるTT-81はB37Rと同じ年に
85,000円で既にリリースされている。
どうもJL-B37Rのフォノモーター自体はTT-81と同等(ただし81はクオーツロック)と言われているのは
背景を考えると嘘ではないみたいだ。
で…
10月23日
で…
なのだが今回のJL-B37Rは例によってというか
某オフのジャンクコーナーにて見つけた物。
ジャンクコーナーに身を置きながら、「回転しました。音出ました」となっている。
そして値段が安い。
というか、それくらいがこうした物の適正価格だと思うのだが
昨今は何でもかんでもとにかく高い。
僕も37Rの相場がどれくらいか知っているのであって、
随分安いなという感じだった。
だから早速捕獲…というのは実は嘘で、
見かけたのは先日PL-X9を持ち帰った時だったのだ。
その時は健康と長寿のためのサイクリングを兼ねて、
だったのでチャリのカゴに納まらない37Rを敬遠してX9を
持ち帰ったというのが真相。
売れていないと良いのだが…後日車を走らせて行ったら
ちゃんと残っていた。
パッと持って帰ってすぐ接続。
アンプは907MOSだ。
カートリッジは、これはもうこれしかないでしょう、
ということでZ1。ただしZ1SではなくZ1Eの方だが細かいことはどうでもよい。
レコードを載せて針を降ろす。
おお、なんと左右からちゃんと音が出る。
いわゆるアーム接点の接触不良も無いわけで
これは良い子だ。
キチンと廻って音も出ているではないか。
いやーこれも日頃の行いだよなー、とニコニコしていたら
あれ?女性ボーカルを聴いていた筈が急にだみ声みたいな…
(続く)
10月24日
ちゃんと回っていたのは5分くらい?
でも、回転しました。音出ました、に偽りなし?
やるなぁ〜某オフ(;^ω^)
まあジャンクコーナーにあったんだから文句は全くない。
それより遣り甲斐が…(笑)
さっそく開腹と相成った。
まず底板がしっかりした鉄板なのは好感が持てる。
樹脂が悪いと決めつけはしないが、この底板にたいていはインシュレーターが
取り付けられているわけで、つまり設置面に音をあやふやにする要素あり、となる。
JL-B37Rでは鉄の底板にふらつきの少ないインシュレーター(単売のHA-1相当?)が
取り付けられていて個人的には好き。
中を見るとごくありふれた作りというか、キャビネットは箱型。
ガランとした作り。
だから比較的重いプラッターを持ちながら、プレーヤートータルでは11kgに納まっている
わけだ。
同世代同価格のトリオKP-7300が16kg。
重いが最強というわけではないが、ちょっぴり考えてしまう。
見方を変えると、このキャビネットを補強、重量負荷すると37Rはさらなる飛躍がある気がする。
そんな予感をさせるモーターでありプラッターであり、トーンアームなのだ。
さてしかし、それより何より回転しないことにはどうにもならない。
基板は二つ。ひとつは電源基板でもう一つが制御基板だ。
ネットを見ると、この制御基板の半固定抵抗が原因で回転がおかしくなるのを
直した例が多い。
そこで先人に倣ってこの抵抗あたりから手を付けるのだが…
10月25日
さて、ところが半固定抵抗を引っこ抜いて点検するがちゃんと機能している。
もちろんクリーニングはして、元の抵抗値に戻して基板に戻すが症状改善せず。
あれれ、ということで深みに嵌っていく予感。
この予感は当たってしまった…
次に全半田やり直し→改善せず。
この時どうせならと全電解コンデンサー交換。
念のためだが電解コンデンサーの不具合でこの症状になることは考え難いので
ほとんどまじないと将来に向けての予防整備みたいなものだ。
しかし困る。モーターは回りそうで回らない。回ろうとするがちゃんと回れない。
そんな感じだ。
次にオペアンプを疑う。
足が黒かったのはこのオペアンプだけだ。
交換。
でも症状改善せず。
さあ、困った…
廻る気はある…
だが廻れない…
うぬぬ…
10月26日
となると…
抵抗やダイオードも切れているものは無かった。
あとはもう小出力トランジスタの中に壊れたものがあるのだろう。
それしかあり得ない。
ちなみに速度調整ボリュームも洗浄したし、メインのスイッチも
確認した。ここでアウトになるプレーヤーも過去にはあったからだ。
制御基板に使われているのは…
2SD571が五つ
2SA641が7つ
2SC945が3つ
2SK34がひとつ
2SA733がひとつ
いかれているのはこのうちの多分一つなのだろうが、
ひとつひとつチェッカーに掛けるより
この際まとめて交換してしまう方が
手早いし後の心配も無い。
お値段1,000円ちょうど。あっさり揃うのは
サトー電気さんならでは?
せっせせっせと交換するが一抹の不安もある。
これで直らないともう打つ手が…
途中まで、交換してはスイッチを入れてみるが
廻らない。廻ろうとするがエンコしてしまう、の繰り返し。
いよいよ面倒になり、一気に交換完了。
これでどうよ…!?
10月27日
これでダメだと後が無い…
ドキドキしながらスイッチオン…!
すると…
おお、回る廻る!
実に力強く起動してぐんぐん回るではないか。
ストロボもきちんと止まる。
オーケーオーケー。こうでなくてはいけない。
前回のPL-X9といい、このJL-B37Rと言い、回らないプレーヤーが2台続いたが
やはりレコードプレーヤーというのは回ってなんぼである。当たり前か。
改めて、かっこよく、また他に例を見ないルックスのプレーヤーである。
フォノモーターはFGサーボDCモーターでクオーツロックではない。
充分なトルクを持ったモーターで、この時代ここにクオーツを加えると
到底46,000円では収まらなかっただろうから賢明な選択だ。
アームは単売のUA-7045に通じるジンバルで名器の誉も高いもの。
そして本来はZ-1Sカートリッジも付いていた訳で、実質39,800円くらいだったかと
思うと恐ろしくCPが高い感じだ。
感じだけ…では困るのでZ-1Eを取り付けて改めて音出し。
うん、やはり良い音だ。
このまま聴き続けていても十分な感触だが、なんとなくあっさりし過ぎというか
物語が欲しくなるような鳴り方。
そこで同じビクターの、先日入手したMD-1004に差し替えてみることにする。
これでどうよ?
10月28日
Z-1EからMD-1004へ。
音は当然変わる。
どんっ!と重心が下がる。
これはこれで良い。
ただ、ちょっと低音過多?
この辺の塩梅が難しいのだが同じMD-1004が
ヤマハPX-2ではもう少しフラットバランスで鳴っていた。
このまま聞くのも聴くのも楽しいのだが、なにも同じビクターにだけ
こだわる必要もないと気づいてテクニカへ。
AT-150EaのボディにVMN-50SHというのを付けてみると
やはりカチッとして良い音だ。
ついでにシートもJP-501に換えてしまう。
1976年当時はターンテーブルシートの良品というのが
まだ少なくて、どうしても501に換えた方が
音質向上となってしまう。
ただ、デザインなどシートを含めて決められている訳で
その点で純正がベストなのが痛しかゆし。
レコードを載せてしまえば見えないじゃん、
という訳にはいかないのだ。
10月30日
せっせとお掃除して磨きこんで…
結局こんなことばかりやってしまう…
好きなのだろう。どうしようもなくそういしたことが…
その辺を詳しく解説…とも思ったがいささか疲れた。
そこで…という訳でもないがイルカ、である。
JL-B37Rと同時代のレコード。イルカ ライブ。
このジャケットなんかも当時散々見たなー。
それはレコード店で、であったり雑誌で、あったりとか
だったと思うのだが買うには至らなかった。
何せ当時LPは大変高価なものだったので
おいそれと買えるもんじゃなかったのだ。
それからウンと時は流れて、今ではあちこちで気軽に買える
中古盤が見つかるのだが、どうも買う決断が着かなかった。
今回人生初イルカとなったが前評判通り音が良い。
このライブなどはいささか左右に音を広げすぎの音作りな気もするが
そんなことはさておいて音は良い。
考えてみたらリアルタイムでJL-B37Rにこのレコードを載せて
聴いた人も結構いたのだろう。
46年前の出来事を今更追いかけても仕方ないのだが
妙な郷愁に駆られるのも確か。
10月31日
JL-B37Rのお手入れもいよいよ終盤。
というか残すはここ。例のアームのお尻の垂れ下がりだ。
ウエイトの差し込まれるアーム後端が
ゴムで(だけではなさろうだが)結合されているのだが
経年劣化で変形してしまう。
音の面では問題を感じないが、いかにも格好悪い。
そこで色々な人が色々な解決法を紹介して下さっている。
僕は半田を巻きつけるという方法をやってみた。
それはなかなか良いアイディアだったのだが
見た目イマイチ。
そこで液体ゴムを使ってゴム部品を整形?してみる手に出た。
やっている途中なのだが、さて、こんなんで上手くいくのか?
こうご期待。