7月1日
さて、そんな優秀なB-2Xが
殊更良い仕事をしているpippinさん宅でHMA-9500が
どれくらいの働きをするものか?
実はここで多種多様なアプローチとか検証とかがあったのが
大幅に省略すると、HMA-9500、JBL4310を相手に
なかなか健闘をしてくれた。
良かった。一安心した。
なにせプリにLNP-2Lが使われていたもので
日頃そのような物と組んだことのない拙宅の9500は
目を丸くしていたかもしれない?
実は9500MK1後期型とMK2改造品の二台を持ち込んだのだが
最初の比較でMK1の方がぎゅっと濃縮された感じで
タイトに決まり、MK2の方はやや大らかに鳴るということで
B-2Xとの比較?は9500MK1の方で行った。
注釈を付けると僕のMK2は電源トランスをフェニックスの
Rコアトランスに換装していたりする純然たる?改造品で
ノーマルとはちょっと違う。
また二台共電解コンデンサー交換等は行われていて
さすがにお手入れはしている個体だ。
だがしかし、B-2Xが登場すると、これがまた
大変良く鳴るのである。
重心が低く足腰が強い感じでありながら
実に切れが良い。
中を見たらMOSが仕込んであるんじゃないか?と
思いたくなるくらいなのだ。
そして両者の違いが最後の頃出て来る。
終盤になって4341を繋いでみるとアララララ…
7月2日
4341を繋いで鳴らしてみると…
…鳴らない。
何とも下っ腹に力の入らない音がする。
出た。これがHMA-9500あるある、である。
長岡先生はHMA-9500は重いコーンのユニット(ウーファー)には向かないとか、
市販の低能率スピーカーでは詰らない音しか出ない、
と度々書かれていたが、まあそんな感じ。
B-2Xの場合は4310でも4341でも難なく鳴らす訳で
これはスゴイものである。
この辺がオーディオの面白いところで、
どうしたって鳴らない時は鳴らないのである。
…ということでこの日の実験としては以上。
以下は補足だが拙宅のSONY SS-G7というのも
HMA-9500にとってベストな相手かというと
そうでもない筈だ。
そう思ってG7が来た当初は色々な実験をしたのだが
結局9500に落ち着いて今日に至る。
即ち38cmウーファーだから鳴らせません、
という訳でも無いようだ。
こればっかりは各人が色々繋いで試してみるしかない。
もう一つは、瞬間的に繋いで鳴らしてわかる事と
それではわからない事もあるということ。
こりゃ駄目だ、と思っても一週間、二週間と鳴らしているだけで
鳴らないはずだった組み合わせが鳴り始めることがある。
特にパワーアンプとスピーカーの間で見かける現象だ。
短気は損気というヤツだ。
更に大切なことを締めにいうと、
「長所を聴くか、短所を聴くか」ということだろう。
思いっ切り外してしまっている場合はそれすら
当て嵌まらないだろうが、ある程度の許容範囲に
入っていたら最後はどこに耳を傾けるかで
決まってしまうと思う。
それでも一応合格点を、9500もpippinさんに頂けたのは成果だった。
よっしーはよっしーでB-2X、やはり恐るべしと驚異に感じたので、
その辺はなんというか、人間の、いわゆる無い物ねだりというものなのかもしれない。
7月4日
さて、締め、なのだが実はこの日の出来事はpippinさんとの
プライベートオフ(あるのか?こんな言葉?)みたいな物だったから
取り上げてしまって良いかどうか?というのはあった。
ただ、アンプのお話し以外に心に残る物がひとつあった物で…
それはなにか?というと…
綺麗なブルーのカートリッジ。
こちら、ヤマハMC-3。
1982年当時37,000円。
その時点で5、7、9と出ていた十字マトリックス方式の第四弾にして
その時点での最高機種。
十字マトリックス方式はコイルのターン数次第で
例えば左右の拡がり感など自在に?操れるので
色々な音作りが可能でやたらめったら種類が増えた?が
そんな中にあってMC-3は大変オーソドックスで堅実な方向に振られた物と
見える。
段付きダンパーの採用は5や9と同様。
カンチレバーはベリリウムテーパードパイプ
でこれはMC-1X以来だが肉厚(ベリリウム被膜の)30ミクロンと軽量化は進む。
針先チップは0,06mm角柱特殊楕円針。
MC-1Xは0,1×0,2mm角柱だから断面積は18%でしかないし
重量も18%。
これはこの時点でも極小の部類で
針先実効質量が0,145mg(発表時最小)。
テクニクスが0,098mg。(EPC-305MC MK2)
デンオン0,077mg(DL-1000)に次いで第三位だった。
ちなみにこれを更新したのがヤマハMC-2000の0,059mgであり
テクニクスEPC-100MK4の0,055mgだったのでご参考に。
さて、カートリッジの音を決める要素というのは
実に多岐にわたり複雑に絡み合う。
チップがこうだと良いとかカンチレバーは〇〇だと絶対に良いとは
いかない。
それでも、「うりゃ、結局どれにしたら良いんじゃあ。
親分が使うんじゃ、失敗したら許されんからのぉワレ」
と銃を押しつけられたらなら
「た、高いのを買ってください〜( ;∀;)」というしかない。
しかしオーディオマニアの方が相手だったら色々お話しが出来る。
その場合MC-3なんていかがでしょう?と言いたくなる。
それほどお聞かせ頂いたMC-3の音が良かったのである。
実に明瞭で爽快。爽やかな音だ。
そしてヤマハならではの?色気も忘れない。
素敵な一本で、これは是非ご紹介をしたかった。
振り返れば1980年代冒頭の数年は、特に優れた
MCカートリッジ群が大量に排出された時期であり、
思えば夢のような時代だった。
この日もそうした良き時代の銘品に
改めて出逢えた一日なのだった。