6月20日
目ざとい方というか記憶力が良い方というか、
あるいは物好きな方?であれば
この表紙がよっしーの部屋に登場するのが二回目だという事に
気づかれる事だろう。
もちろん気づいたから偉いとか、なにか貰えるとかそんな事は無い。
この個体は当時ものでは無くて、よっしーがこの号を過去に持っていたのに
手放してしまい、しかし中身には関心を持ち続けているということを
知るある方がわざわざ見つけて進呈してくださった貴重な品なのである。
それにしても、よく、その当時このこの雑誌を買ったな、というのが
正直な気持ちなのだ。
というのは、この1982年3月号が出た頃なんていうのは
もう趣味のオーディオからは相当気持ちが遠ざかっていたはずだからなのだ。
雑誌ならオートバイ誌はせっせと買っていた。そんな頃だ。
逆にいえば、そんな状況下であっても買う決断をさせるだけの何かが
あったということで、それはなんだったのかをちょっと
語ってみたい。
6月22日
なぜこの号?もなにもお目当ては「'82コンポーネント★私のベストワンはこれだ」なのは
争いが無い。
いわゆるベストバイみたいな記事はこの頃は3月とかだったのか?
その前後が良く分からない。
やがてコンポグランプリみたいな感じになると6月号附近と12月号附近になるのだが
いつから定着したのか?
まあ何でもよろしい。当代六人の評論家諸氏が各ジャンルでベストワンを挙げるというのだから
読者の心をわしづかみにする?_企画である。
六名さまとはどなた様のことかというと
石田善之先生
貝山知弘先生
金子英男先生
斉藤宏嗣先生
長岡鉄男先生
藤岡誠先生
…のことである。
選ぶジャンルにカートリッジだトーンアームだ、チューナーだ、カセットデッキだ、
が入っているところが時代を反映している。
CD登場前夜のことであり必然的にそうなる。
さて、まあもう40年は昔の雑誌なので少々詳しく中身を解説しても多めに見て貰えると思うので書くが
カートリッジ部門
石田先生/MC-3 YAMAHA
貝山先生/AT-34EU
金子先生/DL-305
斉藤先生/AT-1000
長岡先生/MC-L10
藤岡先生/DL-1000
…と、この部門は見事に票が分かれるのが面白い(笑)
次いでトーンアーム(っていうかこの部門が有る事自体が驚異?)
石田先生/FR-64fx
貝山先生/AC-3000MC
金子先生/SME 3009SeriesV
斉藤先生/FR-64fx
長岡先生/EPA-100
藤岡先生/WE-407/23
ま、ここも票は分かれるのだが前述のカートリッジとの絡みが見えて興味深い。
次いでプレーヤー部門
石田先生/LUX PD-555
貝山先生/L-07D
金子先生/TU-1000
斉藤先生/L-07D
長岡先生/TU-1000
藤岡先生/P3
この辺も票は分かれる。ただ共通項も多い。
次にプリメインアンプ
石田先生/AU-D907Fex
貝山先生/AU-D907Fex
金子先生/AU-D907Fex
斉藤先生/A-9
長岡先生/AU-X11
藤岡先生/E-301
サンスイが元気だった時代を改めて感じると寂寥の感になる…
さて、プリアンプなのだが、これは
長岡先生/SONY TA-E900
で、他の先生は皆そろって/SY-88ΛUだった。
それがメインアンプになると…
石田先生/M-100
貝山先生/M-100
金子先生/SC-Λ99
斉藤先生/L-08M+PS
長岡先生/HMA-9500U
藤岡先生/L-08M+PS
と、いささか票が分かれるのが興味深い。
チューナーになると全員そろってL-02Tだった。
これはもうやむを得ない気がするが(笑)
スピーカーは
石田先生/S-F1(Custom)
貝山先生/Monitor1
金子先生/S-F1
斉藤先生/DS-505
長岡先生/Fostex G-700
藤岡先生/インフィニティ4.5
そして最後のジャンルがカセットデッキというところがスゴイだろう?
石田先生/ナカミチZX-7
貝山先生/SONY TC-K777
金子先生/Lo-D D-99
斉藤先生/SONY TC-K777
長岡先生/SONY TC-D5M
藤岡先生/SONY TC-K777
ま、そんな感じなのだが僕個人はやはり長岡チョイスとその理由に
ニヤニヤしながら読んでいたのだった。
(続く)
6月23日
長岡チョイスということなのだがカートリッジのMC-L10やアームのEPA-100などに
ついては僕自身も語り尽くした感があるし、マニアの皆さんにはそもそも説明も不要だろう。
プレーヤーTU-1000については比較的長期に渡って先生のラックの上に居続けた。
ある程度の評価は成されたのだろう。
プリメインについては、どの評論家も仕事として選びはするが、
それを本気で使う可能性は低いわけで
選べと言われたから選んだ、みたいな感じがする。
長岡先生はこの時、「超ミニ、超ローコストのプリメインなら自信を持ってベスト1を選び出せる。
アイワS-A60だ。しかしこれをもってプリメインのベストワンとするわけにはいかない」としている。
これはこの頃書斎でS-A60を使っていての発言であろう。
実際には目方で選んで?AU-X11。値段も275,000円と最高値のものだ。
プリのTA-E900も面白い。先生だけが900を選んだ。60万円とダントツ高価。
実際のリファレンスには採用されないのだが音という点に絞った時、
この時点での現実のリファレンス、DENON PRA-2000のエポキシ固めと通じる音に着目していた
ところが鋭い。
900も又モジュールの中に素子をエポキシ…かどうかはしらないがを充填して締め上げていたのだ。
パーツの徹底防振は特にプリアンプの場合解像度アップに効果があるわけだ。
メインアンプのHMA-9500MK2は当然のチョイスだが、'82年3月だから現役だったろうが
生産完了となってしまえば雑誌のこの企画には挙げられない。
もしかするとラストの表舞台だったかもしれない。
…と、くだくだ書いたがなんといっても面白いのがスピーカー部門だ。
この時代だとSONY APMシリーズもあればPIONEERのS-F1。テクニクスのモニター1もある
という事で選びたい放題?
そんな中で長岡先生のチョイスは、フォステクスのG-700。
二本一組34,000円。7cmウーファーと1,6センチツイーターによる2Way。
80W×153H×100Dのミニスピーカーである。
なんともひねくれた選択で、当時大いに笑ったのだった。
要するに市販のスピーカーは全て長岡先生の好みからは外れるという事で
ミニスピーカーのベストワンを挙げたということ。
アルミとリアルウッドを使った外観は質感が素晴らしく、音も小音量で聴く限りは
高級システムの音という事で、これを読んだよっしーは大いに興味を持ったものだ。
ただ、当時大学生か。ペア3万円少々と言われてもおいそれと買える物じゃない。
それに冗談で買うには高い。
こうした物は逆に金持ちマニアが洒落で買う物なのである。
それからおおよそ6年後くらいだったか。
僕はこのG-7××系スピーカーが渋谷の東急ハンズで投げ売りされているのに出くわした。
正確にはその頃だから700ではなくて707だったはずだ。
欲しい!と思ったのだがちょうど結婚式に向けてお金を貯めなければならない絶頂期で
決断が出来なかった…
さてしかし人間の執念というのは怖い物で、この時の怒りみたいなのが後年まで延々と続いた。
ようするにいつかは7××を買って見せるからな、みたいな感じだ。
まあ買いたければ買えば良いのだが、どう考えてもアクセサリー的域を出ないのも確かなので
踏ん切りがつかないのである。
(続く)
6月24日
で、苦節40年か30年かしらないが怨念というのは恐ろしい。
とうとう手を出してしまった。
ただしG700でもG707でもなくG750ではあるが。
G750。
1997年発売。
初代は先に挙げたG-700で1979年発売。ウーファーがアルニコでツイーターがフェライト。
実はこれが1981年に改良型がリリースされていてウーファーがダブルダンパー化されたほか
外観も少し変わっている。
1983年、G707登場。ウーファーもフェライト化。デザインも変わっている。
1986年 G707AV発売。キャンセルマグネット付きのAV対応。
僕が結婚前に買い損ねたのが多分(多分)これ。
そして1997年にG750登場。外観は700型と707型の折衷みたいな感じ。
ユニットはウーファー、ツイーター共にアルニコつぼ型ヨークと豪華。
初代700と比べてサイズは大きくなって重量減。
しかし音は確実に700を上回るという長岡先生の弁(ダイナミックテストより)もあるし
ここは逝ってみよう、と相成った。
実物を見ると高級感は確かに凄い。その点において拙宅のナンバーワンだ。
鈍器度も高い?というか、これで殴られると金属も使われているだけに致命傷になりかねない。
…さておいて音だ。
*この個体のスピーカーターミナルは交換されているようだ。
6月25日
音…なのだがまず能率が低い。
当たり前と言えば当たり前だがLS-5Vあたりと比べると
はっきり能率が低い。
あるいは5Vが能率高目、なのかもしれないが
何とも言えない。
そしてパワーは入らない。
これも当然なのだが、ここまで入れにくいとは
思わなかった。
しばらく鳴らしている内に片側のウーファーに気になる所も
見つかる。
そんな訳で現状完璧ではないのだが
それにしてもこれはなかなか深窓の令嬢的スピーカーである。
丁寧な扱いが必要。
AIWA S-A60を繋いでDSLやラウドネスをうっかり入れると
まずい事になる。
LS-5Vで同じことをやると、小音量で聴く限りは巨大システムもどきの音だが
G-750はあくまでも精巧なミニチュアの世界だ。
どちらが良い、ではなく異なる、ということだ。
ま、とにかく積年の恨み?は晴らせた気がする。
苦節30年〜40年。
気の長い話しである。
6月29日
「HMA-9500を聴いてみたい!」
pippinさんからそう言われたのがいつの事だったか?
振り返れば随分長いお付き合いをさせて頂いているが
そんな事を試すのも初めてのことだ。
お易い御用!とお持ちしたは良いが
pippinさん宅には既に名器がずらり…
さて、どうなる事やら…
6月30日
まずHMA-9500について少しだけ。
いや、本当に少しにしたい。
世界初のパワーMOS FET搭載…
なんてことよりなにより、長岡先生が大変な長きに渡って
リファレンスとして使い続けた事が強烈な印象となって
いわゆる神器のひとつに挙げられる存在になってしまった。
それは良いが、どんな物に繋いでも良い音がする機器なんて
ありはしない。
今回はどうか?pippinさんのところで違和感ありありだったら
恥ずかしいな、とそれだけは気になった。
さて、この日HMAの向こうを張ってくれる?のは
ヤマハB-2X。
先日の訪問記である程度説明もさせて頂いているが
1983年発売の名器である。
ヤマハにはB-2という名の先代があるが
そちらはB-1の後を追って登場したV-FETの、
これまた名器ではあるが路線が違う。
つまりB-2XはB-2の後継機とは言い難い。
どちらかというと同時期発売のプリメイン
A-2000と方式を同じくする、
デュアルA級とでもいうもの。
6Ωで200W+200Wを叩きだす。
…という事以上に真っ黒で不愛想な感じの外観が素晴らしい。
フロントと側板はアルミだが他は正真正銘の鉄、だ。
公称26kg。
相手にとって不足ない。
ではなくて不足が無さすぎる?