1月20日
ビクターSX-3。
初代は1972年登場。
まず、そのルックスが洗練されていて多くの人の度肝を抜いた。
2021年の今日見ても垢ぬけていると感じるのだから当時としては
大変な未来志向だったことだろう。
白木仕上げでサランネット無し。
25センチウーファーと5センチツイーターにはグリルガードが設けられていた。
その25センチウーファーにはドイツ・クルトミューラー製KDUコーン紙を採用。
ツイーターはソフトドームタイプ。
フロントバッフルとリアバッフルに北米産針葉樹ダグラスファー合板を採用。
ピアノの響板を連想させる響棒を採用。
吸音材にはグラスウールではなくエステルウール使用。
外装はスプルースに硬質のクリアー塗装で眺めて楽しいスピーカーとなっている。
今回僕の手元に来たのはSX-3Vということで二度目のマイナーチェンジを受けたものだが
基本的な路線は当然変わっていない。
諸々の話しもして行きたいが、ここはやはり音を出したいのが人情。
1月21日
音。だが…
ちょっと書くのを躊躇ってしまう。
何故って、SX-3についてこれまで数多の人が書いたことと
同じことしか言えないからだ。
これはもう大変な美音というのが率直な感想。
それ以上何をいうの?という感じ。
日本の美音。どうだ、凄いだろう?
…で終わりで良いのではあるまいか。
ところが人間というのはどうしてか、良かった、それで終わり、
にしない生き物だ。
じゃあオマエハ一体何が気になるんだい?
と訊かれたら、「乱暴な言葉は吐かない。
終生よゐこで終えそうなその性質が
心配なのです…」と応えることになろうか。
もちろん、これは余計なお世話というもので
SX-3になんの落ち度も無い。
取りあえず二つの事が言える。
ひとつはこのSXワールドを心底愛せる人がこの
スピーカーを使えば良いということ。
そしてもう一つは、徹底的に打ち込んで
自分のいう事を聞くまで格闘する覚悟で臨まなければ
どのスピーカーも本当の力は発揮しないということ。
1月22日
音が綺麗です、綺麗過ぎますというのはもはや難癖に近い。
ただ、例えば1972年の段階でSX-3を聴いたけど選ばなかった人というのは
そんな感じで迎え入れなかったのだと思う。
この時代だとまだまだ舶来信仰みたいなのが幅を効かせていたと思うので尚更か。
もっとバリバリと鳴ってくれないとJAZZのエネルギーが…なんていう事になったんじゃないか。
その観点で行くとアピールが弱いスピーカーという事になろう。
しかしこのシリーズは良く売れたと思う。
というのも、よそ様にお邪魔すると結構出くわすのである。
オーディオマニアのお宅、というのではなく、ごく一般のご家庭の話しだ。
1972年から1980年頃に迎え入れられた物がそのまま鎮座、みたいな感じだろう。
そのルックスゆえ処分が躊躇われるのか?それはわからない。
ウーファーのエッジがウレタンではない所は良い。というか寿命の点で考えると
よい選択だった。
ツイーターも長寿…と言いたいが寄る年波で断線はする。
実は今回の個体も断線していた。
無事音が出るように出来たのは良かったがダメならニコイチで作るか、
オークションでツイーターだけ落とすか。あるいはオリジナリティは
無視して何か合うツイーターを捜すしかない。
アッテネーターは幸いガリが無かったが、劣化はよく報告される。
もっともこの種のアッテネーターは外して分解してというのは比較的容易。
ダメでもそれこそ取り換えるという手はあるし、いっそバイパスしても良い気がする。
このスピーカーでツイーターを絞るというのは考え難い。
初代はウーファーにもスイッチが付いていて音質変化を起こせたらしいが
まず劣化必至とみるのでジャンプさせた方が良いだろう。
端子はVになって多少端子らしくなった?が、Uまではワンタッチ式だった。
1月23日
もう少しSX-3Vについて書こう。
そう言えば能率は低目。
そう言えば、というのは言われてみれば。あるいは広い空間で
圧倒的大音量再生でも狙うなら別だが、一般家庭で使う分には
全く支障ないという意味を含む。
むしろボリュームコントロールを考えるとこれ位の方が扱い易いと思う。
ソースにCDを使って程良いくらいの能率だからアナログ時代にはちょっと能率低目に
思われたかもしれないがアンプのボリュームをある程度上げられるのはいずれにしても有利だ。
もう一つは音場感。
久しぶりにこの言葉を使って良いな、と思う体験をした。
今回は特に後ろの壁から1メートルくらいは離れた状態での使用でもあり
その辺は有利に働いたと思う。
ただ、その使い方をするにはSX-3のサイズは決して小さくはない。
この辺は痛し痒しだ。
まあいたずらに手前へとスピーカーを持ってこなくても良い。
SX-3ならSX-3の周りになるべく物を置かないで
周辺をスッキリさせておけば済むことだ。
…と、駆け足も良いところだがSX-3に関してを以上で一応まとめる。
本当のことは惚れて使い込まないとわからないのは
言うまでも無い。
それともうひとつ。
やはりこのSX-3Vでも40年は経過したスピーカーであるということ。
幸いエッジが風化してしまうようなタイプとは違うので
その点は結構だがいずれにしても鳴らしこんで
また様子が変化したら調整と、そんな風に愛を注いであげる必要がある。
そんな事は面倒だ、という人は新品をショップで
買ってくる方が間違いがないのでお奨めだ。
蛇足をひとつ。
ツイーター修理の時中を覗けるのだが
その時とっても懐かしい匂いがした。
吸音材の匂いなのだろうな…
一番初めに家にステレオが来た日の事を思い出した。
そう言えばあれもオールビクターのシスコンだった。
あれからどれくらいの時が流れたのだろう。