11月7日
スワンが長岡教徒のお仏壇だとすると
AIWA PX-E860は江川教徒のそれにあたるかもしれない。
イナーシャの江川と呼ばれ、アナログプレーヤーに関して
一体どこまで行くのだろう?と周囲に心配させた
江川先生が晩年行きついた先が片手で持って団扇のように
扱えるちっぽけなプレーヤーだったとは
なかなか興味深いお話しだ。
そのPX-E860は僕も何年か前に入手して試し、
その後解体してパーツを他のプレーヤーで使うという暴挙に出ている。
それなのに…
性懲りもなくまたこのような物に手を出すとは…
11月8日
AUDIOTECHNICA AT-PL300。
AIWA PX-E860に似ている。
亜種というべきか。
ただこの種の物は色々な所から出ていて、いったいどこか
ご本家なのか?
僕にははっきりわからない。
たどっていくと'90年代に入ってから以降、
同様の物は各社から出ていた。
まあそれはさて置き有名なのは江川先生の影響で
AIWA PX-E860またはそのご先祖様ということになる。
そのPX-E860の音だが、
正直言ってよっしーにはピンと来なかった。
歪感なく穏やかでスムーズな音という意味では素晴らしいのだろうが
あくまでも、「まあこういう物はこういう感じ」
という域を出なかった。
ただ、部分部分は気になるところばかりであったので
パーツを外してあっちこっちで使ったりしている。
その優秀さからすると、やはりPX-E860も
もっと良い音がして然るべきなのだが…という思い及び、
その派生モデルたちはどんな音がするのだろう?
という気持ちはくすぶり続けていた。
で、テクニカAT-PL300。
針折れということで安かった。
それでもPX-E860が完動で980円だったのに
それよりは遥かに高かったのだが。
PX-Eと一番の違いはプラッターが樹脂ではなく
金属であるという所か。
あと、全体にちょっと大きくて、やや重くなっているようだ。
ここで各部を改めてキチンと見てみよう。
11月9日
まず、テーブルシート。
これはAIWA PXとそっくり。
同一と言っても良いのだが、素材に違いを感じる。
AT-PL300の物は一応ゴムシートと言えるつくり。
PX-E860の物はウレタンシートか、というような作り。
プラッターだが金属で裏を見てもまじめな作りのもの。
PX-E860は樹脂製。
軸は恐らく共通。
この軸は極めて優秀。
軸長が短く倒立型。大変コンパクトで滑りも良い軸だ。
ベルトを外した状態で空転させると長々回る。
プラッターが軽量なのと相まって大変抵抗が少ないのがわかる。
アームはストレート形状でシンプルな物。
ただ、カートリッジの取り付け部で軽くオフセットさせているので
いわゆるピュアストレートとは違う。
今回の個体は針折れだったのだが本来交換針は多分ATN-3600とかその辺だと思われる。
手持ちにLo-D品番のDS-ST-20があったのでそれを装着。
余談だが針ノブが赤いのでプレーヤーの黒との対比で大変美しく思える。
相変わらず?出力ケーブルが短いので今回は中継プラグを噛ませて延長してプリへ接続。
フルオートなので気楽に演奏を始める。
だが…
11月10日
ん?
…と首を傾げる。
何故ってあまりに音が良いのである。
PX-E860とまるで違う?
実に活き活き鳴るのである。
しかも厚く、繊細。
これはちょっと驚く。
だってPX-E860と瓜二つのコンストラクションで、違いと言えば
プラッターが樹脂ではなく金属になっている事。
あとは針が純正と違うと言えば違う。
しかし、それだけでこんなに違うか??
PX-E860の樹脂プラッターは温存してあるので差し替えてみればわかる?
だが今はそんな事をしたくない位良い音が出ている。
なんなんだ?これは??
取りあえずPX-E860の事は忘れてAT-PL300の音を楽しむべきだが
この音がどこから来るのかは考えてしまう。
まず低抵抗の回転系。
これはあると思う。
音の入り口はカートリッジではなくプラッターの回転なのだという事が
よくわかる。
アームは単なるパイプとしか見えないし水平方向の回転軸に対して
オフセットされた位置にパイプが取り付けられているのなど見ると
複雑な心境になってしまう。
このサイズに収めるためにやむを得ないのだろう。
カートリッジはほんの少しだけ曲げて付けられているがかなりピュアストレートに近い。
調整は何も出来ないので推測も入るが針圧は恐らく3g越え。
この重針圧は音の良さに一役買っていると見る。
11月11日
さて、ここで内蔵フォノイコも味わってみたいと思う。
そうそう、この機種もまたフォノイコライザーを積んでいて
フォノ非対応のアンプでも楽しめる造りになっているのだ。
どうしようか?と思ったがステレオ誌付録のデジアンに繋いで、
そこからスピーカーもナカミチSP-4sというコンパクトな組み合わせとしてみた。
すると、これも良い音だ。
もちろんセパレートアンプとは差が付くが、これは主に付録アンプに使われているパーツの
品位の問題と思われる。
グレードアップしたら更に良い音で鳴ると思う。
…とか何とかすぐ言い出すあたり
既に相当病んでいるな、我ながら。
ごちゃごちゃ言わずパワードスピーカーなんかに繋ぐのが
お洒落なのだ、実は。
AT-PL300。これなら普段使いのプレーヤーとして常駐して貰ったって良い。
PX-E860を今一つと感じた僕がPL300はどうしてオーケーなのか?
それはわからない。あるいは僕には雑味が必要なのかもしれない。