10月20日
師匠によればXL-15で100万個の出荷があったそうだ。
恐るべしアナログ全盛時代…
輸出とかもあったしね…
EPC-270Cだともっと多かった予感…
やっぱ凄いわ…
ここで話は変わる。
昔、横浜工学という会社があった。
その会社自体はとっくに無いが、そこにいた人たちが飛び散って
ジムテックやSAECが生まれたのは先輩諸氏の知る所である。
トラは死して皮を…ではないが功績の航跡を捜すことは出来る。
有名なところではパイオニアのベルトドライブターンテーブルMU-41。
これが横浜工学のOEMである。
試しにプラッターを外して製造番号を眺めてみると良い。
頭のYKは横浜工学の略なのは間違い無し。
もう一つ有名なのがMMカートリッジ。
YC-05E。
05からポイントファイブとも呼ばれた。
秀作と高く評価してリファレンスに使っていた人に長岡鉄男先生がいる。
70年代のステレオ誌などでその辺は確認できる。
其の後も折に触れ先生がYC-05Eを取り上げたので、それで知ったという人もいるだろう。
僕もその一人だ。
まあ手に入らないだろう、と思っていたのだがMJの個人売買欄だっただろうか。
売りたしに出ていたのを発見。マッハのスピードでゲットした。
もう25年も前の出来事だ。
幻のポイントファイブ。
音はどうなのか?
入手時は嬉しくて、MC-L1000対YC-05Eなんてのを自宅でやって悦に入っていた。
L-1000を基準にするとコンダクトの方がオフ気味で音は奥に展開したのが印象的。
ただ、ひけを取らずに鳴るので驚いたというか嬉しくなったというか…
昔々の想いでである。
やがてネット時代が来て、幻のポイントファイブも少々見るようになった。
もっとも数は知れているが。
さてしかし、ある晩電話が鳴った。
あら、Gさん、お元気でしたか??
なんて会話で始まるがオーディオの話しなのは間違いなし。
しかもわざわざお電話となると、これはレアかつスピードを要する案件なのも間違いない。
案の定観測されたという。
何が?
コンダクトである。
都内某所で。
…それだけで注目に値するが、問題はそれが二本、というところだ。
ひとつはYC-05Eなのだが、もう一つは”よくわからないコンダクトだ”というのだ。
よくわからないコンダクト…
これは大問題である。
コンダクトには他にYS-07E。YS-07Cという機種があることは昔の広告で確認してある。
要するに05Eの下位機種である。
さて、どうする?
下位機種まで買ってどうする?
それについうっかり05Eもう一本、とか行きそうだがどうする?
その瞬間から頭の中には幾つかのパターンの妄想が浮かんでは消えることなく居座る事になった。
解決するためには一刻も早く、ショップへゴー!である。
10月21日
さて、参りました。某店。某フロアー。
ショーケースの中に僕なんかにはたまらないカートリッジがぞろぞろ。
「なにかお出ししましょうか?」と声を掛けられるがこちらはコンダクトしか今回は見るつもりがないので
「これ」と指差し。
「これはこれはお目が高い…」というのだが、多分どれを指名してもお目が高くなる?
ひとつはYC-05E。で、これは良いとしてもう一つ、なのだが予想に反してYC-05E瓜二つ?
え?07じゃあないの?じゃあ何??
頭の上にはてなマークが山のように出たがわからないものはわからない。
何しろ海千山千のショップ側がわからないというのだから、わからなくても恥じゃない。
型番がCE-05D?
なんじゃそりゃ?
しかしどう見てもコンダクト。というよりYC-05Eクリソツ。
取りあえずYC-05Eの方はシェルに取り付けられていたので試聴とやらをさせて貰う。
口が裂けても、実は既に一本YC-05Eを持っていて…と言えるもんじゃない。
ある意味核心の?CE-05Dの方はシェルには付いていなかったのだが、この場合そんな事はどうでも良い。
YC-05Eを聴きながら、考える事は、さて、どうしよう?どっちかだけ買うとしたらレアなCE-05D。
でも音はきっとYC-05Eの方が…ああ…
とかなんとか言いながら結局は両方買うのであった(笑)
そう、コンダクトの身請け先なんか、自分を置いて他に誰が…と訳の分からない言い訳を自分に
しながら財布を開くよっしーだった。
10月22日
持ち帰って両者をしげしげと見るが本当に双子のようだ。
針の刺さる部分がYC-05Eは赤。CE-05Dは白。それしか違いがわからない。
あるいは針先チップに違いがあるのかもしれないが、厳密には顕微鏡などで見ないと何とも言えない。
さておいて、音が出るかどうかの確認をかねての音出しをする。
まずYC-05E。これはシェル込で売ってくれたのでそのまま大丈夫。
音が出ると言って喜ぶのは変かもしれないが50年前の製品となるともはや音が出るだけで
感謝しなくてはいけないと思う。
ビンテージという言葉が世にはあるが、半世紀となるとビンテージと言って上げて良いのでは?
というのが個人的思い。
しかして音は出る。
その音は紛れもない、YC-05Eの音である。
どういう音というといわゆるフラット指向などではない。
低域にほどよい厚みがあって高い方には色気と繊細感がある、なんて書いたら
オーディオ誌みたいな言い方だがそんな感じ。
ちょっと言っておきたいのだがこの種の半骨とう品的物をやたらと神格化するのは
どうかな?と思う。
生産数が少ない。残存数が少ない。長岡先生が褒めていた。
幻のポイントファイブと言われている。
即ち圧倒的に良いわけでは無い。
一聴してハイファイ調という意味では先日の日記にあったEPC-270C+440針の方が勝るかもしれない。
世の中には良いカートリッジというのがいっぱいある。
というか、その人が気に入って打ち込むカートリッジが、すなわち良いカートリッジなのだ。
もちろんコンダクトも僕にとって良いカートリッジなのだが追い込みはこれから。
というかこれで初めて追い込める。
これまでは貴重な一本のみの存在だったから、正に骨董好きなオヤジが
極まれに桐の箱から出して一人で愛でてはニヤニヤする感じだったのだが
バックアップが出来るともう少し積極的になれるというものだ。
…とかなんとか言いながら次はCE-05Dの音だが…
10月23日
さて、いよいよ問題の?CE-05Dである。
何しろなんら情報が無い。
ただ、これだけYC-05Eに似ているのだから概ね同様とおもえば良い。
針圧1,2を中心に弄りながら聴いてみる。
さて、どんな音が…
…ざっくりな言い方を許されるならば、YC-05Eに酷似した音と言える。
あるいはYC-05Eより一段景気が良い。
なんというか、YC-05Eよりもヒップサイズが一回り大きくなり
身長も伸びた感じと言えばわかるだろうか?(わかんねーよ、って?)
表現が大げさな感じがあるのだが嫌味にならない。
身振り手振り付きで、抑揚たっぷりで目もパッチリ開いてにじり寄りつつ
一生懸命話す。
ところが大変な美人だから「しょーがないなぁ…」と嬉しそうな顔をして
聴いてしまう。
そんな感じだ。
実はこれ、YC-05Eにも共通して言えることなのだがCE-05Dの方は一段とオーバーに訴える感じ。
しかしそのちょっとの差は、果たして本当にYC-05EとCE-05Dの違いによるものなのか?
それともあるいは、単に経年変化の違いなどによるものなのか?
こうなるとわからない。なにしろ半世紀の時が流れている。
取りあえず音が出るだけでも儲けもの。
コンダクト三本。これだけあれば僕の余生の間くらいはカバーしてくれるだろう。
10月24日
そうそう、その某店某フロアーでYC-05Eを試聴させてくれた時のことだ。
途中で最新の、多分それなりのお値段のするカートリッジ、
フォノイコ等を使った音と切り替えをやってくれた。
ダブルアームのプレーヤーだったからお手の物と言う感じ。
ひとつには、「ほら、こんな新しいカートリッジを使った
最新の装置と比べてもそんなに劣らず鳴るでしょ?」
みたいな意味があったと思う。
ただ、その時に、「解像度が、とか言わないで…」みたいな
ワンフレーズがあった。
念のためだが僕は人の言葉の端っこを捉えて
つまらない突っ込みをする趣味は無いのでそのつもりで。
多分店員さんとしては「まあ解像度が…とか言われると
そりゃ最新のこれらよりは劣るだろうけど、
それは言いっこなしネ」という意味合いだったのだろう。
ま、そう言われて聴くと、なるほど最新鋭機達は
一段解像度が高く聴こえるのも確か。
その意味で進歩しているのだ。
しかし、その解像度とやら、要るのだろうか?と
首を傾げてしまったのも事実。
もちろん、例えば昔のアナログテレビと現在のテレビみたいな
違いがあれば、それは有無を言わさず、だろうが
そんな差があるわけがない。
そう考えると、この50年、一体何をやっていた?
という事になるのだが、そのごくわずかな差を出すために
精進して来たのさ、と言われたら、そうかな?と思えなくもない。
なんとも複雑な心境になってしまった。
まあなるほど、最新の組み合わせは、素直にさすが!
と言わせるものが無かったか?と言われたらありました。
でもなあ、それを得るために、一体お幾ら万円払えっていうのさ?
と、ドケチのよっしーとしては思わざるを得ない。
同時に、もしかすると随分古臭い音を聴いて
それで充分と疑わずに過ごしているのかも?と
素直に感じる自分も居た。
何が言いたいのか、分からなくなってきた。
しかしCE-05Dの音は、混乱する僕の頭と反比例して
どんどん良いものになっていく。
オーバーハングを真面目に取ったらシェルから飛び出して
かっこう悪い?
ま、その辺はボチボチでんな。