8月2日
どうやら母の年齢を超えることは出来たようだ。
さて、新型VM。
果たして旧製品と比べて針先以外の違いはあるのか?
カートリッジの音を左右する要素というのは案外多くて、
コイルの線材。使い方(長さ、太さ)。ダンパーのゴム。
各種接着剤などでコロコロ音が変わるはずだ。
そうで無ければ世の中に歴代数多のカートリッジが存在する理由がわからない。
ただ、今回のテクニカVMの場合、特に針の違いが大きくアピールされていて、後々針を取り換えての
グレードアップであるとか音の違いを味わうとかをメーカー自らが述べている。
後はシリーズの中で明確に違うのはボディで、要してしまうと5シリーズは樹脂。7シリーズは金属ということか。
この違いは大きい訳で、針は後々差し替えるとしても7を選ぶのか5を選ぶのかははっきりさせて
置かないといけない。
予てよりの流れでは150以上が金属ボディなので、それからすると740が150相当ということか。
今回僕の手元に来てくれたのは540MLで樹脂ボディ。
旧品番では手元に150Ea、130E、100、15Eaがあるが、ボディの面では130Eや100の系列という事になる。
ただ、針が無垢のMLということで、130や100は上回り、150と良い勝負か、というところ。
いずれにしても良い対決?が期待できる。
理屈はこれくらいにして音を出そう。
8月3日
理屈はこれくらいにして音を出そう。
早速540MLに行きたいと思ったが、念のため先に150Eaを聴いてみる。
プレーヤーはMU-41にPX-E860のモーター。EPA-100アームの自作品。
これに150Eaを付けて聴きなれた盤に針を落とすと…
困った事に良い音だ(笑)
困る必要は無いのだが、540MLはこれを歴然と上回るのか?
ちょっと心配になった。
ここでいよいよ540MLのシェイクダウン。
パッと聴いて、まず出力控え目に聴こえる。150Eaも特段高くないから540は控え目なのか?
しばらくそのまま聴くが今一つ精彩を欠くのでさすがに妙に思って調べたら
標準針圧は2gとなっていた。
勝手に1.5〜1.75と思い込んでいた。反省。
同時にこの辺にも設計変更の一端を感じる。
正しく針圧を計って再トライ。
耳も慣れて来ると、これはなるほど良い音だ。
どんどん盤を換えて行くと更にそれがよくわかる。
非常にSN比が高い、なんていうと今時SN比の低いカートリッジなんてあるか、と
突っ込まれそうだがそういう意味じゃない。
雑味が減るので、例えばボーカルと他の楽器の分離なんてのが一段良くなる。
大変クリアーなのだ。
さすが今の時代のML針?
トレース能力も抜群…と言いたいが皆さんお分かりの通り盤のごみも丁寧に拾う。
このあたりが痛しかゆしなのだが、そもそもレコードというのは針を換えると
当初どうしてもそういう事になるものなので暫くは仕方ない。
8月5日
なんとなく毎年報告しないといけない気がしているのは
多分私だけ。
町内会のイベントのPA稼業。
ほぼ、仕事である。
炎天下の仕込みから始まって修了まで7時間。
何やかやで午前様になって翌日普通に仕事。
こんな時は土日休みの職種が本当に羨ましくなるが仕方ない。
催し自体は無事終わって目出度し目出度し。
機材も昨年手を入れておいたからほぼノートラブル。
ただ、持ち込まれる音源は様々で事前チェックは不可能。
CD-Rで一瞬ひやっとしたことがあった。
この種の危機は避ける事が出来ない。
そう考えるとやっぱりアナログカセットは実に安全なのである。
いっそのことカセットに統一して欲しいのだが、
それもまた日現実的な話しだ。
8月6日
VM540MLの音のお話しに戻る。
とにかく破綻しない。
破綻しない事を目的に作られたカートリッジではあるまいか?と思いたくなる。
そこが癪に障るが安心しきって音楽に浸れて文句を言う当方がおかしいのである。
スクラッチノイズを聴くと、より一層性格がよくわかる。
やり過ごすのが上手なのだ。
障害物と対決したりしない。
段差など無かったの如き走りをする。
乗った事は無いがジャガーのサスペンションってこんな感じなんじゃない?
と思ってしまう。
さすが新設計のカートリッジというべきなのか。あるいは新品カートリッジとは
こういう性能を持っているものなのか?
多分両者だと思う。
ま、実は新品だと良いのだというのは当たり前だが認めたく無い部分でもある。
正直、カートリッジというのは消耗品の一種であり、使わなくても自然劣化する。
車やバイクのタイヤと同じなのだ。
本当は二年か三年に一度、新しい物に取り換えた方が良い。
昔々はそんな事がまだ現実的だった。商品がリリースされていたからだ。
今もそうすれば良いという事になるが、カートリッジも交換針もお安くは無くなった。
後生大事にすり減ったタイヤを使わざるを得ないという現実的事情がある。
だから新品は良いなんて認めたく無い。
でも、認めるのが正しいのじゃ。
8月8日
さてさて、テクニカのVMは針のバリエーションが豊富。
更に言うと旧ボディーに現行の針を挿すことも可能。
もちろんその逆もオーケー。
となると、そりゃどうしても試したく成ろうというものでやってみました
禁断のスワッピング?
まずはAT-150EaボディにVM540ML針。
*金色ボディは150の証。
交換針ユニットが赤いのは540ML。
旧150時代にも150MLXというのがあったのだが新しいML針。それが150のメタルボディに刺さるとどうなる?
まずトレース能力なのだが、これは当然というべきか540MLと同じになる。
驚くべき性能と言って良い。
そして音だが、これは良くも悪くも一味異なるものになる。
…と言いたいのだが、今回の場合540MLの針の支配力の方が強くて
150ボディだから云々というのがはっきり言えない。
しかし逆に540ボディに150Ea針だと、これまた
実に150っぽい音になるのも事実。
*これが本来の組み合わせ。
ちゃんと記録、記憶していなと終いにわけがわからなくなるぞよ。
ま、針先だけでなく150Eaの針はベリリウムテーパーカンチレバーということで
そこからして違うのであるから双方音が違って当たり前。
まあ、一つ言えるのは旧150系をお持ちで針で悩んでいる方がいたら
素直に新シリーズの交換針を買って挿した方が良いということ。
出来ればボディごと買って色々楽しむと更にお買い得な事は間違いないだろう。
しかしML針恐るべしであった。
8月13日
オーディオショップ訪問。
なんと…
よっしーが珍しい…
ま、当然自分の意思でそんな事をするはずがない。
では、なぜ?
実は玄関開けたらkoyamaさんが立っていたので…
というのは半分冗談なのだが、koyamaさんがいらしたのは事実。
そして今回の案件はかなり突然決まったのだった。
まあ、大人の遊びなんてのはよっぽど念入りに予定を立てるか、
あるいは今回みたいに急襲奇襲でないと上手くいかない。
奇跡のようなタイミングで同伴成立。
お目当てはSB-M10000。
説明不要だろう。テクニクス20世紀最後のフラッグシップスピーカーだ。
重量160kg/1本。ただ者じゃない。
お値段ペアで460万円。
受注生産で、そもそもがそんなに数が出ていないというおまけ付き。
表から見るとユニットは四発なのだが実際には8ユニット。
ドライブするウーファーは内包され、表にある(と言っても写真ではわかりにくい)
パッシブラジエターを動かすという仕掛け。
実際にはそんな単純なもんじゃないのだが割愛。
ただ、やっぱりドライブするアンプは選ぶ訳で
こちらではモノブロックのパワーアンプが宛がわれていた。
やろうと思えばバイアンプはもちろん、4チャンネルマルチアンプも可能な仕様。
さて、音だが超優等生的。これぞ正統派と言えるものだった。
実に真面目。
これはスピーカーが、アンプが、というのはもちろんあるが
ショップのオーナーさんの性格が乗り移ったかというのが僕の想像。
ま、一流ショップの音に僕が感想を述べるなんてのは
恐れ多い。
しかし面白かったというかkoyamaさんと車に乗ってオーディオ巡礼をすると言えば
GWで、しかも西の方角と最近は決まっているものだから
こんな時期にいつもと違う方角を走っていると調子が狂って?しまう。
いやはや、オーディオ珍道中番外編というところか。
どかんと食べて、途中何度も寝落ちするよっしーを携えてkoyamaさんは運転を続ける。
雷鳴、ゲリラ豪雨と盛りだくさんの帰路。
最後は拙宅でプチオフ会となってお開き。
テクニカVM540MLだがkoyamaさんからも合格点を頂けた様で一安心。
って、察しの良い方達は今回のVMがどうしてよっしーの手元に来たか
とっくに見抜かれていることだろう。
やはり技術の進歩とか性能進化というのは絶対にあって、
他のMMはもう要らないかも?と内心思う二人なのであった。
8月14日
VM-540MLの歪感ゼロの世界に浸りつつ
こんな組み合わせも聴いてみる。
もちろん歪んでいる訳じゃないけど、これはやっぱり大事な世界だと思った。
何かを訴えかけようとする。そこが可愛い。
YSA-2に、今付いているのはAT-33E初代なので、上と下に
ちょっとアクセントの付いた音なのだが、適音量再生の場合は
それも、あって悪くない演出だ。
8月15日
特にこの方のファンという訳でも無いし
このアルバムに執着がある訳ではない。
ただ、CD、ハイレゾ、アナログと三種揃っているのが今のところ
これしかないのだ。
先日アナログ盤を入手して鳴らしたら、これがなかなか良い音だったので
CDを引っ張り出して聴いてみた。
すると、ちょっとがっかりな音だった。
繰り返し言っているが僕はアナログ党でもなければデジタル党でもない。
更に言うとマドンナはビックな人だから、
CDもリマスターだなんだと出ているのではないか?
僕はたまたま手に当たったCDを聴いているだけの無精者だ。
ただ、随分な音の違いで、今回の限りにおいては
CDを聴くのは辛いな、という感じだったということ。
それで止めておくつもりだったのだが、休眠させていたT-4070+NASを
悪戯に復帰させたものだから唯一に近いハイレゾ音源のTRUE BLUEを聴いてみるのは
自然な流れ。
途中ファームウエアのアップデートなんかあったりして
いい加減投げやりな気持ちになったが音を聴いてびっくり。
これはあまりに良い音だ。
ちょっと暴れん坊でやんちゃな楽しさでアナログ。
一方のハイレゾは、やっぱり正確無比。
抜群の安定感で、何故だか奥行き感みたいなのが
素晴らしい。
やっぱり時代はハイレゾなのかもしれない。
8月16日
未だ暑い。
暑いのだが着実に秋が近づいているのも確か。
色々あっても大自然の営みは、人間の小賢しいご都合やらなにやらに
一切関係なく進んでいくものだと改めて思う。
8月も半ば過ぎると、どこか寂しい感じが漂ってくる。
昔、夏がもっともっと好きだった頃、
例えば学校のプールで水中から顔を出した時に
夏色の筈の空のどこかに秋を感じたりして、
とてつもなく悲しい気持ちになったりしたのを鮮明に覚えている。
、ま、しかしだからと言ってストーブに火を入れるには
ちと早すぎるのは、これまた言うまでもないのだが…
8月18日
テクニクスSE-A3。
1979年末発売。
ニュークラスA採用アンプの初号機。
つまり疑似A級アンプのはしりという事になる。
その他技術的特徴が大変多いアンプだが多すぎて書く気になれない。
その辺は検索して貰えれば今の時代すぐわかるので割愛。
それより何より、重量35.2Kg。
430W×208H×507Dという”体格”に注目。
実に重い。搬入は二人掛だった。
幅は430とラックに収めやすい物になっているが、そのしわ寄せ?が
高さと奥行きに来た。
なにより奥行き50センチ超えは凄いの一言。
普通のラックに面一で入れたとしたらお尻はかなり飛び出す。
悪戯に大きくした。この寸法比にした、なんて事は無くて
高さはパーツのサイズで。奥行きは理想的信号経路を追いかけたらこうなったと
思った方が良い。
価格は当時30万円だが内容からしたらダンピングと訴えられそうだ。
ペアとなるプリと合わせてジャスト50万を想定したのだろう。
今回はラックには入れなかった。入れる余裕も無かったし、発熱を考えると入れなくて正解。
理屈はさておきこの辺で音を出そう。
8月20日
理屈はさておきこの辺で音を出そう。
プリはC-2X。ハイレゾはT-4070経由。CDはDV-AX10。
アナログはHX-10000を経由。プレーヤーはMU-41プラッター+PX-E860+EPA-100と
MU-1800+YSA-2を主に使用。
要するに最近使っている機器の中でHMA-9500とSE-A3を入れ替えた形。
これでG7の音はどうなる?
想像はした訳だが、これは猛烈にスピーカーが良く鳴る。
印象的なのは低音。
どっと出て、ドンと止まる。しかも下の下までよく伸びている。
これは強烈。優等生の皮を被った暴力団?
それでいて全域に渡って繊細でビューティフルに鳴らすあたり、さすがテクニクスである。
噂では中高域にメリハリ付き過ぎという説もあったが杞憂に終わったというか
むしろ繊細に鳴る感じ。
このアンプ、設計者が低音担当、中音担当、高音担当と三人居て、最後に協議で音決めしたのじゃ
あるまいか?と思ってしまったほど。
とにかく猛烈なドライブ力を持ち合わせたアンプであること間違いなし。
ステレオ機でこのサイズ、この重量というのは一つの限界で、ここから先は
モノラルアンプ×2に行くしかない気がした。
ただし発熱も消費電力も半端ないので、使うには気合が要るのは確か。
最後にルックスだが、まず色が良い。やや茶色がかった黒。
メーターは切り替え無しで全帯域を表示出来るもので便利。
面白いのが、これだけのアンプのフロントパネルにヘッドフォン端子があること(笑)
これは営業政策上必要だったのか。お陰でスピーカーOFFスイッチもあるし
スピーカーはA、B、A+Bとフロントで切り替えられる。
また、リアに、だがボリュームが付いているのも使い勝手を考えると親切。
このあたりが大手家電メーカーならではの製品ということにもなろう。
8月22日
…と、例によってわかったような事を書いた。
もちろん大きく外してはいないと思うが本当の事は徹底的に付き合わないと
わからないかもしれない。
惚れて付き合わないとオーディオ機器も真価は発揮しない。
特にパワーアンプとスピーカーというのは組み合わせてしばらく鳴らしていると
スピーカーがそれに染まっていくもんで、それには数か月〜年単位で時間が掛かるのだ。
ちょっと話は逸れるが我が家のメインアンプは未だにHMA-9500系のまま。
他にもアンプは色々ある訳で、9500だけがアンプじゃあない。
ただ、何故だか気づくとこれに戻っているという不思議な存在だ。
多分相性が良いのだと思う。
完璧なオーディオ機器なんてものは存在しないので、このアンプにも弱点はある。
例えばG7を相手にした時、ウーファーの制動は未だ甘い気もする。
ただ、言い出すとキリが無い。最近ではその甘さも甘さとして味わうようにしている。
…なんて事を言えるほどよっしーも大人になったのね、というところだが
そういう風に捉える事も必要なのだ。これは真面目な話し。
8月23日
さて、白状するとSE-A3に足が生えて歩いて来る訳がないのであって
この日はlimitedさんをお招きした。
という事は当然針のお題がある。
それがこれ。
カモメと言えばカモメのジョナサン…ではなくてM44カモメである。
説明不要だと思うが永い歴史を持つM44の前期にはこのマークが刻まれていた。
このカモメマークが付いている44が良いのだというのは定説だが、今回改めてそれを
検証しようとした次第。
前情報では”凄い低音が出る”ということだった。
そうか、そういう物かと思いEPA-100に取り付けて拝聴。
すると…
おいおい、そりゃねーだろー、という音が出て愕然。
これは…
完璧である。
正に万能。
どんなソースでも軽くこなしてしまう。
もちろんクラシックもばっちりだ。
弦が荒れるなんて心配はない。
そして、やっぱりそれだけでは無い。秘技を持っていた。
恐ろしい、低音けたぐりである。
特にバスドラムの帯域の押しと深みが素晴らしい。
これはもう参った!の一言である。
ちなみによっしーは限定版であるとか特別板とかが苦手である。
そーゆーのはブルジョアの持ち物であって、いつも何か落ちていないかと
路面を見ながら歩いている僕みたいのには縁なき世界だと思っているからだ。
悔しいから後で手持ちのM44Gも試してみた。
これも悪くない、と思いたかったのだが44カモメの後で聴くと随分な差がある。
というか、これは違うカートリッジなのだな、とわかった。
44カモメが自分で丁寧に取ったお出しの世界だとすると無印44Gの方は人工調味料だ。
悔しいが仕方ない。違う物は違うのだ。
8月24日
次いでM75EM Type2。
これはカモメ…とかとは違うのだが、よっしー手持ちのM75MB Type2とは微妙に違うタイプ。
M75の場合はM44以上にというか比べ物にならない位にバリエーションが多くて
更に針先を換えられていたりすると、もう何が何だかわからなくなる。
選手交代、でこれも良い。
さすが44の上位機種という所を持ち合わせている。
充分な押し出しを持っているし繊細感というところで44を上回る気もする。
ただ、そもそも75というのは損な役回りのカートリッジで、44に行く人はいってしまうし
15シリーズに行く人はそっちへ行ってしまう。
今回も、確かに上位機種の音だな、と思わせつつ、トータルでのまとまりや味わいの統一感で
44カモメに譲るところがある。
別にこれで75の方が44より少しでもお安かったら、凄いハイCPとなるのだが
44よりは高いから立場がビミョーになるのだ。
どうも750と400の間に挟まれた550ccみたいな感じで可哀想である。
…と書いている傍から更によく鳴って来た。
実はOFF会の時は44カモメにやられて75を精査?するところまでは至らなかったのだ。
しかしそれでも検証不足とも思える。
更に針の差し替えまでやり始めると大変な事になるので
適度なところで留めておくのが吉。
8月25日
そして…
8月26日
オーディオテクニカは世界有数のカートリッジメーカーだ。
これに異論無し。
そしてVM型カートリッジは看板商品だ。
VMはMMの一種。MMではシュアーが特許を持っているため
それに抵触しない様にとVMが開発された。
1967年頃にVMの初号機AT-35Xが生まれる。
ここからローコスト版のVM3と高級タイプのVM35が生まれ、
35が発展してAT-15Sに代表される二桁シリーズが誕生した。
一般になじみがあるのは1970年代中盤に登場した、このAT-10〜20シリーズだろう。
実際僕もリアルに感じるのは、このシリーズ以降である。
時、正にオーディオブーム。
そんな時代に、テクニカのVMは10桁、100桁、更にその改良型、派生タイプと
山の様にリリースされて今日のVM7×、VM5×シリーズに至る。
昭和に始まり平成を走り抜けた由緒正しいMM型カートリッジ。それがテクニカのVMシリーズだ。
8月27日
AT-150MLX。
1997年末の発売という事でMCのAT-33PTGと同世代。
PTGが4万円なのに対し150MLXは2万8千円だった。かなりお買い得?
共に金蒸着のボロンカンチレバーでマイクロリニア針。
重さはPTGが6.8gに対してMLXは8.3g。
振り返るとこの頃はアナログ冬の時代で新製品は数える程。
この100シリーズもこの頃一時期150のみになりかけた記憶がある。
ところで、これ、先代の150Eaと比べて何が変わったのか?
まず、コイルがPCOCC製。
スタイラスはML形状。150Eaは1mm角柱楕円。
チタン製カリウム配合の硬質合成樹脂材使用のマグネモールド。
金蒸着ボロンカンチレバー。これは150Eaではベリリウムテーパー付き丸棒。
細かいところでは1kHzのインピーダンスがが2.1kΩ(2.3kΩ)
インダクタンス360mH(350mH)
コイルの直流抵抗610Ω(530Ω)
( )内が150Ea。
という事で外から見る限り違いは分かりにくいが細部に渡り色々変更されている。
当然音も違うと想像はするわけだが、これは想像以上の違いとなる。
忍法、クッションと同化の術。
8月28日
音だが大変カッチリしたもの。
ボディが、針が、というのもあるだろうがコイル等のPCOCC化。
これが音に影響しない訳がない。
はじけ飛ぶように音が出て来る。この点においてテクニカVM中最強かもしれない。
かと言って元気なだけのカートリッジではない。
間接音もたっぷり。ニュアンスが良く出るので驚く。
手持ちのAT-150EaもVM-540MLも霞む感じで、いきなり上がりに手を出した感じがある。
カートリッジも確かに進化している。
ただ、別の見方をするとその時代の音というのを背負っている部分もあって
150MLXはテクニカが20世紀VMの仕上げに作った入魂の一作で、
どこかでデジタルには負けません、と言っている感じがあるのが
興味深い。
さて、次にAT-150Eが控える。
8月29日
次にAT-150E。
aのつかないEだ。
1979年頃の製品で、永く続いた15シリーズからフルチェンジしたタイプである。
パラトライダルコイル採用。
これはセミトライダルと思えば良い。
LRのコイル間のシールドもこの頃初めて採用されている。
カンチレバーはベリリウム丸棒。
チップは0.12mm角。
15の時はチタンパイプで0.15角ダイヤ。
150E以降のこのシリーズは良くみないとEなのかEaなのかMLXなのかも見分けにくいのだが
つまり今日に至るまで続く原型が150Eの時に作られたとも言える。
音だが巷では元気系ということでEa以降は良いけどEはね、という見方も多い。
果たして本当か?
…
なるほど、傲然と迫るようなサウンド。
しかしニュアンスに欠けるなどという事も無いので、これしか無いと言われたら十分それで
やっていけると思う。
なによりも、誰がなんと言おうと我が道を進むという感じの堂々たるサウンドは貴重。
このあたりはベリリウム丸棒カンチレバーの威力か。
この後になると段々ベリリウムは使えなくなり(毒性の問題)ボロンが活躍するが
人によってはやっぱりベリリウムだぜ、という事もある。
チップは小さいほど良いのかというと、当然そんな事は無い。
何事も適量であるとか適材適所というのがあるので、軽く小さくすればよいってもんじゃない。
男子に例えると150EaやVM540MLは今時男子で、実によく女性のいう事に耳を傾けるタイプ。
150Eは'80年代までの男子というか、俺が俺がの自己主張が感じられるタイプ。
嫌なら聴くな、とカートリッジが語りかけるが如くだ。
ML針では無いがトレース能力もばっちり。
テクニカのカートリッジは本当に優秀。
8月30日
ここでちょっくら耳をリセットという意味も含めて手持ちの
AT-150Eaを使ってみる。
a無しのAT-150Eとの対比では大人しく感じる。
AT-150Eの跡継ぎとしてEを少し落ち着かせて、文字通りアダルト化したと見られる。
万能で無難な感じはAT-150Eaの方にあるが
150Eの割り切ったエネルギッシュさにも大変な魅力がある。
ベリリウム丸棒VSテーパー付きボロンの違いなんてのもあるが
その時はその時の音作りというのがあると思う。
次いで逆進化ということでAT-15Eaを引っ張り出した。
遡って1977年頃のリリースだ。
これもAT-15Eという先代がいるが聴いたことは無い。ただ、音は相当異なるようだ。
僕がこれを新品で買ったのは1993年頃の事だし、
その後もかなりの長きに渡って手には入ったようだから
大変なロングセラー機だ。
しかし今となるといかにせん古臭い音がするだろうと思いながら針を降ろす。
すると、確かにその後のモデルを聴いた後ではソフトフォーカスな感じに聴こえるのは確か。
当時から豊かな低音で知られるモデルだが、AT-150Eの直後だと
量ばかりでちょっとたるんだ下っ腹の様にも思う。
…なのだが、聴き続けていると、これはこれで良いのだ。
しみじみと問いかけて来るような味わいはその後のタイプでは聴けない?
線の太さもツボに嵌れば代えがたい。
未だに15Eaが最高と言って使い続けている人も居るようだが
その理由がわかる気がした。
8月31日
15、20とあれば20の方が上位機種と相場は決まっている。
初代a無しの15E達の時代からAT-20は存在した。
正式にはAT-20SL。
AT-15Saの中で100個から200個に一個出て来る、特に良い方にばらついた個体を
再調整、エージングして仕上げたものだった。
AT-15Saが25.000円だったのに対し37.000円もしたのだからスペシャル度がわかろうというもの。
それらは1974年頃の製品だったのだが1978年、しばらくぶりに2×品番復活。
それがAT-25であり23であり、また24であった。