4月1日



リニアトラックな日々は続く。


4月2日

繰り返しになるがリニアトラッキングプレーヤーは
日本では定着しなかった。

'77年ヤマハPX-1登場。翌年パイオニアPL-L1が追撃。
'79年ヤマハも同じ価格帯でPX-2を。更に下位機種PX-3を発売。
'80年ダイヤトーンLT-1発売。

他にも色々あったが定着はせず、短期間で消えて
オーソドックスなスイングアームに回帰する。

リニアにはメリットもあるがデメリットもある。

可動式アームはトラブルもついて回る。
カートリッジも若干制約を受ける。

更に、トラッキングエラーはそんなに問題ではないと
いう説も浮上するとリニアの面目まるつぶれ?だ。

(リニアに熱心だったヤマハが、後年GTプレーヤーの
オプションとしてオフセット角ゼロのピュアストレートアーム
YSA-2をリリースしたのは興味深い話しだ)

しかし'80年代に入り、リニアは新しい活路を見いだす。
テクニクスSL-10から始まった、
ジャケットサイズプレーヤー達は軒並みリニアを採用する。


もちろん、それは音質というよりスペースファクターという面で
メリットが大きかったからなのだが、それまで奥行き問題で敬遠され勝ちだった
リニアが、アナログプレーヤーのコンパクト化に貢献というのも
幾分皮肉な話しである。

テクニクスSL-10は、なんとダストカバー(というか蓋)
リニアトラッキング式のアームを組み込んでしまった。

これはお見事としか言いようがない。

デザインにも優れ、なによりコンセプトに優れていたので
SL-10はオーディオの歴史にいつまでも残る一台となった。

*余談だが「ウチには芝浦にソニーという開発室がある」と
平然と言い放ち、“マネシタ電機”と言われようななにしようが
一向に気にしない姿勢をとり続ける松下が
レコードプレーヤーのコンパクト化だけは
ソニーを差し置いて先鞭をつけ、リードし続けた。
これはなぜそうなったのか?
今持って不思議だが、それより何より言えるのは
経営上の効率や手腕はさておいて考えると
やはり歴史に残るのはオリジネーターであり
後追いで幾ら稼いでも、利益こそ得られども尊敬は得られないのだとわかる。

…もっとも、企業に取っては利益や効率こそが大事なのであって
幾ら崇められても儲からなきゃ意味はないけど。

まあ何でも良いが'80年代に入ってリニアは別の活路を見いだしたというお話し。



4月3日

テクニクスはSL-10のヒットに気をよくして、幾つものバリエーションを作った。
SL-7もあったし5もあった。
そしてジャストジャケットサイズではない流派も生んだ。
その一つが、このSL-QL1だったりする。
1980年頃の発売だから時期的にはSL-10とそう変わらない。
価格は79,800円
SL-10が10万円だったから2万円くらい安い。



ただ、改めて内容を見るとSL-10の方が割安な気もするのだが
ジャケットサイズという呪縛から解き放たれた分QL1の方が設計に余裕は感じたりする。

なお、QL1にはDL1という姉妹機があり、こちらは59.800円
クオーツロックが採用されていないのが主な違いで、あるいは思い切ってこっちを選んだ方が
お買い得感は増す?
って今頃書いてもどーにもならないが。

それにしても、こうやって改めて見つめてみるとQL1ってどうして登場したんだろう?と
多少疑問に思える。
なぜって価格的にはSL-7が7万円で出る位だから、SL-10では高いと言う人は
そっちを選べば良いし…
(註:SL-7の方がQL1より若干後の発売です)

結局SL-10系と違い、QL1やDL1にはジャスト・コンポサイズという所に意義があったのだと思う。
横幅は430oと一般的なコンポーネントと重ねた時にしっくり来るサイズなのだ。



それでいてアームは蓋の側に付いているのでQL1やDL1はターンテーブルの左右が奇妙にスッキリしているという
独特のデザインになっている。
このあたりは好みが別れるところだろうがメンテナンスなど考えるとQL1やDL1の方が断然楽であるのは確か。

メンテの話しが出たが、久々に稼働させようとしたらQL1は見事にストライキを起こした。
最初の1分くらいは演奏するが、その先にアームが進まない。
これはリニアトラッキングアームが動いていない証拠だ。

無理もない。待機の時間が長かった。


4月4日

テクニクスのリニアのメンテ記事は多いので、だいたいの想像は付く。

大抵がモーターからアームドライブギアに行くベルトの伸び。これはゴム部品故の宿命。
更にそのギアのグリス固着などが見受けられる。

いずれも対策は大したことがないのだが、それよりその前に外さなければならない部品が多く、
しかもコンパクトな設計故の難しさがついて回る。
そっちの方が手こずる部分となる。

さて、例によって海外サイトからマニュアルをダウンロード。
プリントアウトして事前学習をする。

その上で、いざ、分解。

繰り返しになるがQL1の場合、ジャストジャケットサイズとは違い設計に余裕がある。
だからちょっとだけ楽。

それでも作業は慎重にする必要がある。



お約束のモーター→アームドライブギアの図。

ゴムベルトは手持ちの適当なのと交換するから良いのだが、
一旦ギアのグリスを拭き取る
(特にグリス硬化は感じなかったが、この際やっといて無駄はない)

本当はパーツクリーナーなど使うところだが手持ちが無かったので
CRC556を綿棒に染み込ませて作業。
余談だが今回たまたま使った“化粧用”綿棒はとがっていて、この作業には大変良かった。
あと、使ったのは爪楊枝
とにかくチマチマやることだ。



綺麗になったところで新しいグリス塗布。
これも超微量でよい、というかとにかく綿棒などで平らにならして上げるのが大事。
なぜかというと、このギアーと先のゴムベルトのクリアランスがとても狭い

下手にグリスの盛りが良いと、あっという間にベルトにもグリスがついてしまう。
大盛りサービスがいつも好まれるとは限らないのだ。

ここが終わったら次に移動するアームの乗っかるシャフトのグリスアップ。



こちらもCRCを塗布した綿棒などで先にクリーニング。
次にモリブデングリスを、塗布。
ここは多少盛りが良くても、左右に動くアームが勝手に整地をしてくれるのだが
あんまり盛りすぎない方が良いと思う。

以上!

お約束のお手入れが終わり、いざレコードを掛けてみると…

おいおい!なんにも治っていないじゃないか!!!

…さすがにブルーになる。

しかしおかしい?
ダストカバーをオープン状態にして、更にプレーヤーを騙して(といっても大したことじゃない)
ターンテーブルが回るようにしてみる。

ん?

こりゃベルトスリップとかいう前にプーリーが回転しようとしていない。

ということは…

なんと!

アーム系をドライブするモーター自体がまるで回転していない…

こんな事が起こりえるのか?



4月5日

こんな事が起こりえるのか?

コネクターを抜き差ししたりしてみるも変わらず。
電子系の故障だと手に負えない…

とーってもブルーになりながら、いじいじとモーターを触る。

?なんちゅーか、ぜんぜんモーターシャフトが回らないじゃないか。

モーターシャフトの固着なんてあり得る?

と、お?なにが??

なにが起きたのか、やおらモーターシャフトの固定感が無くなり、回る回る回るではないか???

そーです。突然モータがった????

理由は知りません。
ただ、とにかく固着していたかのようなモーターが突然回転を始めたのです。

ここでQL1は復活決定。

リニアトラッキングプレーヤーは何事も無かったかの様に演奏を始めたのだ。



しかし、この操作感は最高。
PX-2を使った後にQL1を使うと軽快感最高。
アームはシューっと動いて、サラッと着地。
この時はリレーが切れているからプチっなんて音もしない。

アームが降りると音楽信号が流れる仕組みなので、まるでCDプレーヤーのように音楽が始まる。

オートアップ、リターンも完璧。
サイレント、スムーズ、スピーディー。
さすが世界の松下。素晴らしい。


音だが、こちらも素晴らしい。
こんな物が8万円弱で売られていたなんて信じがたい。

どういう訳かステレオイメージはPX-2より上?
PX-2はもう少し追い込む必要がありそうだ。

しかし、それはちょっと先の課題にして次に進もう。


4月6日

SL-7登場。

ジャケットサイズプレーヤーとしてはSL-10の一つ下位に位置づけられるもの。
しかし音は遜色ないと思う。(SL-10を拙宅で聞いたことはないのだが)
どちらかというとカートリッジ次第ではないかと思う。

…と、ここまで書き進んだところで一回話題を変える。

SL-QL1にしてもSL-7にしても、それぞれよっしーの恩人から譲渡頂いた物。
正確にいうとプレゼントされた物だ。

よっしーの部屋が始まって間もなく丸12年で、いよいよ13年目に入る。
12年と言えば干支が一回りするだけのスパンだ。

一体その間どれだけの出会いがあっただろう?
考えると凄いものがある。

2000年頃は、もうネット黎明期とはいえないのだろうが、今を基準にすれば黎明期と言ったって文句あるまい。
この頃インターネットはブレイク済みで、オーディオ系のサイトも多数生まれた。

その数も、今から見ればたかが知れたものだったかも知れないが、世の中には自分の他にも物好きがこんなに(失礼!)
居る事を知って互いに喜び勇んだものだ。

まだまだモデムを使ってダイヤルアップで、“ピーヒャラヒャラ、ピボピボ、ピ〜”の時代で、それこそテレホーダイなんてものに
加入して、なるべく23時を過ぎるのを待ってアクセス、なんてしていたのだが、夜な夜な各掲示板には
マニアが集って、それはそれは楽しい時間だったと記憶する。

よっしーの部屋にも、お陰様で多数の方がお立ち寄り下さり(掲示板のお話し)出会いはもの凄い勢いで加速した。

オフ会もあったのだが、それより何よりよっしーの部屋を加速してくれたのは、色々な方達から貸与される品々だったと思う。

それを全部列挙するのは到底不可能。

お礼を言う間もないという感じで、よっしーは何をしていたのかというと、それらの品々の感想記を日記と称して書きまくっていたのだった。

今でも思うのだが、恵まれすぎているというか過分というか、こんなに良くして貰って良いのだろうかとその時々に感じていた。
しかし、多分お礼は行き届いていないと思う。これについては日々振り返って申し訳なく思うところ。

でも、当時から、そして今も変わらず思っているのは、よっしーの場合、とにかく与えられた品々を使い、聴き、
それを文章にしてアップすることが定めというか何というか、結局自分はその役がはまり役なのではあるまいかと言うことなのだ。

とにかく書く。それしか能がない。
それがポジションだとしたら、その役割を全うするしかないとある時悟った感がある。

ただしかし、例えば今回登場のSL-QL1にしてもSL-7にしても、その時万全の拝聴が出来ていたかというと大いに疑問。
何事にも時間が掛かるものみたいだ。

また、時間が経過したが故の不具合も発生するのだが、これの解決記も、それはそれで意義のあるものと言うことに一応して、
ここ数日の日記を書いているのでありました。

PX-2も、考えてみれば恩のあるピアノショップの社長さんから頂いた物だ。
その社長さんは残念ながら故人となられたが、後を継がれたご子息達とは今でも仕事で繋がっている。合掌。


4月7日

それにしても一口に12年というけど、結構長いなー。

ギリギリ30代だったよっしーも50歳になった。

ということはご来訪の皆様も例外なく12歳歳を取ったということですよ。

40歳の頃は夜も元気だったかもしれないが、50の声を聞くとどうだろうか?

皆さん視力は大丈夫ですか?
よっしーはとっくに遠近両用眼鏡ですよ。

そして職場が変わったりとか、身の回りに変化があったりとか、様々なのではあるまいか。

一頃よくやり取りさせて頂いていた方でも音信不通になっている場合がある。
というかたくさんある。

交流というのもなかなかコンスタントにいかないものだ。

とりあえず、僕はここに居る
もしかすると、時々立ち寄っては、“こいつは変わらんなー”と笑って帰っているのかもしれないし、
それだったら嬉しい。

って、ことで明日で丸12年なので12年に一回くらいは、と過去を振り返ってみたのだった。



さて、慣れないことを書くと脳みそが疲れる。
SL-7のお話しをしよう。結局そういう事を書いているのが一番性に合っている。

SL-7。
これもまた久々に引っ張り出したらストライキだ。無理もない。
実は先にSL-QL1を弄ったのは訳がある。つまり一種の予行演習だったのだ。
なぜQL1が先かというと、作りに余裕があると思ったからだ。
ジャケットサイズのSL-7の方が、弄るのにもシビアだ。

SL-7の分解には手こずるに違いない…

筈だったが、結論を言うとあっさり分解出来てしまった。



理由は2つ。
一つは先にSL-QL1を分解したのが効いている。
そしてもう一つ。
このSL-7過去に最低一度は分解されている。

なぜ判るかというと、隠れているネジを外さずに力業で分解しようとした結果
破損したと思われる箇所が見つかったのと、
ネジに付属しているゴムのワッシャーが一つを除いて跡形もなく無くなっていたからだ。

ゴムワッシャーについては仕方ない。あれは経年変化でどのみち朽ち果ててしまう類のものだし
無くてもいきなり困りはしない。
隠れたネジが見つからなかったのも責められない。
よっしーはたまたまSL-7の分解について詳しく書かれているサイトを見ていたのと
海外サイトからサービスマニュアルを手に入れていたから判っていただけだ。



まあ何でもよろしい。お陰でカバー類はあっさり外れてしまった。

だがしかし、これがまたQL1同様、ウンともスンとも動こうとしない。

でも、経験は積むものだ。QL1での体験があったから焦らない。
その内モーターが回り始めた。
その間に古いグリスの除去とグリスアップはちゃっかりやってしまった。

回る回る回ります。SL-7もしっかり回る。

アンプの傍に運ぶ時の、みっしりとした重量感はなかなかのもの。
コンパクトサイズだから密度を感じる。

で、音出し、なのだが一聴して驚いた。




4月8日

で、音出し、なのだが一聴して驚いた。
もちろんQL1同様の定位の良さ、安定感も素晴らしいのだが
細かいニュアンスの表現において随分差が付く。

QL1が悪いのではない。カートリッジが違うのだ。
SL-7の方にはP-202が付いている。
これが元々QL1についていた物。SL-7には ナガオカのC-502MP=新品が付いていた
というか恩師がわざわざ付けて譲渡して下さった物で、今はこちらがQL1に付いている。

まあP-202は細かい所を徹底的に歌い分ける。お見事。松下のMMをなめてはいけない。
(誰もなめていない?)
しかし心落ち着く感じはC-502MPにある。ケースバイケース。一長一短だろう。

今さら、だがこの種のプレーヤーにはT4Pのカートリッジが使われている。
というかそれしか使えない。

T4Pも松下が主導した規格の筈だが、本家もとっくに生産をやめてしまっている。
ネジ一本外すだけでプラグイン感覚で抜き差しが可能。
針圧一定で調整不要。
(プレーヤー側では多少変化させられる)
案外普及せずに終わった感があるが、これはこの後すぐにCDが登場してしまったから
という事情もある。

これしか使えないというのは、大きな制約といえば言えるのだが、
限られた枠の中で物を捜したり遊んだりするのは楽しみでもあろう。

ただ、本当に新品は手に入りにくいみたいだ。
頼みの綱はeBayか。

*今日で13年目に入った。
とりあえず、僕はここに居る


4月10日



の季節だし、一回休み


4月12日

カートリッジによる音の違いの話しも面白いのだが、とりあえずやめておく。
SL-QL1にしてもSL-7にしても立派に高音質なのだが、今はポンとレコードを置いて
カバーを閉めてスタートスイッチを押して出て来る音を楽しんでいる。

下手をすると隣室で別の事をしながら聴く。
馬鹿にしているのではない。むしろその方がこのプレーヤー達に対しては正しい事をしているような
気がするからだ。

イージーハンドリングの部分を楽しむのが本当だろう。

しかし、本当によく考えて作られている。
SL-7はもちろんなのだが、QL1も奥行きを巧に抑えている。
ターンテーブルがギリギリのところまで迫っているのが写真でわかるだろう。



そしてダストカバーの開き方が絶妙。
これも写真でわかると思うが、この構造のお陰でダストカバーを全開にしても
後の壁に当たるなどということはない。



いかに省スペースという事を真剣に考えていたかわかる。
そしてその浅い奥行きを実現するのにリニアトラッキングアームが一役買っているところが愉快だ。
(それまでリニアは奥行きが深くなると相場が決まっていたのだから)

逆に考えると、レコードプレーヤーというのはとにかく場所を取って仕方ないものだということだ。


4月15日

ちょうどこの頃、ミニコンポのブームがあった。



各メーカー右へならえで、まあ節操がないというか
出すわ出すわ…

と憎まれ口はさておいて、写真はその中の一つ
ダイヤトーンのM01シリーズ。

カセットテープの大きさを思い浮かべると
いかに小さく作られているかわかるだろう。

ご丁寧にセパレートアンプですぜ。

これは一例で、本当に各社が似たような物を出していた。



しかし、この写真を見ればわかるとおり、
他のパーツ(スピーカーを含める)が幾らコンパクトに出来ても
アナログプレーヤーだけは大きい。

ジャケットサイズでも、まだ大きいと思ってしまう。

良い音が聴きたい、と頑張った'70年代だが
その終わり頃になると、
それも大事だが小さくあって欲しい。
場所を取って欲しくない。
お洒落であって欲しいと次のリクエストが始まっている。

その声に答えるべく頑張ったメーカーの一つが松下=テクニクスだったのだ。

ただ、もちろんテクニクスだけが頑張った訳ではない。


4月16日

アンプもチューナーも小さく出来る。カセットも然り。
スピーカーは元々ミニチュアが作られていた世界だ。

しかしレコードプレーヤーだけは依然小さく出来ない。

それに対する回答の一つがジャケットサイズプレーヤーであり、OL1の様なプレーヤーだったということだろう。

ジャケットサイズまで小さくされたら文句は言えない。
なにしろLPのジャケットだってその大きさがあるのだから。

しかし、これらの小さいプレーヤーを持ってしてもクリアー出来ない問題があった。

それは、相変わらずレコードプレーヤーの上には空間が必要だということだった。

ダストカバーを跳ね上げて、レコードをセットする為にある程度の空間が欲しい。
これを解決するのは難しい。

が、それをクリアーしたレコードプレーヤーがあった。

そう。パイオニアのPL-88(と、それに準ずるシリーズ)だ。



パイオニアPL-88F

このアナログプレーヤーは天板に物を置くことが出来る。
レコードは前面にスライドして出て来るトレーに載せて、また引っ込ませる事が可能。

要はCDプレーヤーやLDプレーヤーと同じ方式なのだが、アナログプレーヤーでそれをやった所が面白い。



トレイオープンボタンを押すと、ザーっという感じでターンテーブルアッシー及びそこに共に載るアームが
前に出て来る。
クローズボタンを押すと、またしてもザーっという感じでそれらは奥に引っ込んで行くのだ。
そしてアームがしずしずと奥から前に出て来る。
このアームがリニアでなくスイングアームなところが面白い。


4月18日

このアームがリニアでなくスイングアームなところが面白い。

パイオニアもリニアはやっていたのだから技術的には問題無かっただろう。

しかし、見てみるとわかるが、このプレーヤーのアームがリニアである必要はない。

そこで普通のスイングアーム。

ただ、このアームが待機する位置がの方というのが面白い。

もちろん考えてみれば当然で、そうしないとレコードの脱着だって出来ない。
普通のプレーヤーのように右に位置したらどうなるかというと、邪魔というかプレーヤー全体の
幅が広くなる可能性が高い。

そこで奥へ。

そしてこのアームは演奏モードに入ると一旦奥から普通の位置へとスーッと動いてきてから
やおら音溝に向かってダウンするのだ。

この一連の動きが実に優雅というかエレガントというか、テクニクスのリニアあたりとは対照的

エレガントと言ったが、よっしーはこのアームの動きを見るたびに、ステルス戦闘機を思い出す。
まるで存在しないかのごとく、どこからともなく現れる。
なんとも面白い。


4月20日

また、このプレーヤーは剛体である事でも知られる。
耐荷重40sとされているが嘘でも無さそうだ。

たとえばこのボンネット=天板+サイドパネル。

一見なんの変哲も無いが、実はこれ鉄である。
だから重い。実測2sはある。



肉厚が凄いし、構造的にもしっかりしている。



一般のCDプレーヤーやアンプの天板あたりとは比べようもない位立派なボンネットだ。

どうしてこうなるかと言えば、それはこのプレーヤーが一般のアナログプレーヤーと逆に
一番下に座して、上にアンプやチューナー、カセットデッキが載っても平気なように、
というコンセプトで作られているから。
故にこうなる。



底板も鉄板で頑強そう。
脚はシンプルなもの、というかお慰み程度にゴム脚が付いている。
コンプライアンスゼロの脚。

ハウリング対策はどうなる?と思うかも知れないが、内部でターンテーブル+トーンアームが
ついたボードはちゃんとインシュレーターのお世話になっている。

ターンテーブルを揺さぶればトーンアームも共に動く。
この感触はLP12辺りに似ている?


4月22日



ということで、これだけで充分凄いが、続けて凄いのがプログラム機能だ。

スイッチ一つで演奏可能というのはジャケットサイズプレーヤー達と一緒だが
PL-88Fでは曲間をサーチして、曲飛ばしなども出来るのだ。

カートリッジの付いている付近にセンサー、及びアームベース付近に付いているセンサー。
更にマイコンの恩恵があって実現している。

ということで見れば見るほどPL-88FというのはCDプレーヤー的なところを持ったアナログプレーヤー
という事が出来る。
ただ、トレイの動きにしてもアームの動きにしても大変エレガントな趣があり、
この辺りがやっぱりレコードプレーヤー的で
CDのスピーディーなアクセスと異なっているのが面白いのだ。

惜しむらくはリモコンが無いところで、それさえあれば完璧?だ?

ま、あんまり好きな事をほざいているとを投げられかねない。この辺でやめておこう。

しかし、この88Fのディスクトレーは格好良い。
よっしーはなんとなくだがレーザーアナログプレーヤーのエルプ辺りを思い出してしまう。
このディスクトレーのデザインに合わせた外観となっていたら、88Fの魅力も一層増したと思う。


4月24日

PL-88Fに搭載されているカートリッジはPC-41MCというもの。
型番からわかる通りMCなのだがMM入力で使える。
いわゆる高出力MCというヤツだ。

このプレーヤーを買う人がMC入力付きのアンプを持っているとは限らないので
メーカーとしてはMM、あるいはそれに準ずる物を宛わざるを得なくて
こうなっただと思うが、このMCなかなか楽しい音がする。

ピチピチパチパチというかどこか魚がはねる様な音だ。
そして低音はキュッと引き締まっている。

小粋、という表現がピッタリの一本で嵌ると楽しい。

振り返るとこのPL-88FSはKoyamaさん推薦で落札した物。
狙いはカートリッジ。

このPC-41MCを手に入れて試してみなさい、ということで
プレーヤーごとゲットしたのが本当のところ。

前年にPL-X7という小型機を拾って日記にアップしておいたら
すかさずKoyamaさんから突っ込みがあった。
付属のカートリッジはPC-31MCという物だが
これの上級機種の41MCが良い物だから
一度お試しを、という訳だ。

実はPC-31MCと41MCは針先が違うだけで
後は一緒(だと思う)。
そしてこのMCは針交換式なのだ。

だから、よっしーはPL-X7からPC-31MCを外して
41MCの針を移植。カートリッジ単体としても
楽しんだ。

31MCも41MCも爽やか系の音だが
31の方が41に比べるとややざらつく。
これは針先の違いだろう。
41になると、そのざらつきが取れて爽快そのもの。

それにしても、こんなカートリッジを知っているなんて…

Koyamaさん、恐るべし、と思ったのが昨日の事のようだ。


4月25日



スケルトン状態で申し訳なかったと後になって気付いたが
こちらPL-X7

扉のオープンはPL-88Fみたいにボタンで行うのとは違う。
ご覧のように手で開く。



せり出して来たトレーにレコードを載せるとこんな感じ。

この時アームはで待機。



演奏モードに入るとトレーが少しだけ奥に引っ込む。
アームは奥から手前右にスイングして来る。

この状態でレコードを演奏する。
PL-88のようにトレーが完全に引っ込むことはない。



この離れ業のお陰で、このプレーヤーはとにかく小さい

レコードジャケットの上に載せてみると
幅はLPジャケットと同じだが奥行きは遥かに浅いのがわかる。

奥行きわずかに20a
SL-7でも31a強はあるのだから10a以上小さい。

これにてパイオニアはテクニクスをサイズで抜き返した?

繰り返しになるがレコードプレーヤーというのは小さくし難い物だ。

それをここまでコンパクトにしてみせたのは凄い。
しかも上にアンプ類を載せても大丈夫と来ている。
(余談だがPL-X7の天板もPL-88同様強靱。
というかサイズが小さい分強度は上回っている)

これより小さい物としてテクニカのサウンドバーガーがあるが
据え置きのレコードプレーヤーとしてはこのPL-Xシリーズが最小というべきだろう。

ただ、に関してはPL-88やSL-7、同QL1には負ける。

何しろターンテーブルに載っているのはLPレコードの一部分なのだ。
これはやむを得まい。

とにかくここまで小さいレコードプレーヤーを作った。
しかもコンプスタイルの前面操作という点でオーディオ史に残って良い。


4月26日

ということでPX-2に端を発し、SL-QL1、SL-7、
PL-88FS、PL-X7と、ちょっと変わり種のプレーヤーが続いた。
(PX-2は変わり種とは言わないが)

共通して言えるのはいずれも'70年代末から'80年代初頭
CDプレーヤー登場直前に現れて、一時代を築いて去って行ったという点か。

どこかCDプレーヤー的。それでいてやっぱりアナログというところが面白い。

僕のように思春期、というか学生時代をアナログレコードと共に過ごした世代にとって
レコードというのは特別な意味のあるものだ。

個人的にはLPレコードがCDに比べて収納性が悪いとは思わない。

CDは確かに小さいのだがケースの厚み込みで考えると大して小さくない。
では、紙ジャケットにしてしまえば、というと案外不便だったりする。

とは言っても、やっぱりCD、というか12aディスクはメディアの王座にいる。
それをどうこう言う気もない。

ただ、例えばあの頃。PX-7なんか使って女の子なんかが
レコードを再生していたのかな?と想像するのは楽しい。

それにしてもみんなコンパクト化するのに腐心していたのだなー。

利便性追求型のプレーヤーの中に、テクニクスのリクエストがある。
これはレコードプレーヤーの音をFM波にして飛ばすというもの。
仮にラジカセでも良いから受信機があればそれでレコードが聴ける。

何が良いってレコードプレーヤーだけを他のコンポと切り離して置いても
大丈夫というところだろう。

逆に言えばそれだけレコードプレーヤーは邪魔っけだったのだ。

いずれにせよ、あの頃音楽は今よりも少しだけ大事にされていた気がする。
取り扱いが容易になれば粗末にされやすくなるのは世の常だ。

でも、それは世の流れだし、流れは変えられない。
そういうものなのである。


4月28日

さて、PX-2、SL-7、SL-QL1、PL-88FS、PL-X7と、
これらは過去の日記にも登場している物達。

ネタ切れで再登場?

そう思ってもらっても構わない。
個人的にはウルトラマンや仮面ライダーで
一度倒された怪獣や怪人が再生されてもう一回登板みたいなのと
どこか似ていると感じている。

が、まあ実際には一つの物の検証というのは
一筋縄では行かないと思うのが本当のところ。

時間を置いて再び三度振れてみると
昔わからなかったことがわかる。

そーゆーものだし、そんな悠長な事をやっていられるのが
個人サイトの良いところでは無いかと思う。

&もう一つ思うのが性能維持管理の難しさ。

PX-2、SL-7、SL-QL1と、今回引っ張り出して
色々分解することになった。

もちろんそんな事にならないのがベストだが
何しろ生産から30年くらい経っている物達だから
そうはいかない。

目に見えて壊れていなくても、手入れは必要なお年頃だ

特にリニアトラッキングプレーヤーみたいなのは
その傾向が強い。
この辺りが流行らなかった理由の一つなのだが
手入れを楽しむという観点からすればヒジョーに面白い教材とも言える。

そろそろこの項も締めくくりだが、書き残したことを二つ三つ。

1、オーディオ博物館などという事を夢想するが
本格的にやるなら保管庫があって各機器は適宜通電、
ローテーションで動かす必要があるということ。
それと空調完備にして上げないといけない。

2、SL-7は大丈夫だがSL-QL1のターンテーブルシート
膨れあがって、ひび割れて使い物にならなくなってしまった。
このシリーズではこの症状を発する物があると聞く。
どうも接着剤に問題がある個体があったようだ。
(ターンテーブルにシートが接着されている)

多分純正シートは手に入らないだろうが、
別のシートを貼るにしても上手くを空けないと
(ターンテーブル下にセンサーの発光部があり
その光の遮られ方でレコードサイズを検知している)
ならないのが面倒。

3、PL-88Fのメカアッシーのスライドが大変スローモー。
これは多分ドライブモーターとギアを繋ぐゴムベルトが伸びているのだと思う。
交換したいのだがこの部分へのアクセス方法が今ひとつ良くわからない
恐らくターンテーブル部分を分解する必要があるのだろう。
やっても良いが壊してもつまらない。
まあその内いつかやろう。


続きはこちらです

ひとつ前の日記に戻る

日記のMENUへ

表紙へ