10月4日
某ドフの、ジャンクが収められているケースの中に、それは居た。
他にも獲物に成りうる物はいくつかあったのだが
僕の目はそこに止まった。
お姉さんを呼んでケースを開けて貰ってご対面。
えー?なんじゃこりゃ?
え?ビクター?
てっきりテクニカの初期のMMと思っていたのだが…
10月5日
ビクターMD1004。
へー、と調べてみるとテクニカのAT6の亜種であることが判明。
テクニカのMM。
AT1に始まりAT3でブレイク。
AT6は、その更に進化系?
と思うと、案外そうでもないような。
どうもAT6というのは各社に供給して、
嫁いだ先のブランドで売られた?
女工哀史かああ野麦峠か、という…
いや、そこまでのことではないだろう。
改めて創成期のテクニカだがAT1の発売が1962年というから
よっしーとほぼ同じ歳。
現存していたら今年還暦のお祝いだ。
AT3もすぐ登場して、これがテクニカの出世作となるのだが
いずれにしても1960年代初頭の話しであり、かなり昔の製品である。
ちなみにAT3のスペックはというと…
出力電圧5mV
針圧1〜3,5g
直流抵抗450Ω
針先0,7mil
自重9,5g
垂直トラッキング角30°
そしてAT6のスペックもほぼこれに準じている。
やはり姉妹機種?と言いたいが、実際には並べて音を出してみないと
わからない。
ひとつ言えるのは、どうもAT3の方がスリムでスマートに見えるということ。
あるいは写真のせいか?
AT6は実物に目を向けると、なんともどんくさいデザインだ。
だが、当時はこんなもんだった。
カンチレバーも丈夫さを感じるもので後世のほそーいのなんかとは
雲泥の差である。
チップは0,7ミリ…は良いが、本当にチップが生きているか怪しい。
その怪しさはお店ではとうとう解決できず、えい、や、と家に持ち帰るのであるが…
10月6日
針先チップが生きているか?
接眼鏡を持ち歩くということを忘れていた今日この頃。
ドフの店先でああでもないこうでもないと
やっていてもお姉さんの迷惑になるだけだ。
何しろお値段税込み1,100円。
買って帰ろう。
だがしかし家に帰ってよく見てみても最初のうちは
本当によくわからない。
それだけ針先が汚れている。
実際に汚れているのはチップの土台の部分なのだが
そこから汚れが伸びて?先端まで迫っている。
メラミンスポンジでゴショゴショやっているうちに
どうやら先端の輝きだけは確認できたのでよしとする。
適当なシェルにマウントして、さっさと演奏へ。
プレーヤーはPX2で針圧は取りあえず3gとする。
アンプは907MOS。
何も考えず針をおろしてしまう。
この時期待は正直ゼロである。
で…
10月7日
音が出た途端ぎょっとした。
え?
というかそもそも針先チップが本当に存在するかどうか
疑わしかったので、「あ、本当に大丈夫だったんだ」というのがひとつ。
そしてダンパーだってどうなのよ?って思っていたから
その点でも安堵。
だがしかし、それでぎょっとしたのではない。
「なんてイイ音なんだ?」
驚いては失礼だろうがやっぱり驚く。
なにしろ還暦級のお品物のはずだ。
何かの間違いかと思ってしばらく聴き続けるが
誤りではない。
とてもよい。
面倒なので細かいことは言いたくない。
一言で言ってしまうと音が活きている。
あらゆるレコードを、このカートリッジで聞き直してみたい。
そんな気持ちにさせる。
10月10日
大昔(50年以上前の物なので、こう呼んでも良いでしょう)
の物が良い音を出して驚く。
ある意味失礼なことである。
なんでそんなことを思ってしまうのかというと
後から作られるものの方が進化していると
ほぼ条件反射的に考えてしまう癖がついているからだろう。
しかし昔の物が全部だめ、ではないことも事実。
この話になると必ずと言ってよいほど引用してしまうのが
長岡先生のコラム、「いい加減にします」にあった、
「本当に進化したのか」、だ。
そこで取り上げられているのは、このページ的には毎度おなじみ?
コンダクトYC-05Eで、”すべての面で最高とは言わない。
しかしある面では最新カートリッジを上回っているのである”とされ、
”このカートリッジを聴くと、オーディオとはなんなのか、
オーディオエンジニアはこの15年何をしてきたのかと
非常にむなしい思いに駆られる”と締めくくられている。
まあそこまでの事では無いにしても、
結構ショックを、今回僕は受けている。
オーディオは1960年代には完成していたとは
たまに聞く話ではある。
それがよく名前を聞く海外の名器だったりすると
頷きやすいのだが今回みたいなケースだと説明が難しいというか
怪しまれる。
オーディオはこの60年、スペック競争に明け暮れたり
(悪いことではない)素材競争に力を入れたりと
色々やったが、競争自体が目的みたいなところが
あったのも確か。
それで着地点を間違えなければ良かったが
果たして…
どうにもこうにもこのMD-1004(AT6)を
前にすると色々なことを考えるなと言われても
考えてしまうのだ。
いかにも重いボディ。
絶対にハイコンと言えない見た目。
ごっついカンチレバー。
しかし…なのである。
10月11日
健康とその他の趣味の充足を兼ねて?
サイクリング。
手ぶらで帰れないのか、と言われそうだが
PL-X9をまたしてもゲット。
昨年12月にもどちらかで同機種を入手しているのに、だ。
電源入りません、で、きっと嘘だと思ったら本当に入らなかったので
却って驚いた。
もちろん原因は簡単にわかるので即解決。
前オーナーさまは別れ際にPC-41MCだけ引っこ抜いてくださった様。
その時外したボンネットをラフに閉めたのが
電源入らず、の原因。
それは良いがカートリッジが無いと音が出ないから
PL-X9一号機から拝借。
お約束でメカアッシースライドのためのゴムベルトは交換。
ところがここで思わぬ難題が…
なんとフォノモーターが回転しない。
固着?
固着?というか固着だろう、これは。
それにしても見事な固着。
そこでとうとうヒートガンにお出ましいただく羽目に。
これで解決。
しかし立派な固着だった…
細かいことを言うと他にもいろいろあるのだが
大幅に省略してくみ上げて音出し。
これが立派な音だ。
気のせいか一号機よりも音が良い?
いや、気のせいだろう…
10月16日