山の様なお宝カートリッジ達。 これだけあると、”たいていのカートリッジは試しました” と胸を張っても大丈夫という位ある。 AT-33系と来たら次は当然?103系。
で、ここで問題はやっぱりリード線。 これがまあ、なんと糸のように細い。 元からリード線なんて太くはないが これは一段と、いや二段三段細い。 しかし、出てくる音は?というと これが実に美しく堂々とした物だから参る。 登場したのはビンテージワイヤーと呼ばれる物達。 WEブラックエナメル→1957'sヴィンテージ→WE NO.23コイルワイヤー →WE パープルと進んだが、出てくる音はいわゆる103の音とは 随分違う。 ビンテーワイヤーと呼ばれる物達の底力を感じる。 そして同時に103というカートリッジの奥深さを垣間見る。 登場から30年だが、その可能性を全部引っ張り出せた人なんか 居ないに違いない。 いや、参りました。 だがしかし、本当の”参った!”はこの直後に来た。 ここで登場するのが…
そう。驚愕すべき事はこの後起きた。 満を持してMC-L1000登場。 (シェルはLH18occ) 実はその手前でMC-L10というステップを踏むはずだったが ちょっとしたトラブルがあっていきなりL-1000。 何しろず〜っと同じレコードの同じ箇所だけを聴いているので(笑) だんだんこちらの耳も鈍化しかけていた。 が、L-1000の針先がレコード盤に着地した瞬間、 “ハッ”と目が覚めた思いだった。
思わず口が開いてしまう。 そしてさんざん拝聴したマライアの聞こえ方も 当然まるで違ってしまう。 この変化をどう表現したものか。 これが正解だとすると ここまで拝聴した演奏はどこか統制がとれず それぞれのミュージシャンが好き勝手をやって ミキサーも制御を出来ていなかった…みたいな状態だったことになる。 それが今度は全然違う。 全ての楽器のバランスが最高。 もちろんマライアも光り輝いている。 エンジニアが伝えたかった事は 正にこれなんだ、と勝手に決めて膝を叩くが まず間違いあるまい。 出来ればその時のスタッフに。そしてマライアも招致して ほらほら、って一緒に聴いて貰いたいような音だ。
L-1000やリード線に感激すべきなのだろうが 僕がまずここで改めて思い巡らせたのはFEバックロードが真価を発揮した時の すさまじさだ。 市販スピーカーでは得難い音。 それでいて市販スピーカーを上回る美しい音。 時としてそれが出てしまうのがFEユニットの、 そして長岡式スピーカーの素晴らしさだろう。 モスビンさん使用のユニットはFE208S。 その原型はFE203まで遡る。 恐ろしく古典的なユニット。 そんな物と合板を使った自作スピーカーで まともな音はしない、という人もいるだろう。 だが、この音を聴けば黙るかもしれない。 “とにかくプレーヤーを換え、アンプを換え、カートリッジを換えるたび、 あれよあれよという間に変身、また変身、 10万円の音が100万円になった、といっても良いだろう。 これがFE-203バックロードの不思議なキャラクターなのである。 非常に古いユニットなのだが、球のアンプとは相性が悪く、 常にその時点での最新最高級のアンプと相性がいいという、 ある意味ではたいへんぜいたくなシステムともいえる” これはオーディオクリニック中の長岡先生のコメントだが 本当にそうだとしか言いようがない。
真価を発揮したD-57の凄さに驚愕しつつ、 改めて思ったのは長岡スピーカーというのは本当にハイCPなのか? ということ。 なるほど確かに比較的安価な装置でも 音離れ良く気持ち良い音を聴かせてくれる。 だがしかし、その先、もっと高見へ、となると 上流の装置に結構な金額を要求する。 例えばD-57自体は材料費だけで計算すれば一本 10万円もしないで製作可能だ。 (ツイーターに何を使うか、板材にどんな物を使うかで 結構異なるが) 対してここに一本50万円のスピーカーがあったとする。 単純な比較ではもちろん後者の方が高い。 だが、そのスピーカーがあまりアンプ等の違いに影響されない タイプだったらどうだろう? 仮に30万円位のアンプで充分良く鳴り、 逆に100万、200万のアンプを奢ってもそんなに 如実には違いを出さない (つまりそのスピーカーのキャラクターで鳴り続ける) としたらこちらは都合130万円で幸せな世界が訪れる事になる。 対してD-57は10万円のアンプでも楽しく鳴るが 実際には100万円のアンプでも物足りず、150万 200万掛けたなりの違いを出してくるとなると これは合算で180万、250万と要求してくるのかもしれない。 …こう考えるとFEを使った長岡スピーカーというのは 結構な食わせ物?とさえ思えてくる。
今回モスビンさんのお宅では アンプもプレーヤーももちろん一定で カートリッジ及びシェルリード線のグレードを 上げていくだけで音はガンガン変わってしまった。 まあやっぱり凄いものだ。 機材ばかり誉めてしまったが、もちろんここに至るまでの モスビンさんの悪戦苦闘があった故の成果なのは申すまでもない。 何でもそうだが、やるとなったら突き詰めないと ある線は越えられないのかもしれない。 長岡スピーカーでスタートして、最初は喜んでいたけれど 途中で疑いを持って違う路線を突き詰める、というのも一つ。 だが一方で、“絶対にやってやる”と思って 長岡スピーカーなら長岡スピーカーを突き詰めてみるのも一つと 今回痛感した。 僕は幸いにして長岡スピーカーで アッと驚くような音を聴かせて頂ける経験が多いから ラッキーなヤツとも言える。 それにしてもこれだけの違いを突きつけてくる L-1000とリード線というのはいったい何なのか? 恐ろしい世界もあったもんだ。 …と締めくくるとこれで終わりと思われるかもしれない。 だがしかし、何と更にもう一段隠し球があった。 それは…
いけない、ちょっと先走ってしまった。 L-1000のところでちょっと補足をしなくては… モスビンさん、実はL-1000を五〜六本お持ちだ。 もちろん複数のシェルリード線を試すためなのだが お気に入りのL-1000のために、ここには特に強烈な バージョンが織り込まれている。 この日だけでも四種類登場で、 ステージ101→103→106EVO.1→106EVO.2 と拝聴。 ステージ、はその名の通り段階みたいなもので 数が上がる程に改良版。 そこにEVOが付くと、これはエボリューションの意味で 更に進化系? その内容を正確に記すにはメモでも取るか 録音でもしてくるかしかないと思う。 (モスビンさん、良かったら解説して〜♪) まあとにかく研究、開発に掛ける情熱が素晴らしい。 音はそれぞれどう違ったか?というと 今では説明不能。 何だ、違わなかったのか?と言われそうだがそうではない。 こちらのメモリーが追いつかなくなってしまっただけなのだ。 ただ一つ、これだけは言えるのはステージ初段の方の物でも 充分凄いということ。 そこから先はもうお好みで、としか申し上げようがない。 L-1000を鳴らし抜くリード線達とも言えそうだ。
使い物になるのが一枚二枚というは毎度のこと(汗) しかし見て欲しい、この線材やハンダの凄さ。 日夜研究。 その中でビンテージワイヤーの凄さに触れたり、 あるいはハンダによる音の違いに自身で驚愕されたりと モスビンさんのオーディオライフに停滞や飽きは無いという感じ。 結果だけを拝聴するこちらは至って気軽なものだが その陰の苦労たるや想像を越えるものがあろう。 (そして次こそは、驚愕第二弾のお話し…のはず…)
とどめがやってきた。 写真がまともでなくて申し訳ないが IKEDAがずらり。 思わず心の中で “イケダイケダイケダ♪イケダイーケーダぁ〜♪” と唄うが、考えたらあれは“タケダ”であって“イケダ”ではない。 まあ、ほとんどの人がこれを見ただけで牛さんになるだろう。 涎がダラダラ…である。
IEKADAマニアなら暗記出来ているのだろうが 浅学な僕がこれから覚えるのは 山手線の駅を全部覚えろと言われるに等しく 困難極まりない。 この時拝聴したのはIKEDA 9CV、同9Ω(オメガ)、そして9EMP。 それぞれビミョーに違うが、どれも確かにIKEDAである。
とどめのとどめ。 IKEDAスプレモ登場。しかもゴールドである。 こんな物滅多に拝めるものではない。 価格35万円(!) シェル一体型で自重47g IKEDAのアーム以外ではまず使えそうにない。 外観は特異…という線を越えている。 あるいは“奇異”かもしれない。 どこか“宇宙船”を思い出させる。 いや、“宇宙人”かも? ぴょこんと伸びた指掛けが愛くるしい。
音も凄い。 もちろん聴くのは“マライア”である(笑) だが、しかしこれは凄い。 L-1000軍団にノックアウトされて垂れていた頭を 下からもう一度蹴り上げられた様なショックだ。 L-1000で充分と思えたマライアがここではまた より一層よく謡う。 L-1000で聴くマライアがどこか冷静さを保ち ミキシングコンソールのこっち側から観る感じを残していたのに対し スプレモでは正にマライア様がこの場に降臨している。 …と書くとまるでスプレモは恐山のイタコみたいだが とにかくモスビンさんはスプレモを使って自室にマライアを 呼び入れる事に成功している。 これも一種の超常現象か。 (次回いよいよ大団円のはず?)
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