6月14日

(鎌倉オフの続き)


eAR1001は確かに4343を的確に掴み始めていた。

だが、Pippinさん宅には伏兵が待ちかまえていた。

そうだ、だいたい不自然ではないか。

なぜこんな所にコーラの空き箱が…
デジタルアンプのそばに炭酸飲料を置くと音が良くなる?

そんな話しは訊いた事がない。


その箱を捲ると…

じょあん!

マランツ#9が登場。

今更説明の必要もあるまい。
真空管の名器である。
登場は1960年だったか。

モノーラルパワーアンプ
ペアを組むプリは#7

マニア垂涎の黄金コンビ。

とにかく観ているだけでも失神しそうに格好良い。

Pippinさんが今回手に入れられた個体は
'60年代の物ではなくて'90年代の復刻モデル。
それもなんと新品未開封だ(!)

いやいや、道理で綺麗なはず。
恐れ入りました。

早速繋いでを聴かせていただく。

21世紀のデジタルアンプから
良き時代の真空管アンプへバトンタッチ。

考えてみると夢の饗宴である。


おろしたての新品
それも電源投下直後だというのに
何ともバランスが良い音を#9は聴かせてくれる。

さすが名器?
すっかりうち解けている。

Pippinさん宅の音は幸運にもずっと拝聴をさせて頂いているのだが
大まかに言うとパワーアンプはヤマハレビンソンクレル
そして今回のマランツと移り変わっている。

不幸にしてクレルの音を聴いていないのだが
レビンソンの時の音を思い浮かべて比べるとマランツの音は
(今のところ)端正。実に美しい。そして楽しい

ヤマハMX-10000の時代の音を思い出すが
それともやっぱり違う。

MX-10000が現代の国産車的ラグジュアリーさを持っていたとしたら
#9は'60年代の羊の皮を被った狼的スポーツカーの印象。
これは実に末永く楽しく一緒に暮らせそうなアンプ。

外しているかな?
いや、きっと当たらずとも遠からずだと思いたい。

(本当はおろ立てのアンプを捕まえて音を語っては失礼かもしれません。
その点はどうかご寛容に…)

(続く)


6月16日

復刻版マランツの資料は案外少ない。

…と思っていたらPippinさんが資料を送って下さった。

さすがである(テレパシーの一種?)

いやいや、どうもこの復刻版、根本的に資料不足らしく
Pippinさんも苦労されたとおっしゃる。

今日のところは雰囲気をどうぞ。

詳しくはまた明日以降。


6月18日

とうとう掲示板を差し替えてしまった。

開設から6年数ヶ月。大きなトラブルは無かったのだが
今回を機にしようと思った。

WebForumもだいぶバージョンアップされているのは知っていたし…

ただ、現行ログのバックアップをマメに取るという事はしていないので
消えてしまった部分は取り返せない。
申し訳ありません。

それからWebForumのバージョンが変わった事により、
旧掲示板のとは過去ログの共有が出来ない?

過去ログは膨大な量になるが、これを必要とする人がいるのかどうか

過去ログはHTMLファイルになって70強のフォルダに別れている。
どこかに別途アップするべきなのか?
迷うところです。


さて、#9達の資料の解析だ。

カタログには「往年の名器」を忠実に再現。
管球式アンプ3機種、限定レプリカ発売

となっている。

ただ、レプリカといってもマランツ自体が行った物なので
やっぱりこれは複製ではなくて復刻なのである。

“これらの往年の名器を再現するにあたり
シカゴにあるMarantz USA Inc.のオペレーションにより
ノースキャロライナの工場が生産を担当。
あらゆる面で当時の状態に近づけるよう
配慮がなされました”

“オリジナルモデルの発売から30年以上も経過した今日、
オイルチューブラコンデンサセレン整流器など入手不可能な部品や
安全規格面の変化によって変更せざるを得ない箇所もありました”

“しかし、入手し得る部品を選りすぐり、復元可能な部品は新たに起こし
オリジナルの構造、組み方、配線方法を忠実に守るなど
可能な限りオリジナルに近づけています”

“オリジナルと異なる部分は、電源ケーブルがインレット式になること、
AC一次回りに各国安全規格認定品を使用し
電源トランスが温度ヒューズ入りになること。
Model8Bにパワースイッチを付けたこと。
及びスピーカーターミナルを変更したこと…などです”

“使用真空管はGEとゴールドドラゴンを厳選して使用。
回路的には、パワーアンプの入力バッファ及び
OPT2次側調整抵抗以外は定数も含めて同一としました”

“オリジナルアンプが持っていた、あの豊かな味わいを存分にご堪能ください”

(以上カタログより抜粋)



といことでマランツ渾身のレプリカ名器。

Model9のスペックはもちろんオリジナルの通りだが
定格出力(UL接続)70W

全高調波歪率0.03%

入力感度/入力インピーダンス(70W) 1.2V/150KΩ

S/N比(EIAJ) 90dB

ローカットフィルター 10Hz(-3dB)

消費電力 210W

価格は390.000円税別

である。

ちなみに同時発売のModel7は360.000円
Model8Bも360.000円で共に税別であった事を付記させて頂く。

なるほどACはインレットになっている。

それにしても林立する真空管の可愛らしさよ。

この風情。当然だがトランジスターアンプでは
味わう事が出来ない。


6月19日

それにしてもオーディオは面白い。

21世紀のデジタルアンプ。
そして1960年代の真空管アンプ。

40年余の隔たりはあるものの、両者同じ土俵に載っている。
こんな事が可能なジャンルってあんまり無い気がする。

どちらに行くかはお好みと周辺機器次第。

いや、両方行っちゃっても誰も文句は言わないのである。


さてしかし、心残りが一つ。

それはクレルの音を拝聴していないこと。

そこで無理を言ってPippinさんにクレルを引っ張り出して頂いた。
(重いのにスミマセンでした)

「クレルだともっと柔らかい音がしますよ」とのこと。

ただ電源投入したての音を聴かせて頂くのだから
ウオーミングアップ不足は必至。

その点は充分差し引いてお聞かせ頂かなければならない。

しかしまあクレルの大きいこと…

というか#9も小振りだし、eAR1001に至っては何をかいわんという小ささだったから
比較の問題で一層巨大に思えたのだろう。

それにしても小さくは無い。

無骨とも言える外観(悪い意味ではありません)
大きなハンドル、そっけないスイッチボルト類が
独特の雰囲気を発する。

マランツが貴婦人、eARが宇宙船に搭載されたCPUだとすると
これは正に巨大ロボットだと思った。

だがしかし、このアンプ見た目こそ大きいが神経は繊細とみる。

周囲への気配りは素晴らしいもので
A級アンプの発熱を逃すファンの音も極めて静か。

クレルの前のレビンソンがファンレスのA級
それこそチンチンに熱くなったのを思えば
クレルは遙かに環境に配慮していると言える。
(前後に備わる大きなハンドルも使い勝手の点では実に頼もしいのひとこと
というかこのアンプには必需品)

そしてそのは確かにマイルド系。
…というか、よっしーには大変奔放な感じに思えた。

音が弾む。これはそれ以前Pippinさんがお使いだった
レビンソンとどこか共通する世界を感じさせてくれた。

ただ、繰り返しだがあくまでも電源投入直後の音のお話し。
きっと時間の経過と共に良い意味で音はもっと引き締まってくるのだろう。
そうなれば、これはやはり一種完璧な世界となる。
(今回はスケジュールの都合で時間切れ)

贅沢なパワーアンプ拝聴の締めくくりに
スリーショットをパチリ
(この画像はShuksさんにご提供頂いた)

果たす役割は同じはずなのに、なんと三者三様なことか。

これだけの機種達だと、もはや差し替えてグレードアップ
=音の向上という段階ではない


それぞれ描く世界が違うということで
どれを選ぶか?というお話しになる。

難しいのは(この段になると)
得る物もあれば失われる物もあると言うことか。

それまでに見ることが出来なかった世界を
垣間見る事が出来る反面、
あの日あの時は確かに出た音が聴けなくなる
なんて事がどうしても起きてしまう。

それをどう捉えて行くか、がこのレベルになると問われるに違いない。

いや、これは人様に向けて言っているのではない
誰あろう、よっしー自身が最近やっとこの事に
本当の意味で思い当たったので
ここに記しているのだ。

ちょうどそんなことを感じ始めた時にこの様な夢の饗宴
(eAR1001、Model9、クレル)に立ち会えたのは
偶然にしては出来すぎている。

「よっしー君、わかったかな?」とオーディオの神様
美しい鎌倉方面の空から微笑んでいる様な気さえしてしまったのであった。
(いや、まあ僕の話はどうでも良いのだが。笑)

(続く)


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