’79年登場。当時45.000円。 “X”はシェル一体型。同時に標準型のMC-1Sも出ている。 そちらは35.000円。 両者の価格差1万円。 その頃1万円もするシェルがどれくらいあったか?と考えると “X”は割高にも思える。 ただ、シェル一体型ということで 当たり前だけどメーカーの音作りはシェルに左右されなくなる。 その意味で“X”バージョンの存在意義は大きいし、 “S”の方は自分でシェルを選んで音作りを楽しめるという アドバンテージを持つ。 この頃はMCブームが加速していた頃だったし 同時にシェル一体型カートリッジが盛んに開発された頃だった。 MC−1Xなど、その“時代”を思いっ切り反映した物と言えよう。 いずれにせよ、ヤマハの本格MCカートリッジの第一号。
MC−1X、同Sも調べてみると凄いカートリッジだ。 ざっとピックアップすると @高純度ベリリウムのテーパードパイプカンチレバー採用。 “今まではせいぜいアルミへの蒸着か中の詰まった 棒状でしかなかったのに比べて、 天地を隔するほどの軽やかな新しい世界です” と謳われている。 ちなみに先端部が0.3o径で根本が0.6o径。 肉厚35ミクロンのテーパードパイプだ。
各会の名簿更新やリンクの更新もお待ち頂いてしまっているが 日記も滞ってしまっているので、こちらを更新。 (ごめんなさい) ↑の続きですが… A極軽量薄膜ラミネート構造IC空芯円形コイル …なんだか呪文のような(笑)名称だが これは要するにプリントコイルということだろう。 プリントコイルというとMC−1から始まるビクターの ダイレクトカップルシリーズだが そちらはカンチレバー直近にコイルを置くために プリントコイルを採用したことで知られる。 しかし、プリントコイル、それ自体のメリットもあるわけで、 MC−1X/Sの説明によればそれは… ICによることで巻きムラがないばかりか 片ch0.33mgの極軽量と、基盤最外径1.42m/m、 厚さ90μという小型化を実現して コイルの等価質量は僅かに0.03mgです。 となっている。 これにつけ加えて、 円形(対称)であるため歪みやロスの発生が少なく 空芯のために軽く磁気歪みもなく ラミネート構造で発電効率が高く… と書かれている。 どれもごもっとも、だ。
珍しく祭日に休みなのに子供が風邪をひいている。 逆にいえば看病が出来るので良かったかな? …はさておいてMC−1X(S)の続き B共振モードの影響を受けにくいルートウイング方式コイル支持 コイルはカンチレバー根本に十字型支持板(↑の画像参照ください) を介して翼(ウイング)状に取り付けた新しい方式で、 カンチレバー中腹に位置する場合と違って カンチレバーの共振を受けにくく、 等価質量が小さく、かつトレースの際のゴミなどのトラブルからも 確実に防護されています。 カンチレバーを振動伝達機能に専念させる合理的で リニアリティの高い方式です。
ビクターのMC−1を強烈に意識したものであることは おわかり頂けようか? (申し遅れたがMC−1X(S)の資料は手元に無く 辛うじて’79年当時のステレオ誌に掲載されている ヤマハの広告が手がかりとなっている) プリントコイルの先駆けはビクターのMC−1なのだが 同じようなコイルを使いながらも、その取り付け位置が ビクターではカンチレバー上、針の直上付近。 ヤマハではカンチレバーの根本とはっきり違っている。 もちろん後発となったヤマハがビクターと同じ方式をとれなかったから というのもあるだろうが、なかなか敵対的な?広告で興味深い(笑)。 どちらが正しいということはなく、それぞれにメリットデメリットがあるわけだ。 ビクター方式では 1、大変シビアーな針圧調整が要求されるし、レコードの反りには弱い。 ひいてはアームを大変選ぶ。 2、コイルとポールピースのギャップが針先チップのすぐ傍にあり しかも出力を上げるためにギャップは狭いから埃が入り込むとお手上げ。 (*MC−1、L10まではこの問題を抱えたが L1000になって針先部分のカバーのみ外せるようになった。 ただ、掃除には細心の注意が必要だが…) 3、コイルが薄膜のフィルムであるため共振やあおりが心配。 というデメリットがある。 ヤマハ方式は、これらのデメリットを全て解消する立場にあるわけだ。 まあ、それでも針先直近にコイルを置くという部分のメリットは それはそれで大きく、ビクターは’83年のMC−L1000まで この方式を続けて磨きを掛けた。 どれが良いと一概に言えない。 この辺りに特にアナログならでは面白さ、興味深さが 感じられる。
C断然リニアなヨークレスデュアル差動磁気回路による プッシュプル発電方式 磁気回路には片chあたり2組のマグネットを極性を逆にして 隣り合わせた新しいヤマハ方式ヨークレスデュアル差動磁気回路で ヨークレスであることや磁束の流れがリニアで均等であることによって 発電効率が高く、歪みやクロストークが極少になっています。 しかもICコイルはこの磁気回路の中でプッシュプル発電するため 従来のシングル方式に比べて2倍以上の発電効率を実現しています。 となっている。 ちなみにビクターは最後(L1000)までシングル発電だった。 それでいて0.22mVの出力(*L1000の場合)を得ていたのは やはり強力な磁気回路のお陰だったと言えよう。 ビクターが、ヤマハが…ということはさておいて ’77年登場のビクターMC−1が48.000円。 ’79年登場のヤマハMC−1Xがシェル一体型で45.000円。 シェル別のMC-1Sが35.000円。 もしかすると内容からするとMC-1X(S)は超ハイCPだったかもしれない。
ところで音の方は? 清楚っぽい外観のカートリッジだから そんな音を想像して何気なく針を降ろしてビックリした。 こ、これは豪放…! どこか先に拝聴したMC−1000に似たところもあるけれど MC−1Xを聴くと、あれは随分大人しかったんだな と思えてしまう。 迫力1.5倍増? たまりません。 ウーファーの口径が5p増えたみたいな鳴り方になるのが印象的。 高域に若干あるイガイガした感じを 人によってはベリリウム臭さと言うかも知れないけれど 僕は好きです。 そしてピアノのアタックの描き方とかも見事で ちゃ〜んとハンマーフェルトの存在が見えてくるような芯のあるアタック感が出る。 優しさもあればド迫力もある。 良質な太い木を存分に使った木造住宅みたいな感じ? くつろげるけど台風にもびくともしない…。 オーバークオリティが音にも出ている。 そんな余裕すら感じさせる一本でした。 正直いって先に聴いたマトリックスシリーズよりも こちらの方が私は若干好みではあります。 ヤマハさん、凄いカートリッをジお作りでした。(汗)
’78年当時38.000円。 言わずと知れたリボン型カートリッジだ。 リボン型カートリッジとはなんぞや? リボン=空芯MCの原型そのもの と解釈出来そうだ。 取り敢えず、図↓を参照頂くとして…
これを動かすと(磁束に対して直角に動かす) 電圧が発生して電流が流れる。 …どこかで昔習ったような…と皆が思い返す フレミングの法則そのままだ。 これを純粋に発電に使ったのがリボン型カートリッジとなる。 LRそれぞれに一本ずつのリボン=幅の広い導線 があってポールピースの間に納まる。 マグネットは角形でポールピース=ヨークは 前方がIの字型、後方がL字型でそのギャップにリボンが入る。 リボンはV字型のアーマチュア(支持具)の先端に張られ V字の頂点は又小さなV字にカットされて、そこにカンチレバーが接触する。 V字型アーマチュア…と聞いてサテンを思い浮かべるのが ベテランマニアだろうが、正にサテンと同じ構造。 故にJT−RUも針交換可能なカートリッジである。 コイルがカンチレバーの手前に来ているというのは サテン、そしてジュエルトーンの特色。 そしてビクターのダイレクトカップルがこれに続いた。 この方式の難点は実効質量の増大。 利点はカンチレバーのたわみの影響が少ないこと。 そのカンチレバーだがJT−RUではチタンパイプ、アルミパイプ そして更に太いパイプの三段テーパー構造。 インピーダンスは3Ω、出力0.04mVとかなり低い。 開発当初はトランス内蔵型として設計されたのだが ちょうどMCブームが勃発。 各社単売ヘッドアンプやヘッドアンプ内蔵プリの 開発にやっきになった為、内蔵は断念。 お陰で大きな空洞を抱える事になった。 それでもヘッドシェル一体型で19g。 まずまずの重さがあってアクリルのボディは結構丈夫に見える。
当時ジュエルトーンもRA−1という真っ赤なヘッドアンプを発売。 単二電池8本使用のセパレート電源と これもユニークな物だった。 今回はヘッドアンプはHX−10000。 プレーヤーはGT−2000X+WE−407GT。 407GTに対してシェル込み重量19gはギリギリの軽さだが一応OK。 他のカートリッジと比べると全高がちょっとあるので アームベースをグイッと高くしてセット完了&拝聴。 音はやっぱり独特。 超繊細でフェザータッチ。音が漂う感がある。 ただ、良く聴くと決して軟弱なサウンドではないことに気づく。 軽いのだが力強い。 これはどういう事かというと全域に渡って立ち上がりが早い故だと 想像される。 あるいはこれが本当のハイスピードサウンドかもしれない。 やたら高域強調型なのではなくて、低域も高域と 同速で動いている。 もしかすると、針先チップからV字型アーマチュアまでの 距離の少なさがポイントなのかもしれない。 いや、きっとそうに違いない。 何より印象的なのは音像の輪郭の無さ。 音は確かにそこにあるのだが、陽炎か蜃気楼の様に実体が掴めない。 思わず耳を傍立てる、というより目をこらしてしまうほどだ。 これは他のカートリッジではあまり体験出来ない世界なので ちょっと面食らう。 ただ、よく考えてみると、輪郭が見える方が自然界の音の在り方からすると 変なのだとも言えるので、あるいはジュエルトーンの 鳴り方が正しくて、他のカートリッジ達の音はオーディオ臭い音と 言って言えないことはない。 とにかく一種独特の世界を持ったカートリッジであり これが良いとなったら他のカートリッジには移れない カートリッジと言えそうだ。
内部の感じが何となくおわかりいただけるかと思います。
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