そんな事を思いながらシャッターを切ったら 思いっ切りブレてしまった。 ああ、なんと写真の才能には恵まれなかったのだろう…
↑突然何を言い出すかって思われそうですが 何だか一年中人様から物を拝借したり頂いたり… その割には恩返しはどれくらい出来ているかと考えると まあ、何にも出来ていない。(汗) せめて日記にてどんどん報告をさせて頂くのが 自分に出来る僅かな事と思い、過去においてはそうして来られた 気がするのだが、この一年〜一年半くらいは それもままならなくなることがしばしばあって まあ本当にこうなると何も出来ていない事になりそうです。
という声が聞こえてきそうだ。 そうしよう。 さて、PX−2については能書きばかり書いて 音について書いていなかった。 いい加減に音について触れよう。 どうかというと… @一言で言って“美しい” Aカートリッジの違いがとっても良く反映される。 という感じ。
“これはリニアプレーヤーだから”、という先入観があるのかな? と眉につばを付けてもみたが、 そういうことを抜きにして“美しい”のひとことだ。 何というか、“内周歪みが無い”どころか “全周に渡って歪みがない”、という感じ。 Aについてだけど、本当に面白いように違いが出る。 これもお見事と言いたい。 ただ、残念なのはシェル込み20g程度まででないと アームが受け付けてくれないこと。 これだけが残念でならない。 そんなこんなで↑の写真ではダイナベクターの 17D2をこれまたダイナベクターの11g程度のシェルに付けた物が 付いている。 この組み合わせも一つの正解で、それはそれはクリーンな音がする。 ただ、その一方で、無理矢理使ってみたDL-103の音も 大変良い感じな訳で、そのような重めのカートリッジを 使おうとすると苦労が生じる点が残念でならない。 …というわけで、昨日写真アップの一つ。 YAMAHA MC-11(拝借中の物)などにご登場頂いてみたりした 訳です。
十字マトリックスである。 ↑は毎度の事ながら別冊FMfan33号 長岡鉄男のカートリッジフルテストよりだ。 MC−9の項で十字マトリックスについての説明がされている。 残念ながらMC−11の詳細を伝える記事というのが 見あたらないが、一応基本は似たものと思ってお話しをする。 要するにコイルのコアが十字型であるということ。 デンオンも十字型なのだが、レコードの45/45の溝に合わせて 傾けてあるので正面からみるとX字型ということになる。 ヤマハは文字通りの十字型で、 水平方向に巻かれたコイルは水平振動をキャッチ。 これは和信号(L+R)。 垂直方向に巻かれたコイルは垂直信号をキャッチ。 これは差信号(L−R)。 実際の配線は↑のようになっていて出力としてはLとRが 得られるようになる。 イラストでは垂直コアの幅の方が広く描かれていて これだと差信号の方が大きくなる。 MC−9の実物ではコアの幅は垂直が0.7o 水平が0.6o。 コイルのターン数は垂直が59ターン。 水平が64ターンと変えてある。 MC−7(マトリックスの第一弾)では コアの幅は同じでターン数が垂直58、水平64。 ここで水平と垂直の出力比を求めると MC−7は水平100に対して垂直105。 MC−9では水平100に対して垂直107.6。 要するになんだと言われると、これはLchに-Rが。 Rchに-Lが、ちょっぴりだが混ざる事を意味する。 つまり音場が水平に広がる傾向を示す。 ただ、鉄芯入りMCの場合だとコイルの厚み方向の分も 無視できないので、仮にコイル全長が発電に寄与したとすると 出力比はMC−7で100対99。MC−9で100対100.6になり ほとんど差はなくなる。
ダンパーの材質と厚みが同じなら 接触面積が広い方がコンプライアンスは低くなる。 3,5,7,9のシリーズはいずれも垂直コアの幅を広くとって コンプライアンスに変化をつけている。 3,5,9では段付きダンパーの採用で垂直方向のコンプライアンスを 更に低くしていて MC−9では水平11×10の-6。垂直9×10の-6と なっている。 単純に言うとコンプライアンスが低いということは 反発力があって馬力のある音になりやすいということになる。 もうひとつ。コンプライアンスはアーム全体の低域共振(fo)を 決定する要素でもある。 コンプライアンスが高いとfoが10Hz以下にもなり レコードの反りに弱くなる。 垂直方向のコンプライアンスを低めに設定しておくと、レコードの反りに 強い物が出来上がる。 以上種々のねらいがあってヤマハは十字マトリックス方式を 採用したと思われる。 思うように音作りが出来るというメリットは大きかったと思われるが 後年の「長岡鉄男の日本オーディオ史2」では “果たしてメリットがあったのかどうか疑問”(P33)と 軽くコメントされているのが可笑しい。 まあ12〜3年経ってから言うのだから時効というものだろう。 何であれ、とにかくアナログカートリッジというのは 各メーカー種種雑多な試みをしていたものだと あらためて感心させれらる。 (毎度の事ですが、以上のコメントは長岡先生のテスト記事を 大幅に引用しています。どうやってもこれ以上 適切な解説をすることは無理でございまして…
さてMC−11。スケルトンボディが大変美しい。 フォルムは一連のシリーズに共通の物。 テクニカの比較的軽いシェルに装着されていたこともあり PX−2で拝聴することに決定。 音…だが、これは可もなく不可も無くというのが 正しいのだろう。 とにかくMC−11については資料が乏しく、 価格が12.500円ということしかわからない。 普通に音楽を楽しむにはこれで充分といっても 間違いない。 ただ、ハッとしたり、ギョッとしたり 感心させられたりという事はあまりない。 でも、これは仕方ないのではないだろうか? 価格相応というのは、やっぱりある。 例えば3万円台のカートリッジと1万円台のカートリッジというのは 世界が違って当たり前だろう。 MC−11というのは、細かい事をとやかく言われながら使うよりも どんどんレコードを聴くのに使って、針が減ったら交換してね、 というノリのカートリッジだと思う。 (それすら今となっては出来ないが…) ヤマハはMC−11の後にMC−21というカートもリッジ発売。 こちらは更にお求めやすく、9.800円。 それでいながらムクダイヤを使って回りを驚かしたものだ。 この頃のヤマハはMC-21(9.800円)、MC-11(12.500円)、 MC-9(16.000円)、MC-5(25.000円)、MC-4(29.000円)、 MC-3(37.000円)、MC-1000(52.000円)、 MC-2000(105.000円)のマトリックスシリーズ8機種と MC-1S(35.000円)、MC-1X(45.000円)の2機種を加えて トータル10機種プラスαのカートリッジを有していた。 開発者は元NHKに居た似鳥(にたとり)高司さん。 次はその中の一本、MC-1000のお話しです。 (続く)
登場は’83年だったか。 当時52.000円。 十字マトリックスの最高峰はMC−2000だから 1000は上から二番目の機種という位置づけになる。 非常に大雑把に言ってしまうとMC−11から2000まで 基本的な作りは似ている。 発電方式についての説明はもう良いとして ボディはどれもコンパクト。 この頃ヤマハは一貫してボディ、振動計共に 軽量なカートリッジを作ろうとしていた事がわかる。 それでもMC−1000は5.3gある。 マグネットが非常に強力なタイプだからだ。 短めのベリリウムテーパードのパイプカンチレバー採用。 これはヤマハでは以前より使われている物だが 1000で初めてダイヤモンドコーティング方式採用。 とは言ってもベリリウム層が35ミクロン、ダイヤモンドコーティング層は 0.5〜1ミクロンということだから ダイヤモンドカンチレバーみたいな色はしていない。 見た目は真っ黒なパイプ。 しかし、これで強度は上がり鳴きは抑えられる。 スタイラスチップは0.6o角ソリッドダイヤ特殊楕円針。 これはMC−2000と同じ。 インピーダンス30Ωも2000と同じ。 ただし巻き線が2000では12.7ミクロン径、 1000では15ミクロン径とやや太くなっている。 その為出力は2000の0.13mVから1000では0.17mVとアップ。 同時に針先実効質量は当時最軽量を競っていた 2000の0.059mgから1000では0.105mgにアップ。 とはいっても1000でももちろん超ローマスの部類に入る。 針圧は1.2g。
MC−1000では資料が多すぎて困った。 何しろメーカーの狙った音作りのコメントまである。 先入観に惑わされないように、と身構えてしまう。 しかし、音の方だが、これは本当に見事に メーカーのコメント通り。 “高トラッカビリティーと厚みのあるリッチな音” が謳われているが、正にそんな音だ。 一言で言って素晴らしいカートリッジの一本だと思う。 とっても繊細で高分解能なのだけど 無機質でも神経質でもない。 何とも言えない色つやがある一方 一定の音色に染めてしまうという事もない。 そして全体を支える低音の出方が出色。 充分ハイスピードなのだが 一歩抑えてその分厚みと量感を増している。 ちょっと老練なヘビー級ボクサーのボディブローみたいな感じで、 それに打たれ続けるのが気持ちよいと感じさせる。 (あたしゃ、オーディオパンチドランカーか?笑) “凄い!”、と驚かされるのではなく、 “上手い!”、あるいは“旨い!”と感心させてくれる音作り。 お見事。 余談だが以上の音作りのお陰で 小音量再生でも音楽が心地よく聴ける。 ボリュームを絞っても音は厚くリッチなままだからだ。 二等辺三角形の頂点で切り株に座って背筋を伸ばして聴くよりも ソファーに座ってお喋りを楽しみながら聴く。 そんなシチュエーションこそ似合うカートリッジなのかもしれない。 (長岡先生ごめんなさい。笑) *なお、以上はGT−2000Xに取り付けての拝聴でした。 シェル重量の関係で今回はPX−2はパス。 拝借しているカートリッジのシェル交換などという 大それた行為はなかなか出来ません。(笑) 補足すると今回のMC−1000は テクニカの18gシェルに取り付けられています。 WEー407GTとの組み合わせは 特に相性も良いのかもしれません。
形は似ているが11の方が1000より明らかに 大柄。
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