再び三度、自作アナログプレーヤーのお話。 (しかし、2004年にしてアナログプレーヤーの自作というのも 凄いネタだが…。笑)
アナログプレーヤーは要するにフォノモーター、 アーム、カートリッジ、そしてそれらを支えるキャビネットで成り立つ。 こう書くと実に簡単その物なのだが、 細かく見ていくと種々の要素が入ってきて 小難しい事になっていく。 小難しい事は苦手なので、とりあえずキャビネット主体で 追ってみよう。
頻繁に登場する。(笑) フリーハンドで適当に書いたので 無様な点はお許しあれ。 まず上の画は何かというと、最も古典的とも言える 箱形キャビネットを書いたつもりの物だ。 箱の天板を切り抜いて、フォノモーターとアームを装着。 昔むかしのプレーヤーというのはこの形が多かったはず。 '60年代末からはメーカー組み立てのプレーヤーシステムが 幅をきかせたが、それ以前はプレーヤー自作が 割と当たり前で、フォノモーター、アームそれぞれ単売の物を 買ってきては箱形キャビネットに納めるのが定番コースだった。 (実際、よっしーが昨年拾ってきた段階での MU−41のプレーヤーはそんな作りだった) 市販のプレーヤーシステムでも、この箱形キャビネット形式を 使った物は多かった。 メリットは、工作(製造)が容易な点。 デメリットは箱の内部は空洞に近いので共鳴その他が心配なこと。 重量を稼ぐのにも不利であろう。
このマナイタ(まな板)型。 元祖はPL−41(1966年発売)で、このプレーヤーが “マナイタ”と呼ばれて好評を博した。 (MU−41は、このPL−41のフォノモーターを単売にしたもの) まな板みたいに厚い一枚板を天板に使用。 音にも良いはずだ。 ただし、その下は普通の箱状。
板をバームクーヘン状?に重ねて貼り合わせる形式。 市販のプレーヤーではビクターのJL−B77(1972年発売)が 最初に採用。 ブナ合板の積層だった。 ただし、この形式を最初に発表したのは長岡鉄男氏。 '69〜'70年頃に作製。 ステレオサウンド18号('71年春号)に発表されている。 メリットは無駄な空洞が無くなる事。 デメリットは手間が掛かる事。 メーカーさんはまだ良いが、自作するとなると 何枚もの合板をくり抜くわけで、そりゃもう面倒臭い!。 (続く)
積層のトップ。つまり天板の端をカット。 ここに鉛板のアームベースを載せるに至る。 メリットは何かというと @アームの交換が容易。 Aオーバーハング調整が容易。 @については説明の必要も無い。 アームはアームベースを介して“載ってるだけ”である。 ボルトで留めるとか、そんな事もしない。 だから複数のアームを差し替えるのも実に簡単に出来る。 これでアームベースが軽い物だと音に対してデメリットが出そうだが 100W×200D×15〜20H位の鉛の板となるとかなりの重量だ。 信頼感抜群となる。 Aについても説明不要かもしれない。 アームベースをわずかにスライドさせるだけでオーバーハング 調整が可能。 普通はシェルの部分とかでやるわけだが、かなり面倒。 不精者にはぴったりの?方式である。
その人によるだろう。 僕はどうかと言うと、つくづくその合理的というか 割り切った考えに感動してしまう。 それ故に、どうしてもプレーヤーを作るというと この方式になってしまう。 自分なりに工夫してみたり設計してみたりもするのだが 結局ここに落ち着く。 複数のアームやカートリッジを楽しみたい、という人には 特に好適な設計だと思う。 二本アーム三本アームのプレーヤーにも惹かれるし 興味がない事はない。 しかし、元来が不器用な僕には奥まった所にあるアームや 反対側にあるアームの操作は全く向かない。 それと、どうしてもプレーヤーのサイズが大きくなってしまう。 (やり方によっては大丈夫?) ありきたりのラックに載せるには、580W×440D位が望ましいかな?と 地味な事を考えてしまう私です。 (続く?)
写真は別冊FMfan17号より。 見開きのページをデジカメで撮影なので見づらいのはお許しを。 見出しに「元祖 積層合板型 実用性の範囲で 丈夫で重く 要はトータルバランスを狙うこと」 とある。 ほとんど見えないが右がSP−12+EPA−100の組み合わせ。 カートリッジはEPC−100Cが付いている。 これはその前から使われてきた物でEPA−100以前は グレースのG−940が大活躍していた。 左はSP−10U+DV−505のプレーヤー。 このキャビネットは週刊FMの記事で作製されたのを覚えている。 アームベース下にエアコンの防震用ゴムが敷かれているが これは合板の厚さに対してアームベースの鉛板の厚さが ちょっと不足していたから。 後にこのゴムは外されてしまった。 よく見るとDV−505が取り付けられている鉛板は 以前G−940がマウントされていた物。 倹約家の面目躍如?。(笑) こちらカートリッジはMC−1。 シェルはビクターのPH−6か?。 ゴムでダンプされている。指掛けも細工されているような…。 なお、別冊FMfan17号は’78年春の発売だ。
それよりも、この見開き2ページの中に長岡氏のADプレーヤーに 対する考えのエッセンスが詰め込まれている。 (同じ事がこれ以前にも、これ以降にも何度も繰り返し 書かれてはいるが) 抜粋を少ししてみよう。 “プレーヤーシステムについての考え方も、 プレーヤーその物も、この10年間あまり変わってはいない。 基本的には動く物は丈夫で軽く、 それを支える物は丈夫で重く。 そしてトータルバランスを重視するということである。 カートリッジの振動系は丈夫で軽いほどよい(中略) これが基本だ。 カートリッジの場合だとボディは丈夫で重いほどよい。 とはいえ、アームから考えると、アームは動く物であるから 丈夫で軽くなければならず、 カートリッジをやたらに重くするわけにはいかない。 そしてトータルバランスの考えが出てくる。 アームは動くものだが、これを支えるサポート回り、 ベース、キャビネットは丈夫で重くなければいけない。 理想的には無限大の重さが欲しいが、 ある程度の重さがあれば、それ以上は少々重くしても、トータルの音質には 関係ないところまでくる。 フォノモーターについても同じで、まずレコードの共振を抑え、強度と重量を増す と言うことを考える。 これにはレコードを適度な内部損失と硬度を持った接着剤で ターンテーブルに接着してしまうのが理想である。 しかし、そんなことは出来ないので、それに最も近いテーブルシートを 選ぶ。(中略)現在はパイオニアJP−501を使っている。 次にこのシートに合うターンテーブルを選ぶ。 JP−501はターンテーブルをダンプする力は弱いので 背面からダンプしたターンテーブルがよい。 (*SP−10Uのターンテーブルは元々ダンプされている。 SP−12については長岡氏がブチルでダンプをしていた記憶が…) ターンテーブルは動く物ではあるが、カートリッジから見ると 定速運動をしていて、それ以外の運動をしてはいけないものなのである。 等価的には停止しており、ダイヤチップを支点として カンチレバーとアームを支えているもの、と考える事が出来る。 従って慣性質量は大きいほどよい。 しかし、慣性質量を大きくするとターンテーブル自体の強度が不足し 軸受け摩擦が増え、また、キャビネットを逆方向に回転させるという 不都合な面が出てくる。 ドライブモーターのトルクの問題も出てくる。 従って、トータルバランスから、ある程度抑えなければ デメリットの方がふえてしまう。 キャビネットは絶対に動いてはいけないものである。 従って重ければ重いほど良いが、これも限度がある。 強度については丈夫なほどよいに決まっているが Qが高くなるとまずいので、適度な内部損失は必要。 インシュレーターはない方がいいにきまっているのだが 実用上はどうしても使わざるをえない。 床と切り離して大地からじかにコンクリート柱を立てて これにキャビをネット接着するという手もあるが 大地自体も意外に振動が多く、 車や、エアコン、ガス、セントラルヒーティングなどで 絶えず揺すぶられているので、それがそのまま プレーヤーに伝わってきてしまう。 以上、あらゆるトータルバランスを考え、実用性を考えて 現在のようなシステムになっているのである。 大事なのはトータルでの音質であり、 こけおどしではない。” (引用終わり。この話題はまだ続きます)
さて、長岡式だけ取り上げるのは不公平というもの?。 別冊FMfan17号には他の先生方のプレーヤーシステム 及びそれに対する考え方も載せられているのだから ここでちょっと目を向けてみようではないか。
わかる人は一目見ただけでわかる、 江川先生のプレーヤーだ。 直径64p、重さ7.5sのガラスターンテーブル。 慣性効率(註 原文のまま)7.200s/p2。 カッティングマシーンに追いつけ追い越せが目標だった?。 こうなると普通のアームでは届かない。 オフセットアングルゼロのストレートアーム。 実効長325o。 軸受けにあるガタを打ち消すために 慣性質量型カウンターウエイトを使用。 アームベースは重量6sの真鍮台。 モーターボードは信楽焼きで総重量30s。厚さ45o。 とどめにプレーヤーの載る土台は床の上に無い。 大地から積み上げたコンクリートブロックの上にプレーヤーは載る。 何というか、江川節絶好調期を感じさせる。 さすが、“エナーシャーの江川”?。 あるいは過激なプレーヤーの絶頂期?。 後年はアイワ製のローコストプレーヤーに傾倒するなどして 今日に至るのは皆さんご存知の通り。
こちらもお馴染み?高城先生の糸ドライブ。 いや〜、これには中学生の頃憧れた。 ターンテーブルは重量10sの砲金製。 軸受けは軸の底に鋼鉄製のローラーが埋め込まれ、 その下にボールがあるという超シンプル設計。 ボードはシゲモトモードと呼ばれるセメントと石綿の混合物。 こちらでもプレーヤーの床は地面からコンクリートで立ち上げ。 77極モーターは本体から1mも離れた別床の上。 こんな物を昭和25年頃に作っていた高城先生は やっぱりただ者じゃあない。 あ、メインアームはダイナベクターだったりする…。
大木先生の寄せ木細工のキャビ使用プレーヤーも立派。 見てくれだけのチューンではない。 アルミのムク板を使った補助ターンテーブルに拘りを感じる。 しかし、まあ見事な木工です。
ノーハウリングプレーヤー。 プレーヤーボードは上下二分割。 下側のボードに金魚の水槽に入れられる小砂利が収まり その上にフォノモーターやアームが取り付けられた上側のボードが載る。 これなど確かにメーカーでは製作不能、 というか商品化となると実現不可能な方式だ。
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