12月30日

音を左右に放り投げるスピーカーを拝聴してきた。

kazzさん宅とよっしー宅は実のところ同一区内
直線距離で測ると本当に近い。
それなのに訪問を延び延びにしてしまった私を許して下さい。(汗)

ところで横に音を放り投げるスピーカーとは何ぞや?というと
ティールのことである。

先にお断りしておくと、よっしーはこのティールの事を
ほとんど知らない
良くも悪くも先入観ゼロで突撃出来たのはこの際大変良かったような気がする。

ティールにも色々なバリエーションがあるらしいが
kazzさん宅の物はCS1.6といい、最も小型のタイプらしい。

勝手にもっと大きい物を想像していたので
現物を拝見した時はちょっと驚いた。
実にコンパクト

外形寸法は229W×902H×292D(mm) 
日本の住宅事情にもぴったりという感じ。
これをkazzさんは十二分なエアーボリュームのリビングで鳴らしている。

いよいよ年も押し迫っての訪問だったこともあって時間に
あまり余裕が無い。

まずは、という事で奨められるままにソファーに着座。

見取り図まで公開するわけにはいかないが
第一リスニングポイントともいえるこのソファーから
スピーカーまでの距離はそんなに無い
推測で1.8メーターという感じか。

ところが目の前にスピーカーがある筈なのに
さっぱりスピーカーから音が出ている感じがない。
でも、音は確かにそこにある。
ちょうど正面に陣取っている駆動系機器のラック三列の
あたりにサウンドステージが展開している。

慣れないと不気味ですらある。
 

音場とかサウンドステージという言葉が
頻繁に聞かれるようになったのはいつ頃からだろうか?。

記憶にある限りでは’70年代の終わり頃で本格的には
’80年代に入ってからのような気がする。

オーディオには色々な行き方があって目指す方向は人様々
音場というものに関心の薄い人もいれば重要視する人もいる。

kazzさんは当然後者であり、長い間ステレオイメージの
再生、あるいは創生に力を注がれてきたご様子。

だからkazzさん宅での現象は一概にティールというスピーカーの
力だけで引き起こされている訳ではないだろう。

それ以前の愛器、モニター500でも同じ様な現象は
起きていたという。

用意万端のところに、今回ティールが最高のはまり役
登場したと見るのが正しいようだ。

音を左右に放り投げるとは変な言い方なのだが
どうしてもティールというスピーカーの音は前に直進している
とは思えない。だからそんな言い方になってしまう。

スピーカーというのはオーディオの主役であると同時に
音を出している間はあんまり目立って欲しくないという
奇妙な宿命を背負っている。

目立って欲しくないとはどういう意味かというと
いかにもスピーカーが鳴っていますという鳴り方は
して欲しくないという意味だ。

スピーカーを意識させない、という言葉があるが
kazzさん宅ではティールをもってそれを実現している。

ネットを外してユニットを拝ませて頂いたが、
そこにはポツンと16pウーファーと、更に小さなツイーター
ついているだけ。
どうにも信じられない気分になる。

ユニットはアルミコーンであり、これには大いに興味をそそられる。
カタログ通りの言い方になるが、
とにかく徹底して歪感という物を追放した感がある。

と、ここまでが第一幕であり、
セカンドステージはソファーの後方、ダイニングのイスの辺り
着座したところから始まった。

今度は充分な距離を保っての拝聴となったのだが、
ティールというスピーカーが、ただ礼儀正しく大人しいだけの
スピーカーではない事が判明する。

レンジは充分に広く、パワーは圧倒的に入る
プリのC240のボリュームをなかなか上げられない
という気持ちがわかる。
思いっ切りパワーをぶち込んだら、部屋が危ないかもしれない。

徐々にアンプ類もヒートアップして
(朝から通電はされていたのだが、
無信号でのエージングと実際に鳴らしてのでは
効果が歴然と違う)

システム全体が絶好調に達する。

画のないオペラ。音だけのオペラを眺める感がある。
面白いのは、ワンポイントに近いような録り方をしたソースも
良いのだが、計算尽くのマルチモノやステレオ初期の
いわゆるピンポン録音三点定位に近い物も楽しく聴けるところ。

そして、そのような場合でもユニットの位置から音が出ている感じには
ほとんどならないのが面白い。

ひらすら高忠実な再生を目指すというのはちょっと違って、
サウンドステージを積極的に作っている感じだ。
ただ、でたらめな物を作ってしまう訳では無い。

どうしたらこんな芸当が出来るのか?。
人工頭脳でも内蔵しているのだろうか?。

ソースもバラエティに富んでいた。

特に興味深かったのが、同一ソースの
SACDレイヤーとCDレイヤーの比較試聴。

それだけならよくある話しだが、
CDレイヤーはCD−Rに焼いた物であり
SACDレイヤーはカセットに録音した物。

これで聞き比べてみるとSACDレイヤーをカセットに録音した物の
優位性がばっちり出てくるから面白い。
(ノイズリダクションにdbxを使っているのでノイズも皆無)

アナログカセット恐るべし。
もっともkazzさん宅ではカセットがメディアの主役を勤めているような
状況なので、その辺りも影響しているのかも?。

TEACのCシリーズが現役バリバリだし、Nakamichiの700MK2
君臨している。

対してLPの方は脇役的存在だが、試しに
「ディスカバードアゲイン」を掛けて貰うと立派以上に鳴る。
DP−8000SME3009DL−103は未だに現役であった。
勿体ないからもっと使いましょう。(笑)

しかし、この日最高のソースはkazzさんのお嬢さん達の
所属する
中学校高校混成のオーケストラの演奏会の
LIVE録音だったかもしれない。

みなとみらいホール天吊りのペアマイク
DAT直結で放送部員の学生さんが録った物なのだが
ホールそのまま丸ごと持って帰ってきたような感じであった。

更に素晴らしいのが演奏で、同席されたお嬢さん達は
当事者ゆえに厳しい評価を下されていたが
若々しくて良い意味でのためらいが無い演奏は
13〜18歳の若者ならではのもの。

この辺りからkazzさんとよっしーは乾杯してしまったので(笑)
やたら涙腺も緩み勝ち?。

青春っていいなぁ〜”とおじさんは呟いてしまったのでありました。

ということで、ラストはただの酔っぱらいになってしまった
よっしーでしたが、帰りのタクシーの中で
やはりオーディオも進歩しているのだという当たり前の事実を
噛み締めておりました。

ティールのあのパフォーマンスは、やはりテクノロジーの
勝利
とみるべきか。つくづく凄い時代が来ているのだと思ってしまう。

ちょっと古い車に愛情を注いで一緒に暮らすのも良い。
だが、心機一転、現代の快適な車に乗り換えるのも悪くはない。

人生には限りがあるのだから、美味しい物を食べられるのなら
食べられるウチに食べた方が良いのかな…。

考えるほどに酔いも回ってくるのでありました。


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