中古のLPをまとめ買いしたお話しを 少し前にした。 平均単価100円にも満たない割には 盤質は良好な物がほとんど。 でも、まれに汚れた物も混ざっている。 よっしーは不精者なので、普段はレコードの クリーニングなんてしない。 だが無関心な訳ではない。 以前は結構真面目に取り組んでいた。 で、久し振りにクリーニングに勤しんだ。
色々あるが、今回はLP丸洗いに初挑戦してみた。 丸洗いとは何ぞや、というと、文字通り レコードを水でジャブジャブ洗ってしまうのである。 これはボロンさんご推薦の方法。 実は25年くらい前にも一度試した事があったが (その時は中学生) 上手く行かなかった覚えがあって、以来やっていなかった。 まあ“ダメもと”、みたいな感じで取り組んでみた。 具体的方法はボロンさんのサイトをご覧頂く方が良いが 要するに汚れを水で流してしまおうという事。 ポイントは乾燥かもしれない。 教えの通り、ティッシュ3枚で手早く拭き上げる事。 自然乾燥はご法度だろう。 25年前は、ここで失敗していたような気がする。 で、結果は?と言うとこれが良好。 ノイズが殆ど無くなってしまったのには 耳を疑った。 カートリッジの針先を見ると クリーニング後最初のトレースでは ゴミの付着も見れたが、2度目以降はゼロに近い。 何だかあまりにあっけないので 拍子抜けしてしまった。 他にも優れた方法はあるのだろうが このやり方の良い所は 何と言っても簡単至極なところ。 時間も掛からない。 さあ、これで一層自信を持って 中古レコードを買い漁れるゾ?。
最近掲示板に賑わしているYSA−2。 久し振りに引っ張り出して聴いてみた。 最初はAT−33E初代。 次にDL−103SL。 しばらく寝かしてあったので、 “どうかな?”と思ったが 心配は杞憂に終わったみたい。 手持ちの機器をあんまり誉めると馬鹿みたいだけど これはさすがに鮮明で豊潤な音のするアームだ。 これを基準にすると、標準のアームは ややソフトフォーカスな感じになる。 YSA−1だともう少し大胆な鳴り方になるが この辺りは好みの範疇だろう。
さて、ここでしばらくYSA−2について 能書きを述べる事をお許し頂きたい。
記事を書いているのは江川先生。 先立つ事数ヶ月前にピュアストレートアームの製作など されていたので、タイムリーな登場だったわけだ。 ところで、別冊FMfanの46号というのは’85年6月頃の発売である。 GT−2000本体の登場は’82年。 同年の内に登場したオプションは以下の通り。 YOP−1(外部電源) YB−1(アンカーブロック) YDS−1(吸着式スタビライザー)。 更に翌’83年には YGT−1(砲金ターンテーブル) YSA−1(ストレートアーム) GTR−1B(GTラック) が登場している。 YSA−2の登場はGTオプションの中でも最後期 に近かったと言える。 考えてみると、GTのオプションで“2”が型番に付いたのは アームだけである。 他は“1”で終わっている。 もっともYDS−3(ディスクスタビラーザー)だけは 登場からいきなり“3”が付いているけど、、。
言うまでも無くオフセットゼロのピュアストレートアーム。 まずはこの方式のご先祖様?のご紹介。
+ MA−505MKV(軸受け部55,000円) 下がスタックスCSP−8(パイプ部12,000円) + UA−9N(軸受け部53,000円) どちらもカタログには載っていなかったが 江川先生が特にお願いして作られた物で 受注生産の形で一般にも手に入った様子。 505にしてもUA−9にしても パイプ交換式だったからこそ、 このような技が使えたのだ。
その名を「YSA−2技術解説書」という。 YSA−2本体には付属だったものだ。 などと言ったが、よっしーのYSA−2は随分前に 個人売買で譲渡頂いた物で 上記資料については、今回GTの会会員の ある方から教えられて、初めてその存在を知ったところ。 何ともお恥かしい、、、。 これは非常に内容の濃い資料で、 単にYSA−2というヤマハのアームのみならず、 ピュアストレートアーム全般、 いや、トーンアーム全般に付いて考えるのに 役立つ記述が満載となっている。 なので、この際これをひも解きながら、 主にYSA−2について改めて解明をしてみよう。 (ほとんどただの丸写し?)
YSA−2試作段階での諸々の検討の件(くだり)である。 当初はYSA−1をそのまま短くして 剛性を高めたアームを試作したらしい。 結果は改良の余地あり。 @部分的高剛性化のみであるために 全体の剛性バランスが悪い。 Aアームの支点構造がジンバルサポートタイプ であるため、アームの振動をプレーヤー本体に逃がしにくい。 との考察がなされている。 その結果、パイプジョイントの強化とアーム支点構造の 単純化が施された。 この段階で、ジョイント方式、パイプ素材を 改善したアームを幾種類も試作。 支点構造については ラジアルピボット&2ボールのものが 音質的に最も優れていたという事で採用された。
アームの水平方向は、2個のボールによって支えられ ちょうど2個のボールにアームが載っている構造になっている。 更に、支点中心のピボットは、ラジアル方向のみの位置規制を行ない、 垂直方向の回転については、センターピボットに 球面加工を施して自由度をもたせている。 この辺りは実際に現物を手に取ってみないと 体感しづらい部分かもしれない。 実際このアームに触れてみると 非常にリジッドなフィーリングを持っている事がわかる。 多少長くなるが、重要な部分なので 「技術解説書」からそのまま抜粋すると、、 “ピュアストレートアームの特長を最大に引き出すために 生まれた軸受けです。 (前述の試作過程のように)普通のストレートアームを そのまま短くしてもピュアストレートアームとはなり得ないのです。 アームを短くして剛性を高めた場合、普通の軸受けでは その特長を活かしきれないのです。 カートリッジからの振動をプレーヤー本体に 単純な経路で伝えなければなりません。 そのために、シンプルな2ボール&ラジアルピボット構造が必要となりました。 YSA−2は、この軸受けが無くては誕生しなかったでしょう。”
さあ、ここで一旦別冊FMfan43号に目を向けてみる。 この号では江川三郎先生が 「ピュアストレートアームの製作」と題して ピュアストレートアームについて解説と実験をなされている。 その中には、市販アームをピュアストレートアームに 改造すると言う、例によって?大胆な試みが 盛り込まれているのだが、この際俎上に上がったのが 編集子所有のマイクロBL−71。 これをぶった切って、、、の筈だったが 直前でNGが出てテクニカAT−1503MKVを カットする事になっている。 ここで問題は、その“理由”なのだが 「ピュアストレートにするには アーム部と上下回転軸が直交している方が好ましい」 との事なのである。 それがどうしてなのか?と言う更に詳しい分析は さて置いて、江川先生もこの段階で ピュアストレートアームに適した軸受けと 不適切な軸受けがある事を指摘されていた事が興味深い。
江川先生が作った言葉らしい。 これまでにもストレートアームは存在したわけだが アームパイプこそストレートではあるものの、 カートリッジは専用シェルの使用によって オフセット角を付けられるのが一般的であった。 それに対してカートリッジも曲げないから 真のストレート=ピュアストレート、という訳である。 では、何故ピュアストレートなのか? ピュアストレートの優位性とは何なのか?。 オフセットアーム(つまり従来型のアーム)では 針先からアームを見た場合 アームは絶えずよじられている。 よじりの力は、J字型の場合梃子の力で 更によじり易くなる。 S字アームの場合は2回もよじられる事になる。 これではカートリッジは正しく支えられているとは 言いがたい、ピュアストレートアームの場合は 当然ながらよじられる率はずっと少ない。 その結果、トランジェントが良くなり、定位の正確さが増し、 強弱の再現性が向上するというわけだ。
別の部分で問題を抱える事になる。 それはトラッキングエラーの問題だ。 レコードがカッティグされる段階では カッターレーサーがレコード外周から内周に向けて 直線に辿って行く。 こうして生まれたレコード盤を有限の(回転)半径を持った トーンアームが再生する。 つまり、カッティング時は直線、再生時は円弧。 ここにトラッキングエラーが生じる事になり それが原因で起こる歪をトラッキングエラー歪という。 このトラッキングエラーを減らす為の工夫として オフセットアングルが生まれた。 オフセット角は1924〜5年に、英国のレコード誌「グラモフォン」 の技術編集のチーフ、P・ウイルソン氏が考案した物で、 針先をターンテーブルの中心から突出(オーバーハング)させ 角度を持たせる事でエラー角を極少に抑える事が出来るを立証した。 その方式が今日に至るまで継承されているのだが、 考案当初から反対派は存在した訳で、米ウエスタン・エレクトリック社 及び係累のビクトローラ。そしてエジソン社のプレーヤーも オフセット角を頑として受け付けなかったという。 77〜8年前にもオフセットを巡って賛否両論があったという事は さて置いて、オフセット角を全く無視した ピュアストレートアームは、その辺りの問題をどう考えているのか?。 ここでもう一度、「YSA−2技術解説書」に目を通してみよう。 (続く) *本日の日記に付きましては 別冊FMfan43号の江川先生の記事からの引用が 多数含まれている事を申し添えます。 尚、引用の文責はよっしーにあります。
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