limitedさんから、もう一本カートリッジを 拝借していた。 テクニクスEPC−P310MC。 T4P規格のMCカートリッジ。 専用シェルSH−90S付属。
音楽が実に楽しく聴けるというのが 一聴してわかる。 そしてすぐさま、あるカートリッジを思い出した。 昨年6月にボロンさんから拝借した 同じくテクニクスのT4Pカートリッジ EPC−P205CMK4だ。 両者には間違い無く同じ血が流れている。 205の音も素晴らしかったが、 310もまた素晴らしい。 とにかく気分壮快。 爽やかで、シャープに切れ込むが ヒステリックなところはまるで無い。 音の抜けは圧倒的に良く チリ一つ無い音場が展開する。 レンジは相当広い。 いや、物凄く広いのだが 一切強調感が無いので 下手をすると気がつかない。 感動的というのとはちょっと違って 感激的なカートリッジだ。
![]()
今の季節には最高?。 だが、しかし一方で 脂ぎった感じ、 ふてぶてしさ、 いやらしさ という表現は苦手。 何を聴いても 卸し立ての新品楽器で演奏しているように 聞こえるし、 演奏者は全員糊の効いた 白いシャツ、 アイロンの先がキッチリ出た 紺のスラックスを着ているかのように 思わせるところがある。 最近好んで聴いている 高橋達也のLPも 光がさんさんと降り注ぐ白い部屋で 学生が演奏しているかの様に聞こえてしまう。 一種の無菌室サウンド?。
世界は一変。 良くも悪くも、聴かせ所と聴かせ方を 心得た鳴り方になるから本当にカートリッジも奥が深い。 30Eが、それなりの人生経験を重ねて来た30代だとすると 310は紛れもなく10代。 汚れが無く、理想が胸に掲げられていて 真っ直ぐな視線を相手に向けている。 しかも、この10代は頭脳明晰な10代。 秀才を通り越して天才に近い。 仮に僕が音楽の先生で、 生徒にオーケストラの各楽器の詳しい説明をするのなら 絶対にこのカートリッジを使いたい。 そんな風に思ってしまうのでした。
何だかんだ言いながら 310には惚れ込んでしまったようだ。 30Eも優れたカートリッジだから どちらが上という事は無い。 30Eに似た音は日頃聴いているが 310的な音は通常自宅で聴けない。 聴きなれない方を聴いてみたいのは 人情というもの。 テクニクスらしいと言うのだろうか、 実に正確な表現をするところが お気に入り。 では、これ一本でオーディオライフ全てをまかなえる かと言うと、そうはいかない。 でも、MCとMMの違いこそあれ こうなると100Cあたりを聴いてみたくもなる。
1号機のSL-10に 付属していたカートリッジを単売化した物。 つまり専用シェル付き。25,000円。 ピュアボロンカンチレバー。 ’84年(’83年?)にはMK2が登場していて 価格はシェル込みで27,000円。
ところで、これは、、、?。
![]()
皆さん先刻お見通し?。 テクニクスが’81年(’80年末?)に放ったフルオートプレーヤー、 SL−QL1 当時79,800円です。 テクニクスは’80年にジャケットサイズの フルオート・クォーツロックプレーヤー SL−10をリリース。 QL−1は、SL−10の姉妹機SL−7を原型としながら、 スタイルを標準的なものに改めた物、と考えるのが宜しい。 更に、QL1からクォーツロックを外したSL−DL1(59,800円)も 殆ど時を同じくして登場。 テクニクスが、この分野に力を注いでいた事が伺える。
アナログレコードプレーヤーの在り方が問われていた、 あるいは模索されていた頃と解釈して良いのではないだろうか。 ADプレーヤーの省スペース化、 扱いの簡便さの追及は 振り返ればかなり以前から追求されていたとは思うが、 SL−10に始まるテクニクスの一連のラインアップは 一つの究極とも言える。 当然、各社右へ習えで一斉に追従したが、 あくまでも物真似。 洗練されたコンパクトフルオートプレーヤーとして テクニクスSLシリーズは 日本オーディオ史に、その名を残したと言える。 敢えてその後記憶するに値する物を捜すと パイオニア等がリリースした トレイ方式のプレーヤーだろうか。 いかにコンパクトに作ろうとも SLシリーズの形式ではラックの中にプレーヤーを 納めて使う事は不可能。 この難題を解決したと言う点で PL−Xシリーズ等は見るべきものがある。
さて、理屈ばかり書いていると 飽きられてしまう。 実際の音の方はどうだろうか?。 このプレーヤーには 本来P−202CというMMカートリッジが 付属しているのだが 今回はP310MCを使用。 そう、直前まで単体で使っていた310MCを QL−1にプラグインしてみたのだ。 フォノイコは拝借中のLE−109。 パッシブアッテネーター使用も変わらず。 レコードの方も、直前までSP−10U+DV−507で 聴いていた「魅入られた風景」 (長岡鉄男・外盤A級セレクション第2集に詳しい) を使う。 ダストカバーを空けてレコードを載せようとすると ターンテーブル回りに余計な物が何も無いので 大変スッキリして見える。 リニアトラッキング形式のアームは ダストカバーに組み込まれているので こういった事になるのだ。
![]()
と言いたいが、実際にはカバーを閉めたら スイッチを押すだけ。 実にあっさりと音が出てしまう。 さすがに快適だ。 そして、その音の方は?。 キチンと310MCの持ち味が出て来るから 素晴らしい。 煩い事を言わなければ これで何の不都合があるのかい?と言いたくなる位だ。 だが、しかし、本気で立ち向かうと あらゆるファクターにおいて、 SP−10U+DV−507のシステムとは 差がついてしまう。 もちろん、これは仕方ない事で、 違いが出てくれなければ 自作プレーヤーの立場は無いと言うものだ。 そもそもQL1は、二等辺三角形の頂点に座って じっと装置の方を睨みながら音に聞き入るなどという スタンスには相応しくないプレーヤーなのに違いない。
ところでLE−109である。 優秀なフォノイコラーザーである事は 拝聴し続けてはっきりした。 で、実は宿題が出ていた。 入力1と2がある事は既に説明させて頂いた。 ところが、この二つの入力で音が相当に違うと言うのだ。 で、早々に探りを入れていたが その時はピンと来なかった。 こういう時は焦ってはいけない、という事で 日を置いて再挑戦!。
![]()
109の入力1と2で、差し換え試聴をする。 この時まず戸惑うのが、 両者(入力1と2)で音量がなかなか同一にならない事。 いやしくも音の違いを探ろうというのに、 聴取レベルが不揃いではいけない。 ところが、これがなかなか揃わない。 入力1の方は、シンプルストレートに徹しているので 弄る要素はない。 対して、入力2の方は、 ゲインが+32dB、+22dB、そして0dB(MM対応) の3段階。 更にアッテネーターがあって −20dB、−10dB、0dBとなっている。 インピーダンスも選択出来て、 100Ω、40Ω、3Ωとなっているので 以上併せるとかなりの調整が出来るのだが どうしても入力1と同一の音量にならないのだ。 いや、正確に言うと、音量を合わせる事は 不可能ではない。 でも、音量が合うと、今度は入力2の方の 音が死んでしまう?。 特にアッテネーターは曲者みたいだけど この辺りがややっこしい。
音を出すと、これはかなり音が大きい?。 いや、単純に音量が大きめというのもあるが なんか元気が良すぎる?。 眼前に音が迫り来ると言えば聞こえは良いが、 やや荒れ狂う感じが無きにしもあらず。 これなら入力1を使う方が良い。 結局普通にMCカートリッジを使うなら 入力1を優先するのが良いようだ。 ただ、入力2の方も好みと カートリッジの相性さえ合えば問題があるわけではない。 細かい調整、選択は入力2でしか出来ないのだから それを楽しむ、あるいは合わせる必要がある時は そちらを選ぶのが良い。 僕は持っていないが、 3ΩタイプのMCなどは入力2の方で使うしかないだろう。 もちろん、MMは入力2でしか使えない。 個人的には入力1を優先して、 1ではどうしても対応出来ない物に限って 入力2を使いたい気分だ。
一つ前の日記に戻る。 日記のMENUへ。 表紙へ。
|