12月のある日の事、 北海道のHGさんからカートリッジ&シェルが届いた。 先日来、アントレーと言うメーカーの事が、 日記&掲示板で話題に(?)なっているが、 HGさんはアントレーについては大変詳しい。 ついに、この度は「お試しあれ。」と言う事で アントレーEC-10、及びオルトフォンVMS-30MK2 (共にシェルはアントレー) を拝借する運びとなったのだ。
残念ながら、このカートリッジについて の資料と言うと、「ステレオのすべて’79」の 同社の広告しかない。 それによると、 当時23,000円。 周波数特性:10~50,000Hz 出力電圧:0,24mV 出力バランス:1dB クロストーク:25dB以上 コンプライアンス:15×10‐6cm/dyne インピーダンス:3,5Ω 針圧:1,5gr±0,3gr 針先:0,3×0,8milソリッド楕円針 自重:5,8gr となっている。 ちなみにEC-10はEC-1に継ぐ、同社の2号機。 同じ広告にEC-1とトランスのET-100が載っている。 もう一つ付け加えるならば、 この広告の時点で会社名は 株式会社ソルティア アコースティックとなっており、 旧社名 株式会社アントレーと但し書きが付けられている。 同誌は’78年暮れの発売の筈なので、 同年社名変更があり、アントレーはブランド名となった事は 間違い無いだろう。 その他に自分で見てわかる点などたかが知れているが、 カンチレバーの先端は曲げて潰したタイプ。 スタイラスチップはそこに穴を開けて 長めのダイヤチップを差し込んで接着したタイプの様子。 そこまでは拡大鏡で覗いてわかった。 アントレーは、オルトフォンタイプのMC一筋のメーカーだったと言うので、 このカートリッジもトランスで受けるのが筋だとは思うが、 まずはPRA-2000のMC入力(ヘッドアンプ)で試させて頂く。 ちなみにアームはダイナベクターDV-507。 シェルは前述の通りアントレーで、ES-10と言う型番の物。
とてもクールで見通しが良い。 そして、素直。 思わずうっとりしてしまう。 画に例えると、階調がとても滑らかと言う事になるのだろう。 引っ掛かる所、どこか強調感のある所と言うのがまるで無い。 あまりにもスムーズで拍子抜けしてしまうくらいに癖が無い。 繊細感は、物凄い。 文句の付け様も無いのだが、 あえて足りない所を捜せば、 超低音の圧力は、どうしても不足気味。 脂っこさとか、ギラついた感じとか、 粘っこさと言う表現は苦手の様子だが、 そう言った物を望む人には、他のカートリッジ、 他の組み合わせがあるだろう。
このモデル自体は’81年の発売。 ただし、始祖に当たるVMS-20シリーズは ’74年には発売になっている。 VMSとは、 ヴァリアブル マグネティック シャントの略。 MI型である。 一方にコンコルドシリーズを擁するオルトフォンの、 こちら(VMSシリーズ)は スタンダード路線とでも 言うべきか。 オリジナルの30の振動系とダンパーを改良。 インピーダンスを低減(800Ω)したのが 30mk2。 などとわかったような事を書いたが、 正直言ってこのシリーズには大変疎く、 拝聴してから後、慌てて資料をひっくり返したのが 本当のところ、、、。
これまた、実に素直&スムーズ。 それでいて充分パワフル。 オルトフォンサウンドと言うと、 もっと脚色された、色気たっぷりな物と言う 先入観があったが、とんでもなかった。 いわゆる正統派サウンドである。 超優秀だがそれを露わにはしないタイプ。 スーパーカーのエンジンを積んだ、4ドアセダン。 あるいは影で努力する花形 満か?。 MC-L1000あたりだとソースは選ぶし、 その他の機器も選ぶ。 出て来る音は、時に超エキセントリックと言う事で 好みに合わなければ、これっぽっちの価値も無い、 などと言う事に成りかねないが、 VMS-30にはそう言った心配は無さそう。
良くわかった人が作ったカートリッジなのだろう。 例えばピアノのハンマーが弦に当たる感じ。 弦楽器の胴の鳴る様。 太鼓の皮の震える様。 そう言った物がありありと目に浮かぶような 表現力を持っている。 オルトフォンの名は、伊達じゃあないのだ。 改めて、恐れ入りました。
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