コラム〜 

HMA−9500 

 HMA-9500U(改)


はじめに

HMA-9500、HMA−9500Uとは何か?。

HMA-9500は、1977年日立より発売されたパワーアンプ。
最大の特色は、世界初のパワーMOS FETを使ったアンプ、という事だろう。
パワーMOS FETとは何かについては省略。
いくらでも文献が出ているし、それの受け売りをここに書いてもしょうがない。
それに、かえって僕が馬脚をあらわすだけになりかねない。
(僕の電気知識は、5段階評価で、2位だろう)
HMA−9500Uは、9500のマイナーチェンジバージョン。
1979年発売。
基本的な作りは、前作を踏襲しているが、
新バイアス回路、ローノイズFET、低インピーダンス基板の採用、
新開発コンデンサーの採用などもあり、共通部品は
案外少ない。


HMA−9500、9500Uの地位を確固たる物にしたのは、
何よりオーディオ評論家、長岡鉄男氏が
リファレンスパワーアンプとして
足掛け20年に渡り使っていたという事実だろう。
HMA神話、などという言葉があるくらいだ。

優れたアンプは数あれど、
生産完了から10数年が
過ぎてなお、これほど持てはやされるアンプも
そうはないだろうから、実に幸福なアンプと言えるかもしれない。


HMA−9500 と HMA-9500U の
相違点。


HMA−9500は、約3年でHMA-9500Uにバトンタッチ。
今回、偶然にも両者を揃って手に入れる事が
出来たので、どこがどう違うのか探ってみた。

まずは外観から。

正面より。

こちらがHMA-9500。
電源スライドスイッチが丸型。

エンブレムの、power mos fetの文字の色が
白。

その左にLo−D MODEL HMA-9500
DC STEREO POWER AMPLIFIER とレタリングで
表記されている。


こちらはHMAー9500U。

電源スライドスイッチは角型。
(ちなみにスイッチ自体は共用部品。
多分HMA−8300とも共用)

エンブレムのpower mos fetの文字が朱色。

Lo−D MODEL HMA−9500U
DC STEREO POWER AMPLFIER
の文字はレタリングではなく、エンブレムに刻まれている。

(なお、電源トランスが微妙に違って見えるのは
私の9500Uが改造型だからである。
詳しくは、オーディオ日記ご参照の事)


今度は背面より。

こちらがHMA−9500。

電源コードが細い。
長岡鉄男氏は、このACコードを太い物に交換して
使用しておられた様子。
(共同通信社刊 「オーディオA級ライセンス」
ご参照の事)

ラベルが貼られており、それによれば
定格消費電力は350W。


こちらはHMA−9500U。

ACコードがやや太い物に変わっている。

定格消費電力は360Wと、10Wアップ。




両者の違いがおわかりいただけるだろうか?。
右が9500の、左が9500Uの
それぞれのACコード。


上が9500の、下が9500Uの、それぞれの
トランジスター(MOS−FET)カバー。

9500Uの物のみ、通風用のスリットが刻まれている。

、、、のは、いいがおかげでFETに埃が積もりやすいのも
事実。


今度は真上から。

こちらが9500。
電源トランスの2次側は48Vと69Vで
これは9500Uも同じ。
異なるのは1次側で、中点に100Vが来て
両端に120Vと0Vが来る。

ケミコンは18000μFが4本。


こちらは9500Uの上面。

私の物はトランス及びトランスケースを
変えてしまっているので参考になりにくいが、
元のトランスの表記では、2次側は9500と
同じだが、1次側は中点無し、両端に100Vと
0Vとなっている。

ちなみに電源容量は211VA。
これはトランスを外したからこそわかる事で、
トランスケースサイドに貼られたシールに書いてあった。

ケミコンは15000μFが4本。
ただし、18000μFの物も存在する様子。

部品番号で言うと、CHEM CON 465が15000μF。
CHEM CON 478が18000μF。


続いて内部の様子。

こちらが9500の内部。

当たり前だが9500Uより部品点数も少ない。
Λコンデンサーも登場していない。

ちなみに長岡鉄男氏は、9500にもΛコンを
4本投入して使っていた。
(別冊FMfan 21号、最新プレーヤーフルテスト
の項 参照)
どこのコンデンサーを交換していたのかは不明。


こちらが9500Uの内部。

一見して基盤の色が違う。
銅箔厚70μのガラスエポキシ基盤を
採用。
Λコンデンサーも、数えると10個入っている。
Λの他にも、新開発平滑用コンデンサーが採用
されている。
部品点数が多いのは、新バイアス回路
(ノンカットオフ バイアス回路)を採用したのが
最大の要因か。

なお、HMAの特色の一つとして、入出力端子の−側から
シャーシアースへ抵抗を介している点があるが、
この抵抗値も9500では10Ω。9500Uでは10Ωと
18Ωに変更されている。


これがパワーMOS FET。
HS−8401CとHS8402C。
(Lo−D マーク入り)

その後1981年9月より、国際登録
ナンバー(Lo−Dマーク無し)の物、
2SK135、2SJ50に変わった。
(理由は品種統一のため)

*ただし、私は2SK、2SJの物は
実際には見た事が無い。
あくまでも資料よりの抜粋。
9500Uオーナーの方がいらしたら
ご確認してみて下さい。


比較試聴

音の方はどの様に違うのだろう?。
2台のHMAを並べて切り替え試聴をしてみた。


さすがに兄弟機。一聴して驚くほどの違いは無い。
中低音の圧力のような物は9500Uの方が勝ると感じるが、
9500だけ聴いている限りは、
その点についても、特に不満は感じない。
そもそも9500シリーズの持ち味は、量や厚みよりも、
その独特の繊細さと切れ味にある。
そこに惚れ込めない人にとっては、どうでもいいアンプ
という事にもなりかねない。
そして、その長所を活かす(別の言い方をするならば、
短所を隠す)ためには、
強力な磁気回路と、軽くて丈夫な振動板を持った
スピーカーユニットが最適なのだろう。
パワーアンプもスピーカーユニットも、良き伴侶に
恵まれなければ本領は発揮できないものなのだと、
今更ながらの古典的結論に行き当たってしまう。


そんな事を思いながら、真剣に音を聴いていたら
なんだか録音現場に紛れ込んでしまったような
錯覚に落ちいっていた。

すぐそこで、演奏者のブレスが聞こえる気がして、
いつのまにか試聴をしているという事を
忘れてしまっている自分がいた。

9500シリーズと言うのは、そういったアンプなのだ、
と言ったら誉め過ぎであろうか?、、、。


今回、特によくトリップさせてくれたCD。
小川 洋さんの録音による。

「Silver Moon」 (左)
(グリーンストリングス E−Mail oif3262@pluto.dti.ne.jp)と
「INVITATION」 (右)
(おーらい れこーど  п@090−8389−8408)

HMAについて、私の知らない情報もたくさんあるかと思います。
また、音の感じ方も異なる方も大勢いらっしゃるでしょう。

お手持ちの情報、ご感想などがありましたら
どうぞ、掲示板へ、、、。


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