さて、ここからは比較的最近起こったことを書こう。 いつまでも昔話に浸っていてもしかたあるまい。 1999年9月のある日、突然一本の電話が入った。 (まあ、電話と言うのはいつだって突然来るものだが。) 電話の向こうの人はこう言った。 「こちらオーディオベーシックの小川と申します。このたびはアンケートで読者訪問をご希望いただいてありがとうございます。つきましてはご都合よろしい時にお邪魔させて頂きたいのですが。」 、、、?。 読者訪問?、なんの事だろう?。 まてよ、たしかにオーディオベーシックのVol12のアンケートには答えたぞ。 しかし、、、。そう言えば読者訪問を希望しますか、の項目でします、に丸をつけたような、、、。 だが、しかし、いまだかつてそれで反応があったためしがないのだから、こっちはいい加減に希望したんだよ〜、と言いたかったが、そんな事今さら言えるはずが無い。 ああ、はい、とかなんとか、曖昧な返事をして、近日中に訪問希望日を連絡すると言って電話を切った。 「おい、大変だ、家に取材が来るぞ。」と、まずかみさんに告げ。 この時はかなりうろたえた様子だったはずだ。 しかし、かみさんは至って冷静。大体こういう時は当事者で無い方が落ち着いているもんだ。 とにかく私は舞い上がっていた。 嬉しくて、ではない。うかつに石を投げたら、見事によその家の窓に当たってガラスを木っ端微塵にしてしまった子供のような心境だった。 (まずいことになった、、、)。 しかし、今更後戻りは出来ないのである。 さて、取材は1週間後に決まった。 本当はもう少し時間が欲しかったが、双方の都合が合うのがそこしかなかったのである。 もう一つおまけに、試聴ご希望の品があれば、ご用意しますが、と言われて、これといって思いつかなかった私は、うかつにもソニーのSACDプレーヤーをリクエストしてしまったのだ。 旬の物だけに押さえられるかどうかわかりませんが、、、と言われたが、取材にかこつけて普段聴けない物を聴こうなどとは思っていないので、その時は別な物でいいや、くらいに構えていたら、どういうわけか無事借りることが出来た様子。 それは結構。しかし、その後がいけない。 「当日SACDと通常のCDの比較試聴などして頂こうかと思います。」、と言われてもう一度後悔。 それで違いがわからなければ、私の立場はどうなってしまうんでしょう?。 まあ、いい。とにかく取材に来ていただく方達に不快な思いだけはさせてはいけない、と言うことで、せめて掃除だけは徹底的にしようと相成った。 音の方は今更下手にいじらないほうがいい。 とは言うものの、よくよく見てみると気になるところのオンパレードである。 SPコードがいい加減。電源コードもいい加減。極性なんて、いつ合わせたっけ?。 それらはなんとか格好つけておかなければいけない。 あと、かたづけはもちろん、愛聴盤は、などと言われたに時困らないようにAD,CDともピックアップしておく。 その一方で、たくさんある機材のコレクションでも見てもらってお茶を濁そうなどと考え、日ごろはタンスや押し入れにしまわれっぱなしのもの達を引っ張り出しては磨きをかけることにする。 ちょうどこの頃、パイオニアのM−22のパワートランジスターが手に入った事もあって、修理完了目前となっていた。 どうせなら取材に間に合わせようと張り切る。 この決意がまた余計だったようで、せいぜい一、二回行けば済むはずだった秋葉原に、1週間ほとんど毎日通うはめになってしまった。 毎日深夜までかたづけ。調整、アンプの修理。 こんなに集中したのは、オーディオを始めて以来の事だ。 大変だった。しかし、思い返しても楽しい毎日だった。 取材が来るから、という大義名分があればこそ、家族も邪魔はしないのだ。 さて、取材当日が来た。 拙宅においで頂いたのはお二人。ライターでありエディターである小川洋さん。カメラマンの山本耕司さん。 取りあえずメインシステムのある部屋、(と言ってもこの頃は思うところあって食卓にシステムは置いてあったのだが)にお通しする。 最初に一応インタビューのようなものがあり、ついで写真撮影。 俺の写真なんてどうでもいいんだよ、と思うが、そうもいかない。ご要望におこたえしてポーズもとる。 つぎにいよいよSACDとCDの聴き比べ。緊張の一瞬。 SACD−1は前々日帰宅したら届いていたので取材の前の日は真剣に聴いた。 あまりに真剣に聴きすぎて頭が痛くなったほどだ。何事もほどほどにしなければいけない。 SACDとC同一タイトル、という事でまずは高橋美智子の「21世紀へのプレリュード」。 コントラバスマリバの鳴る辺りを比較試聴。 う〜ん、違いがあまりわからない。 これは我が家のシステムが低音不足なためと思い、素直にその事を告げる。 しかし、違うトラックでは音の重なりなどが良くわかり、ホッと一安心。 次の「DAISHINデビュー」、はもっとわかりやすい。違いは明白。 コメントを述べて、これで一安心。 それにしても、SACDの潜在能力は恐ろしいものがある。 お借りして聴いたケイコのリー「ビューティフルラブ」なんか生々しいの一言だ。 問題はソフトが出揃うかどうかだろう。 さて、ここから当方手持ちのソフトをあれこれ掛けるが、予想どうり低音不足を指摘される。 正確に言うと重低音不足と言う事になる。 ここでは詳しく触れないが、これはなかなか改善が難しい問題である。 少なくともその日のうちに、どうこうと言うレベルの問題ではない。 小川さんから、共鳴管を多少カットしてでも開口部をオリジナルの位置、(つまり上方)に戻してみては、などとアドバイスを受ける。これは試してみる価値がある。 何を隠そう、小川さんはその昔音元出版のAVレビューにてネッシーJrの企画など立てた人。 その時作られたネッシーJrは自宅にも持ちこんでお聴きになったそうだ。 今もD−55やHMA−9500を使うという、言わば長岡党の一人。 だからおっしゃる事も私にとってはわかりやすい。 色々お話を伺う内に、私も俄然やる気が出てきた。今まで一つ伸ばしにしてきたが、いよいよ何とかしよう、という気になったのだ。 それだけでも取材に来ていただいた甲斐があったというもの。 まあ、ずっと音だけ聴いていたわけではない。 小川さんも山本さんも、大のオーディオマニア。話しも色々はずむ。 途中から私も乗って来て、サブシステムの部屋にもご招待してそっちも見てもらう。 山本さんがストレートアームのお話などされたので、GT−2000についたYSA−2でも見てもらおうと思い、手を引いて拉致して行ってしまったのだ。 ついでにM−22や、パッシブコントローラー、DATウオークマン、TC−D5M、JBL075ツイーターなど一山もお目に掛ける。 山本さんには、私が物マニアであることをすっかり見抜かれてしまう。(誰だってわかるか?) こちらも調子に乗って、入手方法やらそのローコストぶりも語り始めたらお二人とも目が点になっていた。 例えば愛聴盤と言う事でご紹介頂いたデイブクルーシンの「ディスカバードアゲイン」なんか入手価格100円である。(一応シェフィールドのダイレクトディスクなんだけど、、、)これじゃあ、たいてい驚くか。 そんなこんなで、あっという間に時間が過ぎてしまった。 本当はもっともっと話していたかったのだが、こちらが遠慮してしまった。 最後にお願い、と言うことで2階の弟のAVルームも見てもらう。 「取材が来るから、お前の部屋も見るかもよ。」なんて言ってかたづけをさせてしまった手前、まるっきり出番なしではさすがに気の毒だと思ったからだ。 まあ少しだけ、と言うことでデモンストレーション効果のある物をドーンとお掛けしたので、お二人とも金縛りにあっていた。(お気の毒) お二人を車で駅までお送りして、楽しい時間は終わり。 家に帰るとかみさんが、今日は外食でご馳走してくれるんだよね〜、という顔をして待っていた。 今日ばかりは異論がない。 焼肉やさんでビールを飲んだら、あっという間に酔いがまわった。 家に帰ったらふらふら。1週間の疲れがどっと出た様子。 でも、かみさんも「本当に楽しかった」、と目を輝かせていたので、よかったよかった、と思う私であった。
某月某日、栃木県O市に小川さんを訪ねる。
某月某日、(株)フェニックスより電源トランスが到着。
某月某日、群馬のKさんよりお電話をいただく。
某月某日、岐阜のYさんからお電話をいただく。
某月某日、オーディ装置のお引越し。
某月某日、一本の電話が入った。 お相手はと言うと、なんと「デジビ」の編集部の方。 用件は、というと読者訪問をさせていただきたい、との事。 「?」、そして、「!」。 前回「オーディオベーシック」の読者訪問のお電話をいただいた時も驚いたが、これまた驚き。 なんのこっちゃい?。立て続けに、しかも同じ共同通信社の雑誌の読者訪問に当たるとは(!)。 念のために申し上げるが、私は共同通信社に何か縁故があるとか、そんな事は一切ない。 確かに「デジビ」の読者アンケートには回答を送った。しかし、そんな事は私にしてみれば日常ごく普通にやっていることで、ぜひぜひ拙宅にご訪問下さい。美味しいものをご用意して待っています、なんぞと書いて送っているわけではない。ただ、淡々と書いてお送りしているに過ぎない。 第一、「デジビ」第2号のアンケートには、読者訪問を希望しますか?、なんていう覧すらない。回答のしようもない。 しかし、冷静になって考えると、第一号のアンケートの際にそんな欄があったような、、、。 それにしても、私の方はついこの間取材に来ていただいたばかり。ネタには事欠かない自信もあるが、いかにせん申し訳ない。 それに「デジビ」、は明らかにビジュアル寄りの雑誌である。私とて、これまでテレビを中心に、お気軽なAVは散々やって来たが、とても取材に耐えるような内容ではない。 そこで考えたのが、同居している弟のAVシステムを見てもらう事。 一応三管が入っているし、DVD、LD共にソフト、ハードが山積みになっている。 そっちの方が遥かにインパクトがあろう。 一瞬にしてそう考え、ご連絡いただいた共同通信社のOさんにその旨伝える。 Oさんも「では、その方向で。」、と快諾してくださった。 これで話しは決まり。 だが、しかし、我が家の2階はゴミの山、山、山、、、。一体どうやったらかたづくのか?、皆目見当もつかない。ましてや、自分の部屋ならともかく、家族であっても他人の部屋。 そう簡単には手を出せない。まあ、なるようになるさ。 某月某日、取材用貸し出し機材到着。 液晶プロジェクター、ソニーVPL−VW10HTとキクチの立ち上げ式スクリーン、UP−80Gだ。 プロジェクターの方はともかく、スクリーンは調達しておかないと、なんぼなんでもプロの人を相手に、紙のスクリーンではまずいだろうと思いリクエストしておいた。 この頃にはかたづけも大体進んでいたので、さっそく視聴。 あ然としたのは、最新の液晶プロジェクターの能力の高さだ。 我が家の旧型三管などは比較にならない。まるで次元の違う画が映し出される。 超高解像度。開いた口がふさがらない。 もちろん、お借りしたプロジェクターの方はプログレッシブ対応なので、その点だけでもアドバンテージはあるが、もっと根本的な所で差があるようだ。 しかも設置は容易。ポンと置いてピント(フォーカス)を合わせるだけ。 三管のように、ちょっとでもずらしたら一から再調整、なんてことは無い。普段は棚の上にでもかたづけておいて、見る時だけ引っ張り出すなんてことも朝飯前。重量もわずか8キログラム。ファンノイズも気にならない。 白い壁に投射する形でも、まず問題はないだろう。なにせ、我が家の紙のスクリーンでも素晴らしい画を見せてくれたくらいだ。 弟は、もうもとの三管は観る気を完全に無くした様子。無理もない。 唯一我が家の三管が勝る部分と言えば、黒がキチンと沈み、黒の中に階調がきちんとあるところ。 液晶では黒が描けない、を痛感した次第でもあった。 ただぞれだけ、と言ってしまえばそれまでだが、黒、と言うか闇のシーンがない映画は無い。 オーディオに例えたら超低音がスッパリ切れてしまっているようなもの?。 雰囲気とかが欠如してしまう感がある。 もっとも、これが克服されれば、誰だって三管など買わず液晶を選ぶようになるだろう。 某月某日、藤原陽祐先生と共同通信社の国広さん、そしてカメラマンの中川さんが到着。 取材の当日が来たわけである。 藤原先生って、どんな人なんだろう、と多少心配もあったが、お会いしてみたら至って気さくな方だったので一安心。 兄に似ず(?)、愚弟の方は人見知りも激しいので、一体全体取材が成立するのかどうか、陰ながら心配していたのだが杞憂に終わった様子。 評論家対読者、という感じではなく、AVマニア同志が語り合っているような雰囲気。 なんとなくアバウトな感じで、そこがピュアオーディオの世界とは異なる所かもしれない。 ラテンの匂いがする。 話題はもっぱら映像の方。音のチェックは無し。 これは多分、弟の部屋にあるSPも長岡氏設計の自作システムであるからだろう。 市販品ならともかく、オーディオ界の重鎮(?)の手による物に批評を加えるような事はしたくないのが道理。それともまともに聴く気がしなかったかな?。
今回の私は完全に裏方。 弟と藤原先生が楽しそうに話すのを、指をくわえて眺めるだけ。 なかなかさみしいものである。 しかし、まあ、このさみしい思いを、前回は弟にさせたかと思うと文句も言えない。 映像のチェックの開始。 一番気になっていたキャンパスペーパーとベニア板による自作のスクリーンについては、あまり問題にされなかった。 情けを掛けていただいたと言うのが本当の所だろうが、このスクリーン、実際の所案外いけるのである。藤原先生も、予想外に使えるので驚いたのではないだろうか?。 コストパフォーマンスは最高。これだけは保証する。 問題はプロジェクターの方。 と言っても、細かい調整には突入しない。 追い込みはまずまず、という判断もあったろうし、三管の調整など始めてしまったら時間が足りなくなってしまう。 この辺は段取りに抜かりが無い。(?) あっさりとVW10HT登場。 あらためて、こちらの方が断然いい。 途中でライズアップスクリーン、キクチUP−80Gも登場。一段のグレードアップとなる。 しかし、映画マニアの弟にしてみれば黒が描けない事には満足とはいかない。ただ、これは液晶では解決不可能な難問である。 これを多少なりとも改善するための方法として、藤原先生よりご教授いただいたのが部屋を間接照明などでほんのりと明るくするというテクニック。 つまり周囲を明るくする事で、相対的に黒を引き締める、と言うわけだ。 さっそく私の部屋から、スタンドライトを運んで来て試す。 なるほど。ただし、今度はいささか明るすぎる。 やはり、やっつけでは無理だ。調光器など使って、適切な照度を求める必要がある。 結論からすると、やはり多少の灯りを残したいリビングシアターであれば液晶は好適。 それ以上を求めるパーソナルシアターでは三管と格闘するのも良いだろう、と言う事。 さてさて、弟のAVライフは、数多くのマニアを見てきた藤原先生から見ても結構特殊な部類に入る様子。 外盤ソフトの入手方法なども取材されていった。 ただ、この辺の事はあまり雑誌には書かない方がいいですよ、とこちらから進言させていただいた。 なぜかと言えば、雑誌のスポンサーでもある国内メーカーの利益には反するやり方だからだ。 紹介したからと言って、どれほどの人が同じ事をするか、たかが知れているがさわらぬ神にたたり無しであろう。 まあ、たいして広くないスペースで約2時間、皆様お疲れ様でした。 雑誌の出るのを楽しみにさせて頂きましょう。 それにしても、プロジェクターとスクリーンを返却するのが辛い。
2月20日、山本さんのスタジオを訪ねる。 山本さんとは、もちろん拙宅にご訪問いただいた、カメラマンの山本耕司さんの事だ。 この日は私の他にも二名のお客さんがいた。 お一人は横田兵作さんと言って、奇しくも私と同じ号のオーディオベーシックの読者訪問で登場された方。 もうお一方は、緒方一さん。 横田さんの職場の後輩にあたる方で、横田さんの記事の所にも、ご一緒に登場されている。 実は横田さんも、その昔山本さんが別冊FMfan誌で、長岡鉄男先生のクリニックで取材を受けた際に誌面に登場されていた。つまりお二人は旧知の仲。 私はわけあって遅れて登場したので、挨拶もそこそこに、まずは山本さん宅の音を拝聴する事になる。 「僕の所には自衛隊のレコードとかは無いからな〜。」とかなんとか言いつつ、CDをお掛けいただく。 う〜ん、これまた素晴らしい音が出ている。 印象的なのは奥へおくへと広がっていく音場と、揺るぎの無い定位。 山本さんのホームページをご覧いただければわかるが、スピーカーのセッティングはちょっと変わっている。 いや、変わっているという言い方は妥当ではないだろうが、何しろスピーカーとスピーカー背後の壁の距離は約3mある。 スピーカー後方の壁からの反射の影響を極力避ける方向で、これが独特の音場展開に一役買っている事は間違い無いだろう。 これもスタジオと言う、日常生活からは遊離した空間だからこそ可能なセッティングとも言える。 大変羨ましい。 それにしても、山本さんの装置のラインナップはハイエンドオーディオ的。ほとんどステレオサウンドの世界である。 スピーカーはKEF105 3S。これにスーパーツイーターRT−R9と、スパーウーファーYST−SW CDはCEC−TL2にゴールドムントmm10。プリはオーディオカレント、パルティータC1。 フォノイコにパスラボAlephone。パワーアンプはゴールドムントmm8。 アナログプレーヤーはゴールドムント STUDIETTO。 (詳しくは山本さんのホームページをご覧になる事をお勧めする。 http://www.tcn-catv.ne.jp/~studio-k/myaudio.htmlである。) ただし、金にあかして、と言う買い方ではない。 正確に紹介するのは困難だが、実に上手な買い物をされている。 (僭越だが、この辺の買い物感覚には山本さんと私、相通じる所があるような、、、。) さて、この日はハードスケジュール。 お昼を少し過ぎた所で、緒方さんの車にターゲットオーディオのスピーカースタンドとCECのトランスポーズを積み込んで、横田さん宅へ向かう。 横田さんのお宅はオーディオベーシックの記事にもあるように、千葉市の新築マンション。 リビングの一角にオーディオ装置が鎮座している。 「わ〜、雑誌で見た通りだ。」と馬鹿みたいだが感激する。 まず、そのままの状態で音出し。 これまた目を見張るような音が出てくる。 チャリオのアカデミーワンと言うスピーカーは実にコンパクトなのだが、出てくる音は豊かの一言に尽きる。 能率も決して高くない、どころかかなり低いのだが全然そんな気がしないのは、横田さん自作の管球式アンプのドライブ能力が相当高いからだろうか。 (これに比べてうちの音はだいぶバランスがよろしくない。密かに反省。) さて、いよいよ切り替え試聴。まずはトランスポーズをCECのTL−2に変える。 横田さんはフィリップスのLHH700をトランスポーズ代わりにして、DACはエソテリックのD−3を使っている。 読者訪問の段階では普通にLHH700を使っていらしたのだが、取材用に持ち込まれたビクターのXL−Z999EXの音にショックを受けて、D−3の中古を衝動買いしてしまったとの事。 いっその事ビクターを買った方がよかったのでは?、と山本さんに突っ込まれていたが全ては後の祭。 でも、僕にはその衝動買いの気持ちもよくわかる。 さて、トランスポーズを取り替えてみてどうだったか?。 一言で言うと、演奏にやる気が出てきた感じ。 フィリップスも、それだけ聴いている分にはなんの問題も無いが、CECを使った状態と比べてみると、今一つ冷ややかな表現という事になる。 どうも冷めていると言うか、端的と言うか、本気を出していない演奏のように聞こえてしまう。 いつも思うのだが、人間の耳と言うのは欲張りな物。 知らなければそれで十分満足だった筈なのに、一度前進してしまうと後戻りは出来ない。 協議の末(?)トランスポーズに、やはりエソテリックのP−2(S無しで良い)を中古で捜そうと言う事になった。 この原稿を書いている時点で、あれから1ヶ月半位が過ぎていますが、横田さん、本当にお買いになったのかしら?。 さて、もう一つ。重たい思いをして運んできたターゲットオーディオのスピーカースタンドを設置。 と言っても、これまでお使いだったタオックだって、充分重い。 でも、新しいスタンドはさらに重い。と言うかクソ重たい。 こう言う作業をやる時は、男手が多いに越した事は無い。四人がかりで交換。 いざ、音出し。 「、、、、。」 これは困った。相当な変化である。トランスポーズの違いなんかより、遥かに大きい変化だ。 スピーカーの足元を固める。 この基本がいかに大事か、思い知らされた一瞬であった。 アカデミー1はますます快調で、もう堂々たる音を轟かせて(?)いる。 無意味にデカイスピーカーを使いたがる輩(あ、俺の事?)に聴かせてあげたい音である。 そんなこんなで時間は過ぎるが、これで終わりではない。今日は実に具の多い、オーディオ三昧の一日なのである。 タオックのスタンドは緒方さんの所に行く事になっているので、それを車に積んで、もう一度山本さんのスタジオへ。 千葉から東京への移動である。 今度は横田さんの手で組み立ったばかりの上杉アンプを試聴するのである。 もちろん横田さん宅でも聴いたが、とどめに山本さんのスタジオで試聴する手筈となっている。 さて、とっぷりと日も暮れるころ、スタジオに到着。 真空管を差して、ケーブルも差して、いざ音出し。 「、、、、。」 悪くは無いが、やはりまだまだ遠慮勝ちな鳴り方。 しかし、これは無理もない。今まさに、生まれたてのアンプなのである。 エージングゼロで評価されたのでは、アンプだって不本意。 それが何より証拠には、一時間近く鳴らしていたらかなりほぐれて来た。 と言う所で、オーディオ尽くしの一日も終わり。帰路に着く。 なにかと収穫の多い一日であった。 移動の車の中でも、面白い話しがたくさん出たが、書ききれない。 山本さん、横田さん、緒方さん。それぞれにオーディオを軸に、人生を楽しまれている。 素晴らしい事ではないか。 ついでに、と言うか、おまけにと言うか、横田さんからFE−206Sをお譲りいただいた。 結局またしても物が増えたのも確かである。
2月も終わりに近づいたある日の事。会社の近所のリサイクルショップに顔を出す。 僕はこう言った所を覗くのが、たまらなく好きなのだ。 慣れているから店内を見渡すのも早い。パーっと見てしまう。 まあ、大抵ミニコンポ位しかないのだが、この日は目の端に何かが引っかかった。 「!」、SY−77があるではないか!。 これはびっくり。往年の銘器がこんな所に転がっているなんて!。何てことだろう。 近づいて、まじまじと見る。確かにSY−77だ。 多少汚れてはいるが、致命的な傷もない。 早速店員さん(と言ってもご夫婦二人でやっている)に声を掛けて電源が入ることだけは確認して購入。 チェック済みと言うが、はなっから信用してない。第一他にまともなメインアンプもプリメインアンプも無いのに、どうやってチェックするというのか?。 などと細かい事は言わないのがこう言った所でお買い物をする時のお約束。 とっとと持って帰る。 さて、リファレンスのプリ、PRA−2000と差し替えて試聴。 ボリュームに酷いガリが無いのがわかって、まず安心。 で、すぐに試したかったのがトーンコントロール。 ネッシーの低音不足を解決するために、一番単純で手っ取り早い方法が、トーンコントロールの活用。 しかし、PRA−2000にはトーンコントロールは無い。 他にP−308RSがあり、これには優秀なトーンコントロールが付いているが、音の傾向が僕の好みとは少し違う。 SYはどうか?。そればかりを考えて持って帰ってきたと言っても過言ではない。 愛聴盤の、斉藤徹、コントラバスソロのCDを掛けてトーンコントロールのバスをグイっとひねる。 !。思わずにんまり。もりもりと凄い低音が出て来る出て来る。 表現が難しいが、ずばり、つぼにはまった感じ。 こりゃあ、たまらん。と言うのであれこれCDをとっ変え、ひっ変え掛ける。 う〜ん、素晴らしい。実にたっぷりした低音が堪能出来る。しかも切れもいい。 後で調べた所によると、このトーンコントロールは、かなり低い所と高い所を中心に効いてくれる設定。 しかもツマミのワンステップが2dB刻みと明確なのもわかり易くて良い。 まあ、これまでの経験からすると、トーンコントロールだのラウドネスだのと言うのは、単純にターンオーバー周波数だの、ボリュームカーブだのでは表現し切れない部分があり、つぼにはまるかどうかは、正に、試してみないとわかりません、の世界だ。 それが、ピタっと来た。これはラッキーである。 しかし、問題が無いでもない。 第一にSY―77にはMC入力が無い。 そう、SY−88以降で無いと、MCは対応していないのである。SY−77が出た年は、国内でMCカートリッジがブレイクする直前だったのである。 あと、トータルでの音がPRA-2000と比べてどうかと言えば、やはり2000の方が好みである。 それに、音とは関係無いが、SY−77のルックスは、お世辞にも良いとは言えない。というか、はっきり言って不細工のひとことである。 それでも、とやかく言いながらも、約1ヶ月、このプリはリファレンスを勤めている。 よく言えばPRA-2000より、ウオームであるし、何よりローブースト型の音を作れるのが嬉しい。 ボリュームが、アッテネーター式で、その節度あるクリック感がまた良い。 僕はこう言うところに弱いのだ。 とにかく、このプリが来てから何が変わったかと言えば、馬鹿みたいにデカイ音を出さなくても、音を楽しめるようになった所であろうか。 低音不足だと、どうしても相対的に音量が上がってしまうのである。 ゆったり椅子に身を沈め、まったりとした音に浸る。 かなり幸せな時を過ごさせてもらっている。 これは思わぬ拾い物。しばらくはこのまま楽しませてもらおう。
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